ファッション

日本人らしい奥行きを加えたクラシックウエア「ユーゲン」  “一周回った大人たち”からも愛される服作り

 世の中には、クラシックからストリートまで幅広いスタイルを経験した結果、シンプルなアイテムを好む“一周回った大人たち”がいる。彼らからの支持をジワジワと集めているのが、メンズブランド「ユーゲン(HEUGN)」だ。デザイナーの小山雅人が2019年秋冬シーズンに始動し、立ち上げ当初から「ポパイ(POPEYE)」「ウオモ(UOMO)」などのメンズ雑誌に取り上げられた。現在は伊勢丹新宿本店メンズ館、エストネーション、レショップなど約25のアカウントに卸している。

 同ブランドは、ヨーロッパのミリタリーやクラシックウエアをベースに、サイズやディテール、色味などをアレンジするデザインが特徴だ。定番シャツ“James”(税込3万800〜3万8500円)は、1940年代フランスのオーダーメイドシャツに着想し、イタリア製のポプリン生地ややや前振りに設計した2枚仕立ての袖、高めに配したヨークなど、クラシカルなディテールが豊富。一方で、ヨークに細かなギャザーをつけて程よいゆとりをもたせたり、肩周りをジャストサイズにしたりと、古く見えない工夫を凝らす。フランス軍のオーバーコートをベースにしたハーフコート(税込13万2000円)は、外国人向けの直角的な肩傾斜を丸みのある設計に変更。ぱっと見は分からないが、着ると何かが違う――この絶妙なさじ加減が、“一周回った大人たち”を魅了する。

ストリート全盛の時代に
クラシックウエアを伝える理由

 小山デザイナーは、大手セレクトショップでオリジナルウエアの企画やデザインを10年以上担当していた。「ジル サンダー(JIL SANDER)」と「チェザーレ アットリーニ(CESARE ATTOLINI)」、そしてビンテージが並列されるような環境で服作りを学び、「“ベースはクラシックなのにすごくモダン”というウエアに引かれるようになった」という。研究を重ねるうちに、「ステッチとか、袖の太さとか、付属品とか、“もっとこうだったらいいのに”という欲が出てきた」ため、自分のブランド立ち上げを決めた。

 ローンチの準備を進めていた2018〜19年は、ストリートウエアの全盛期だった。極端なオーバーサイズと誇張したディテール、フォトジェニックなロゴに多くのコレクションブランドが傾倒していた。「好きなウエアを着るのがファッションだし、いろんなテイストがあっていい」と肯定するものの、「ただ、わかりやすい服をバズらせるだけでいいとは思わなかった。写真では伝わらない服の魅力を発信するのもデザイナーの努めだし、クラシックなメンズウエアが世の中からなくなっちゃダメ。僕はその面白さを伝えたかった」と小山デザイナーは振り返る。

 ブランド名は、「物事の趣が奥深くはかりしれないこと」を意味する“幽玄”に由来。「僕の作りたい洋服とも合致しているし、『日本人らしい繊細さや奥行きを表現しよう」という意思も込めて、この名前にしました」。

2022年春夏はリゾート気分を反映

 2022年春夏シーズンは、シャツやパンツなどの定番品に色・柄のバリエーションを加え、リゾートなムードをプラスした。ミリタリーシャツに着想したバンドカラーシャツ(税込3万800〜3万8500円)は、定番の白をはじめ、花の総柄を施したインド産のモダール生地やフレンチビンテージのようなロイヤルブルーで製品染めしたカラーなど用意する。その他、北欧のミリタリーショーツをベースにしたコットンチノ素材の製品染めショーツをはじめ4型のみ新型を加える。「僕たちはプロダクトブランド。新しいものをバンバン打ち出すビジネスライクなやり方ではなく、長く使える良いものを時間をかけて提案していきたい」。

 今後は、代々木の路地裏にひっそりと構えるアトリエで「顧客に向けた受注会やオーダー会も行いたい」と小山デザイナーは語る。「パーソナル感をもっと大事にしたい。お客さんからもいろんな意見を吸収しながら、自分らしいペースで、良いと思うものを届けていく」。

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