ファッション

D2Cアクセサリー「グレイ」が目指すサーキュラービジネスとは デジタル世代経営者が考えていること

 アクセサリーブランド「グレイ(GRAY)」は2020年1月に設立されたD2Cブランドだ。インフルエンサーの影響もあり、コスパの良いアクセサリーブランドとして人気上昇中だ。現在のインスタグラムのフォロワーは13万以上、売り上げは1年以内で月商5000万円を超えるなど急成長している。最近では、アイウエア「ジンズ(JINS)」とのコラボレーションを発表したばかりだ。オンライン中心にSNSなどデジタルツールを駆使することで、マージンや店舗運営などのコストを省くD2Cブランドが増えているが、ファッション、ジュエリーなど、まずはものありきで、それを起点にブランド構築をするケースがほとんどだ。ところが、「グレイ」はD2Cブランドとして成功するための計算された戦略に基づいて作られたアクセサリーブランドだ。しかも、ビジネス面だけでなく、サステナビリティの観点からも新たなビジネスモデルを構築しようとしている。同ブランドを率いるのは、恩地祥博BRH最高経営責任者(CEO)だ。彼は、米ニューヨーク留学から帰国後に知人の紹介でBRH元社長とスカイプで面接。約30分のインタビューでBRHのCEOに抜擢された。恩地CEOに、「グレイ」の立ち上げの過程や、今後の取り組みなどについて聞いた。

WWD:BRHの元代表と出会ったきっかけは?

恩地祥博BRH・CEO(以下、恩地):米ニューヨーク・ファッション工科大学(FIT)に留学中にデジタルPRを手がけていた稲木ジョージさんのアシスタントをしていた。帰国して就職活動を始めたときに、知り合いのスタートアップ支援企業であるアーキタイプ(ARCHETYPE)の中嶋淳CEOに佐藤俊介BRH前CEOを紹介されてスカイプで約30分話したら、「CEOをやってみないか」と言われた。BRHは当時、複数のファッションブランドを展開していたが今では「グレイ」だけを運営。佐藤前CEOは現在、BRHの取締役兼会長を務めている。

WWD:スカイプのインタビュー30分でCEOに任命された決め手は?

恩地:実家が創業90年のうどん製造メーカーという環境で育ったせいか、小さい頃からビジネス運営に興味があった。そのせいか、大学1年生のときにSNSのコンサルテーション会社を立ち上げたが、コンサルよりもファッションがやりたいと思って1年後には社を畳んだ。それにより、まずビジネスの箱を作ることを学んだ。「ファーフェッチ(FARFETCH)」のマーケティング PRや委託販売サイト「ザ リアルリアル( THE REAL REAL)」のSNS担当などをしていた。私はデジタル世代であり、ほかの人とは違う経験を積んできたのでCEOに抜擢されたのだと思う。日本のファッション業界で経験がないから、ルールにとらわれず行動に起こせる推進力があると思われたのではと思う。知らないからこそ、できることはたくさんあるし、そうでなければ業界内で革命を起こせない。

WWD:企業運営のノウハウはどのようにして学んだか?

恩地:メンターがいなかったので、自分で経験して覚えるしか無かった。ウルトラOJTだった。人の真似をしたところで新しいことはできないから、当たって砕けろという気持ちで仕事に挑んだ。経営しているという意識は正直なく、細かいことを気にせずに、事業をどうしたら伸ばせるか考えてきた。

コスパ良くスタイリングで楽しむアクセサリー

WWD:アクセサリーブランドの「グレイ」を立ち上げた理由と目的は?

恩地: BRHでは、ブランディングの一環として、広告など社内でキャスティングからクリエイティブを制作することを行ってきた。そういう意味で、既にD2Cブランドを立ち上げるために必要な要素が社内にあったので、それを最大限に利用しようと思った。アパレルだとサイズをはじめ、いろいろとオペレーションが大変なので、すぐにものづくりができて販売できる小さなものから始めようと思った。また、マーケティングの観点から勝算があると思われるものがアクセサリーだった。

WWD:デザインは誰が担当?

