ファッション

ネトフリの新リアリティーショー「きらめく帝国」 リッチなアジア人にスポット

 ネットフリックス(NETFLIX)は、新リアリティーシリーズ「きらめく帝国〜超リッチなアジア系セレブたち〜(Bling Empire)」の配信を1月15日にスタートした。同番組はシンガポールを舞台にリッチなアジア人の様子を描いた映画「クレイジー・リッチ!(Crazy Rich Asians)」と、ビバリーヒルズを舞台にしたリアリティー番組「ザ リアル ハウスワイブス(The Real Housewives)」を掛け合わせたような作品で、撮影は新型コロナウイルスのパンデミック以前に行われた。

 同番組ではロサンゼルス在住の超富裕層のアジア系アメリカ人にスポットを当て、伝統的な家柄ゆえの価値観や重圧に対する葛藤、恋愛、アイデンティティー、そして不妊症に至るまで、出演者たちが心の内をさらけ出し、時にはディナーパーティーで「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のネックレスがほかの出席者と被ってしまう恐怖に怯えたりもする様子が映し出されている。

 公式な提携はしていないが、同作には「ピアジェ(PIAGET)」「ブシュロン(BOUCHERON)」
「アレキサンダー・マックイーン(ALEXANDER McQUEEN)」「バレンシアガ(BALENCIAGA)」「シャネル(CHANEL)」「バカラ(BACCARAT)」といった多くの有名ブランドのアイテムも登場する。また、パリでのプライベートショッピングやクチュールショー、LAのビバリー・ウィルシャー・ア・フォーシーズンズ・ホテル(Beverly Wilshire A Four Seasons Hotel)での優雅なシーンや出演者の豪華な家の様子なども垣間見ることができる。

 現在「ルイ・ヴィトン」「ディオール(DIOR)」「モンクレール(MONCLER)」といったラグジュアリーブランドは、パンデミックによる市場の低迷からいち早く回復して成長を続けている中国を中心としたアジア市場にターゲットをシフトしているが、時を同じくして番組の配信がスタートすることとなった。

 主な出演者には、台北生まれの慈善活動家でクチュールのコレクターでもあるクリスティン・チュウ(Christine Chiu)や、ビバリーヒルズで整形外科医として働くクリスティンの夫、ガブリエル・チュウ(Gabriel Chiu)がおり、2人の息子のベイビーG(Baby G)は初めての誕生日パーティーに100万ドル(約1億円)を費やされるという甘やかされっぷりだ。

 ほかにも、シンガポールの海運業の後継者ケイン・リム(Kane Lim)は30万ドル(約3000万円)のスニーカーコレクションが自慢であったり、レインボーヘアを専門に活躍するスタイリストのガイ・タン(Guy Tang)や、北京のテクノロジー業界で億万長者になった父を持つ馬術師のジェイミー・シェ(Jaime Xie)は「シャネル」が大好きであったりと、全ての出演者がインパクトに事欠かない。ちなみにジェイミーの馬はエミレーツ航空(Emirates Airlines)を利用しているが、豪華な厩舎に関してはスティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)の娘で馬術にも長けているイブ・ジョブス(Eve Jobs)に奪われてしまったという。

 ブランドン・パナリガン(Brandon Panaligan)と共同で同番組の製作総指揮を取ったジェフ・ジェンキンス(Jeff Jenkins)は、「ケビン・クワン(Kevin Kwan)原作の映画『クレイジー・リッチ!』が大ヒットしたこともあり、キャスト全員がアジア人、またはアジア系アメリカ人の作品には需要があると考えた。映画だけでなくテレビ番組も必要だし、成功すると思った。それに、女性だけでなく男性のファッションリーダーにも焦点を当てているリアリティー番組は珍しい」とコメントした。

 ジェンキンスはこれまでに、リアリティー番組の「カーダシアン家のお騒がせセレブライフ(Keeping Up With the Kardashians)」「シャーズ オブ サンセット(Shahs of Sunset)」「シンプル ライフ(The Simple Life)」なども手掛けている。

 パリ、ミラノ、LAのファッション界の上顧客で、エピソード1では旧正月のチャリティーイベントのためにロデオドライブを閉鎖してしまうほどの影響力を見せつけたクリスティンにとっては、今回の番組出演がハリウッド進出のチャンスとなることも魅力的であったという。

 番組のプロデューサーも務めたクリスティンは、「ディオール」と「シャネル」のファインジュエリーを輝かせながら、「番組はアジア文化のほんの一片を映し出したに過ぎないけど、アジア人にスポットを当てているだけでなく、キャストのバックグラウンドが中国、台湾、日本、韓国、ベトナムなど多様性に富んでいるのも刺激的だわ。アジア人は普通はあまり人前に出たがらないから、この番組はある意味ユニークでもある。アジアではセラピーは推奨されていないし、他人に弱さを見せることもない」とコメントした。

 出演者の1人で筋金入りの中国的価値観の下で育てられたLA出身のシェリー・チャン(Cherie Chan)は2人の子どもを持つ母親で、番組では妊娠、出産後の苦労、そして伝統的な中国の健康療法について語っている。シェリーは「ミュウミュウ(MIU MIU)」を着用した姿でラスベガスからのビデオ通話に応じ、「感情をあまり表に出さないように育てられたこともあり、番組で気持ちを吐露するのがとても難しかった。でも、外に出て誰かに助けを求めることを学んだわ」と話した。

 クリスティンは「今は私たちアジア人にとって素晴らしい時よ。『ティファニー(TIFFANY & CO.)』は私が支持する6つのチャリティー団体に寄付している。アジアは長年にわたってラグジュアリーブランドを支えてきた。そうしたブランドがアジア市場に重きを置いて投資してくれることに感謝している。番組ではラグジュアリーブランドとアジア人顧客との互恵関係やリスペクト、サポートにも触れている。私は26歳の時にクチュールを集め始めた。以前はただ可愛いものを購入していたけど、今は『ディオール』2019-20秋冬オートクチュール・コレクションのラストを飾った“ゴールドハウスのドレス”といった意味のあるものを選ぶようにしている」とコメントした。
 
 もちろん同番組はファッションだけでなく個性、人間ドラマ、敵対心といったリアリティー番組に求められる要素も満載だ。クリスティンはアンナ・シャイ(Anna Shay)と敵対する一方で、ランウエイショーで知り合ったシェリーとは本物の友情を育んでもいる。

 また、リアリティー番組への出演はキャリアの出発点になりうることでも知られている。整形外科医の夫と20年に渡って医院を営んできたクリスティンには、すでに夫と専門家チームの協力を得た美容関連の事業計画があるという。クリスティンにローンチの時期を尋ねると、「未定だけど、おそらくセカンドシーズンの頃かしら」との答えが返ってきた。

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