ファッション

“キノコの菌製”人工レザー開発が加速 台風の目ボルトスレッズCEOが語る

 キノコの菌から作られる人工レザー“マッシュルームレザー”の開発が加速している。特にここ1カ月の間に「エルメス(HERMES)」「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」「アディダス(ADIDAS)」が立て続けに“マッシュルームレザー”を用いたプロダクトを発表し、「エルメス」は今年中に、「アディダス」は来年にも発売予定だ。

 “マッシュルームレザー”は何がすごいのか。キノコ類の菌糸体(マイセリウム)を培養させて生産するため再生可能で、動物を犠牲にすることもない。畜産における環境負荷も問題視されている点でも注目を集めている。“マッシュルーム レザー”開発の台風の目、ダン・ウィドマイヤー(Dan Widmaier)=ボルトスレッズ(BOLT THREADS)共同創業者兼最高経営責任者(CEO)にメールインタビューを行った。

WWD:マッシュルーム由来のレザーに注目した理由は?

ダン・ウィドマイヤー=ボルトスレッズ共同創業者兼CEO(以下、ウィドマイヤー):マイセリウムは無限に再生可能であり、また繊維組織であることから、動物由来の皮革のような手触りのサステナブルな素材を作るのに理想的な物質だ。マイセリウムは当社のサステナブルなレザー代替品「マイロ」の基礎となるもので、見た目や手触りのよさ、質の高さに加えて、環境負荷の低さという特長がある。

WWD:「マイロ」が大量生産されるようになったら、どのようにポジティブな影響を与えられる?

ウィドマイヤー:「マイロ」を使用することで、消費者はデザインや品質の面で妥協することなくサステナブルなアイテムを手にすることができる。世界の人口が増加するにつれ、資源不足が起きている。現在、ファッション業界は世界中で衣類を何十億着も生産しているが、人々の可処分所得が増えるにつれて需要はさらに増加するだろう。今後、本革の代替品が市場で徐々にシェアを拡大していくと予想されており、サステナブルで環境に優しいさまざまな代替品やアイデアが発表されている。「マイロ」は環境に優しく、かつ商業的にスケール可能なソリューションだ。

WWD:本革と比べてどの程度環境への負荷が軽減されるのか?

ウィドマイヤー:本革は長年にわたって商業的な規模で生産されているが、「マイロ」はまだ小さな規模でしか生産できていないので、単独での環境フットプリントを調査するのは時期尚早だと思う。私たちが「マイロ」の運用を始めたときに目標にしたのは、本革が愛される全ての理由を満たしつつ、サステナブルな“アップグレード版”を作ること。本革の生産と異なり、「マイロ」は家畜を育てる必要がない。家畜は育てるのに何年もかかる上に大量の資源を必要とするが、「マイロ」の原料であるマイセリウムは何日間という単位で育てられる。世界中の人々の可処分所得が増加すれば、食肉と皮革の需要も高くなる。しかし現在と同様の土地の広さや水の量を使用して牛などの家畜を育てたら、皮革の需要増には追いつけないだろう。よりスマートでサステナブルなソリューションが必要とされている。

WWD:製品化にあたっては強度の確保がハードルだったと思うが、どのように解決したのか教えてほしい。また大量生産にあたり、ほかの課題はあったか?

ウィドマイヤー:伝統的な動物由来の皮革と同様に使用できる素材を作るため、「マイロ」の開発を始めた当初から4000回以上もバージョンアップを繰り返しており、現在もそれは続けられている。
最も難しい課題の一つは、世界中の需要を満たせるように「マイロ」をスケーリングすること。大量生産するためには、何万平方フィートもの「マイロ」を一定の品質で、かつ本革と競争できる価格で生産できる新たなサプライチェーンを一から構築する必要がある。また数量的な問題のほかにも、「マイロ」が商業的に成功するために必要な審美上の質という、より曖昧で定義しにくい部分を改善するために、デザイナーからのフィードバックを得る必要があった。

WWD: ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)、アディダス(ADIDAS)、ルルレモン(LULULEMON)、そしてケリング(KERING)と戦略的パートナーシップを結んだ。

ウィドマイヤー:彼らがコミットしてくれたことも、こうした課題に取り組むにあたって大きなサポートとなっている。また当社と提携したこと自体が、こうした世界的なブランドが本革の代替品を探すことに本腰を入れているという明確なシグナルを発信していることにもなる。

WWD:さまざまな人工皮革が発表されているが、「マイロ」の最大の強みとは?

ウィドマイヤー:いわゆる人工皮革と異なり、「マイロ」は柔らかくてしなやかで、動物由来の皮革と手触りが非常に似ている。マイセリウムは線維性の組織であるため、その他の植物ベースの素材と比べ、より人工的でない手触りでありながらも非常に強度の高い素材を作ることが可能だ。“手触り”を言葉で説明するのは難しいが、マイセリウムにはマッシュルームの細胞壁を作るキチン質が含まれており、これがコラーゲンと似たような働きをするため、「マイロ」には本革のような弾力性と暖かさがある。

そして、グローバルなコンソーシアムパートナーである「ステラ マッカートニー」「アディダス」「ルルレモン」、ケリングからのフィードバックのおかげで、「マイロ」は一流ブランドが求める美しさと手触りを備えている。

WWD:加工などでも石油由来の原料は使わないのか?

ウィドマイヤー:合成繊維とポリウレタンやPVCコーティングで作られる人工皮革と異なり、「マイロ」はマイセリウムから作られており、石油ベースのものではない。また「マイロ」の生産工程や仕上げで使用される化学薬品は、グリーンケミストリー(Green Chemistry)原則に準拠して評価および選定している。

WWD:今後、どのように大量生産やスケールアップするのか?

ウィドマイヤー:現在のところ、提携しているコンソーシアムパートナーと協力して、「マイロ」で作られた製品を今年およびそれ以降も消費者に提供することに注力している。一方で、当社では立ち上げ当初から、その他の素材と競争可能な価格および品質で「マイロ」を大量生産することを計画していた。このため、「マイロ」を使いたい、購入したいという全てのデザイナーや消費者が入手できるように、前述したサプライチェーンの構築に懸命に取り組んでいる。

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