恩地:FITで一緒だった女性デザイナーにクリエイティブは任せている。

WWD:ブランド名を「グレイ」にした理由は?

恩地:誰もが読めて言えるブランド名にしたかった。分かりやすく、人に伝えやすい名前がいいと思った。ターゲットは20~34歳のF1層と言われる女性が中心。“グレイ”は白と黒の間で、ブランドコンセプトには、感情の起伏を愛することや、コンプレックスを力にといった思いが込められている。

WWD:素材調達と生産は?

恩地:国内企業から素材の調達を行い、東京、山梨、埼玉などの下請け工場で生産している。

WWD:手に取りやすい価格帯を実現できるのは?

恩地:発注工場を絞って、大量発注することでコストを下げている。これは「グレイ」が売れているからできること。価格で勝負するためには1品番、納期を分けて1万個発注することもある。発注量を増やすことにより、取引先としての優先順位も高くなる。

WWD:D2Cブランドの一番の課題である認知度アップのために行ったことは?

恩地:われわれのオペレーションは、ほぼ全てデジタル上で行われる。インスタグラムなどのSNSを軸に、どれだけ露出できるか、コンテンツ発信できるかといったマーケティングに費用を費やした。もともと、インフルエンサーやモデルなどとのつながりが多いので、彼女らにジュエリーを着けてもらい投稿してもらう。初期は、50人以上に協力してもらっい、300のコンテンツをアップしていた。それにより、約1年半で累計6万人、9万個以上のジュエリーを販売した。

WWD:他ブランドとの差別化は?

恩地:リングやイヤカフなどをはじめとするスタイリング売りをしている。コスパ良く、楽におしゃれをしたいという女性の心理に刺さっていると思う。ブランドが違うと、ゴールドの色味が微妙に異なるので合わせるのが難しい。重ね付けが可愛いけど、どこでそれらのジュエリーを見つけられるかという消費者の需要を捉えたのがスタイリング販売だ。同じブランドであれば、それら問題は解決できる。

100%受注生産のブランドを目指して

WWD:SDGsにおいてジュエリーブランドが第一に取り組むべきことは?

恩地:作る人、買う人両方に責任があると思っている。ジュエリーは嗜好品で生活必需品ではない。だからこそ、環境に悪いことはするべきでないと思う。将来的には在庫を持たず100%受注生産のビジネスをしたい。納期が5~10日程度だったら、消費者は待ってくれるはずだ。そうすることで、本当に必要なものだけ作るようにしたい。また、ジュエリーの再利用化=サーキュラーシステムの仕組みを作るために、自社工場を持ち、透明性を高くしたい。その資金集めのためにIPOを視野に入れている。そうすることによりシステムや物流などに投資をし、業界で新しい流れを作り、それが業界で当然になっていけばいいと思っている。サステナビリティを前提に自社のシステムを作っていきたい。だから、ビーコープ認証(環境・社会に配慮した企業活動を行なっており、ガバナンス、従業員、コミュニティー、環境、顧客から構成される認証試験の厳しい基準を満たす必要がある)を取るつもりでいる。

WWD:今後の戦略は?

恩地:芸能人やブランドなどとコラボレーションしてマスに対する認知度をアップしたい。また、ギフト需要が高いので、それを伸ばして行きたい。プロダクトを売るだけでは未来がないと思っているので、サブスクリプションサービスなどを通してコミュニティー作りをしていきたいし、「グレイ」が好きな顧客同士がつながれる仕組みを作りたい。「グレイ」のデジタルメディアを通してリアルな人と人との出会いを作っていきたい。顧客のリアルな声を吸い上げるという意味でもコミュニティーの価値はある。ブランドと消費者が対等であるべきだと考えるので、消費者と一緒にブランドを作っていたい。ファッション業界を変えるのは新興企業だ。気合いは半端ないし、絶対にあきらめない、そういう気持ちで事業活動をしていきたい。

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