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勝手に「悩み」に仕立てないでいただきたい エディターズレター(2020年9月4日配信分)

※この記事は2020年9月4日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

勝手に「悩み」に仕立てないでいただきたい

 以前「ビューティブランドには、①『プラスをもっと大きなプラスに』というブランドと、②『マイナスの幅を小さく、もしくは限りなくゼロに。可能ならプラスに』というブランドがあって、圧倒的に前者がスキ」的な話をしました。その思いは、日を追うごとに強くなっています。①のブランドは、「カワイイをもっと可愛く!」とか「テンション、さらに爆上がり!!」みたいなブランド。一方②のブランドは、「小さな目がハッキリ!!」とか「気になる体臭をカット」的なヤツ。いずれも一重で43歳のオジさん(=私w)にとって、気にならないと言えばウソな、マイナス(かもしれない)の「悩み」ですが、「その目を、さらに魅力的に」とか「新しい香りをまとおう」とアプローチして欲しいのです。ワガママですか?

 軽く嫌悪感さえ覚えるのは、「女性にとって永遠の悩み、ほうれい線が……」とか「アナタも、こんなことで悩んでいませんか?」みたいなブランドです。ほうれい線を大して気にしていない女性に対して、「女性にとって永遠」なんて言葉で恐怖を駆り立て、「買わねば」と思わせるアプローチは好きじゃない。悩んでもいないコトを、「みんな悩んでいますよ。アナタも、実はそうでしょう?」と近寄られるのは、もっとイヤ。心の奥底に土足で入り込み、“不安や恐怖のかけら”を勝手に掘り出し、くっつけ、「ホラ、悩んでいるでしょう?そんなアナタには、コチラです」って勝手に差し出されるのは、納得できなくなってきました。

 最近、とあるタイアップを「受けるべきか、受けざるべきか?」考える機会がありました。トピックスは女性器。クライアントになるかもしれない会社のホームページには、女性器への施術に関するイラストが掲載されており、「衝撃を受ける方もいるかもしれない」と思います。デスクと2人で、「どう思う?」のLINEが始まりました。そして彼女は、イラストに幾ばくかの抵抗を覚えているようでした。

 一方の私は、イラストも平気でした。唯一気になったのは、その会社が「女性が無自覚だった悩みを、無理やりほじくり出すことで不安を煽る」タイプじゃないか否か?答えはNOなので、「では、提案させていただきましょう!」との結論に達したのです。

 問題は、女性器とかイラストとかではありません。コンプレックスを煽るのはもちろん、コンプレックスとして自覚していない特徴を、他人が、勝手にコンプレックスに仕立てた上で「それ、解決します!」って提案してくるのがイヤなのです。「悩み」に応えるは、まだまだ大事。でも、勝手に「悩み」に仕立てあげられてから応えるは、受け入れ難い。めんどくさいヤツでしょうか(笑)?

 下のリンクのように、インフルエンサーにフォロワーからの質問を募っていただくと、彼女たちの多くが「コンプレックス、どうしたらいいの?」と聞いてくるようです。身近な存在だからこそ、本音を打ち明けられるのでしょう。でも個人的には「そんなの悩まなくて良いよ!」って思うし、インフルエンサーの多くもそう答えています。なのにコンプレックスは、なかなか減らない。悔しいのです。企業が、勝手に何かをほじくり出して、それをコンプレックスに仕立て上げないようになったら、皆、もう少し解放されるのかなぁ?なんて思っています。

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