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ギャルソン炎上で思うこと エディターズレターバックナンバー

※この記事は2020年1月23日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

ギャルソン炎上で思うこと

 ファッション界のグリーンピース、「ダイエット プラダ(Diet Prada)」が「コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME DES GARCONS HOMME PLUS)」に噛み付きました。コーンロウに見えるヘアスタイルで白人モデルがランウエイを歩く姿を「差別的だ」と言うのです。実際はスフィンクスをイメージしたもので、コーンロウではありませんでした。でも後日、パリで開いた展示会ではウィッグは飾られず、ヘアを担当したジュリアン・ディス(Julien d’Ys)は反論しつつも「誰かを傷つけたのならば謝罪する」とのコメントをインスタグラムに投稿しています。

  ダイバーシティー(多様性)が叫ばれるようになって、この手の批判、そして批判を浴びる可能性は一気に増しました。性別、年齢、体型、人種、信条、性的指向、気にすべき点は多々ありますが、個々人がその全てに配慮するのはまず不可能です。今回の「オム プリュス」だって、僕はなんら違和感を覚えず、「ダイエット プラダ」の投稿を読んで「そう捉えるのか」と感じた次第。SNSには「オム プリュス」への同情論もありました。

 けれど、こうした問題は「傷ついた」と思う人の気持ちが優先されるべき。そういう人がいるなら、ブランドは心に留めるべき(必ずしも謝罪しなくても良いと思っています)というのが私の考えです。

 昨年末、2つの学校で「コーチ(COACH)」のTシャツ問題について話をさせていただきました。「TOKYO-JAPAN」のように「都市名-国名」が描かれたTシャツにおいて「HONG KONG」の後に「CHINA」の文字が無く、中国人の怒りを買ってしまったTシャツの話です。最初に話したのは、ほぼ日本人だけの学校。「え、なんで怒るのかわかんない」という反応も多く、失笑さえ聞こえました。次に中国人留学生が急増中の文化服装学院で話をすると、彼らの多くは話に真剣に聞き入ります。彼らは「傷ついた」と思う当事者側。ゆえにさまざまな感情が湧き上がるのでしょう。この場合重要なのは、前者の理論ではなく、後者の価値観です。

 課題は、どうすればさまざまな価値観が混在する組織を形成し、この手の問題に対して多角的な意見が集まるムードを醸成できるか、ですね。一昨年、「ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)」の上海でのイベントが大炎上した際は、とあるメディアが「ミラノのファッション協会にも加わらない、権力が一極に集中した組織が招いた弊害では?」と考察しましたが、その通りなんだと思います。外に耳を傾け、誰もが気兼ねなく意見を言える組織にならない限り、道を踏み外す危険性が増しています。個々人においても、なるべく多くのコミュニティに身を置き、異なる価値観に出合うチャンスを作るべきなのでしょう。

 だからこそ、ファッションやビューティの世界は、もっと社会とつながって欲しいのです。そんな願いを込め稚拙ではありますが、この「Social and Influential」には僕なりの社会的視線を盛り込み、お届けしたいと思っています。

 さぁ、もうすぐ20-21年秋冬コレクションが本格スタートします。今回は、どんな風に社会とリンクした洋服が出てくるのでしょう?この視点で見ると、「高すぎて買えない」とか「素材やテクニックが高額すぎて参考にならない」と興味を失いかけていたラグジュアリー ブランドのランウエイも、きっと面白く見えますよ。

SOCIAL & INFLUENTIAL:社会情勢によって変化するファッション&ビューティ業界を見つめます。インクルージョン(包摂性)&ダイバーシティー(多様性)な時代のファッション&ビューティから、社会に届けたい業界人のオピニオンまで。ジャーナリズムを重んじる「WWD JAPAN.com」ならではのメルマガです。

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