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日本の中古高級ブランド品が“中国で爆売れ”のワケ 代官山「エディ」のやり方

 東京・代官山と大阪・南堀江に店を構える、高級ブランドのバッグやアパレルを販売するヴィンテージショップ「エディ(HEDY)」が、中国市場向けの販売を猛烈な勢いで拡大している。特にこの2年ほどで大きく伸びたのが、中国向けの自社運営の越境ECショップだ。対中国売り上げは前年同期比約4倍に成長。現在、越境ECショップの月商は1900万円を超え、日本国内ECの売り上げを上回った。

 急成長のきっかけは、中国版SNS「ウェイボー(微博)」上の口コミだ。ファイヤーワークスの布施杏奈「エディ」事業部長によると、口コミは自然発生的なものだったという。「全体売り上げの6割ほどがオンライン。もともと売り上げのメインは日本国内向けの自社ECで、越境ECはあったが本腰を入れていなかった。2019〜20年にかけて急に中国の売り上げが伸びたので調べたところ、小紅書(RED)などの中国SNSに『エディ』関連の多数の口コミがあった」という。中国の若者女性が集まるSNS、小紅書には当時既に1万件以上の投稿があった。

 中国のオンライン購買はTモール(TMALL、天猫)やタオバオ(TAOBAO)をはじめとした巨大ECモールが中心で、自社ECは集客面などで苦戦しやすい。ラグジュアリーブランドも、アリババが運営する高級品特化のECサイトである「ラグジュアリー ・パビリオン」や越境ECのTモールグローバル(TMALL GLOBAL、天猫国際)に出店している。そうしたこともあってブランド公式品を扱うモールに中古品は出品しにくく、消費者側も本物かどうか判断がつきにくい。「エディ」は口コミが有利に働いたことで、自社越境ECにユーザーが集まった。

 新型コロナ以前は店頭にも訪日中国人の客が多く来店し、代官山店のお客も7〜8割がインバウンド中国人客だった。「少なくない数の在日ソーシャルバイヤー(代購)にも来店いただいており、中にはその場でライブコマースを配信する方もいる。そういった方にはこちらからもバイヤーとして複数購入での値引きなどを持ちかけることもある」という。当初の受け身の姿勢から、今は中国へ積極的に売り込んでいる。

 公式ウィーチャットの開設後は自社でもライブコマースをスタート。2週に1度、中国人スタッフが出演して2時間程度の配信を行う。1配信で20点ほど紹介し、1点あたり10万円以上の高級ブランド品が半数は売れるという。

 昨年10月からは、中国市場のマーケティング支援を行うアライドアーキテクツと手を組み、公式ウィーチャット(WECHAT)を開設した。広告を出さず、開設から5か月で4万フォロワーを獲得。また小紅書、ウェイボー(WEIBO)も開設し、広く情報を発信している。「最も重視するのはブランディング。『エディ』は単なる中古品ではなく、質が高く洗練された印象のヴィンテージとして認識され、支持されている」と布施氏。コンテンツはアライドアーキテクツの提案を元に、自社の中国人スタッフが製作する。中国人同士だからこそ分かるツボを押さえたコンテンツが人気で、ウィーチャットは1記事の配信につき1000フォロワーほど増える。

 ファッション分野で支持されるKOLを起用したPR投稿も反響が大きく、「サーバーが落ちるほどアクセスがあった」という。またアライドアーキテクツが運営する在日中国人コミュニティ播日本(BO JAPAN)のメンバーによる口コミ投稿も実施した。

 自然発生した口コミはインバウンド客の来店によるものも多く、中には自ら足を運んだKOL(Key Opinion Leader)の投稿もあった。「そもそも代官山に出店したのは、インバウンド客を意識してのことだった」という。中国は日本以上に口コミが重視される国で、こうした口コミの多さが認知向上のみならず信頼にもつながった。

 口コミでは価格面や店舗の信頼性に加え、ヴィンテージの価値が強調されている。中国の消費者はレアなアイテムを好む傾向があり、すべて1点もののヴィンテージは希少性の高さから好まれている。「日本にはバブル期に増えた80年代のアイテムが多く、質のいい状態で残っている。そういったアイテムを求めて大量買いする人も多い」。

 また昨年、中国で大ヒットしたドラマ「三十而已(Nothing But Thirty)」では劇中に登場した「エルメス(HERMES)」のバッグが注目を浴びた。その熱は「エディ」にも飛び火し「ドラマに登場した“バーキン”は希少で新品を手に入れるのが難しいため、ヴィンテージを買い求める方が多く、ドラマ放送直後はよく売れた。流行れば高価でも食いつくのが中国客の特徴」だという。

手作業を駆使、販売の裏側

 中古品、高級品販売で求められるのが信頼だ。特に中国ではカスタマーサポートが重要で、「エディ」は自社の中国語スタッフを6人まで増やし、ユーザーから来るチャットに回答している。「中国客からは本物のブランド品か、傷はないか、他の写真も送って欲しいといった細かな質問が大量に送られてくる。土日で90件ほどはメッセージが溜まる」。ギャランティカードや正規の箱、シリアルナンバーなどが付かない商品に関しては、しっかりチャットで本物であることの説明を行うことで信頼を得ている。

 チャット対応のためメッセージのラリーも多く、手間はかかる。しかしチャット対応の強化後、返品率は4割から2割ほどに下がったという。それでも商品到着後に「本当に本物なのか」と疑って返品されるケースもあるというから、疑り深さはかなりのものだ。

 さらに地道な作業なのが在庫の連携だ。1点もののため店頭販売と国内、越境ECの在庫を常に連動させなければならず、「色々とシステムを考えてきたが、今まで手動で在庫を反映させてきた。店頭で売れたらその場でECの表示も動かす。越境ECは中国スタッフが操作するので、そのやりとりをスカイプでしている」という。

 手間を惜しんでも越境ECを動かし、発信し続けているのは今の売り上げのためだけではない。布施氏は「インバウンド復活後に向けて、認知をさらに広げたいと思っている。昨年10月にオープンした南堀江店もインバウンド客を意識しており、呼び込みたい」と展望を語った。

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