ファッション

「漫画の面白さを伝えていくことが『りぼん』の使命」 小学生のときから愛読者、相田編集長が65周年で思いを語る

 集英社が発行する少女まんが雑誌「りぼん」が8月3日に、創刊65周年を迎える。その65周年プロジェクト「りぼんのりぼん」では、ポップアップストアを東京・原宿で開いたり、インスタグラムフィルターを配信したり、ロゴをフォント化したラインスタンプを販売したり、さまざまな企画を実施。小・中学生をターゲットに、「有閑倶楽部」「ちびまる子ちゃん」「愛してるぜベイべ」など多くの人気まんがを生み出してきた「りぼん」は、65年が経ち老若男女のファンを獲得する。そのファンの一人として子どものころから「りぼん」を愛読していたという、相田総一編集長に65周年について、また「りぼん」への思いを聞いた。

WWD:65周年を迎え、ポップアップを開き反響などいかがだったでしょうか?

相田聡一編集長(以下、相田):今回、ポップアップを開いたのは、「りぼん」の雑誌自体の価値を高めたいという思いからです。昔の愛読者、また現在の小・中学生の読者に、再度、魅力を感じてほしい。そのきっかけになればと考えました。その結果、小学生のころから読んでいただいていた人が、大人になっても応援していただいているんだということを実感しました。作品の力、伝統の力を再認識しました。

WWD:改めて、競合他誌がある中で「りぼん」の強みを教えてください。

相田:難しいんですが……。描いてくださっている作家さんたちが「りぼん」のことを好きで、幼少のころに「りぼん」から影響を受けていて、好きでいてくださる方が、そのまま「りぼん」に集まって描いてくださっているということだと思います。ここで描くことを喜んでいただき、結果として伝統が続いていると思います。編集者の方からどうこうというのでなくても、作家さんたちから「りぼん」らしさだったり、「りぼん」はこうありたいだったり、自発発生的に生まれてきているなと思います。それがずっと長い間、形は変わっていても、根っこの部分でつながっているから強いと実感しています。

WWD:今回、65周年を振り返るだけじゃなく、オリジナルグッズなどを制作し物販もしています。その意図とは?

相田:雑誌離れが進む中で、雑誌の力、雑誌の魅力、雑誌文化の原点じゃないですが、そういったところに引き戻したいという思いがありました。例えば、「りぼん」のロゴマークや「りぼんちゃん」といったキャラクター、アイコン的なものでも、読者の方の記憶を呼び戻せるのではと思っていたのですが、そういったものを商品展開するアイデアを頂いたときに、「なるほど、今までにない切り口で『りぼん』の魅力を伝えることができる、記憶をひも解くことができる」と思ったんです。

WWD:記憶をひも解く中で、今の時代を感じる生理用品、ムーンパンツなどのフェムテックアイテムも置いてあるのは?

相田:かつての読者の方にちゃんとささってほしい。一方で、紙面の中ではできないこと、例えば時代の流れであるフェムテックと「りぼん」を結びつけることなどは、ショップという形を取ったらできるのではないかと考えたんです。また、フェムテックは母から子どもに伝えていくことが重要で、母娘で知るきっかけになったらという思いもありました。

WWD:よく聞かれると思いますが、相田編集長は男性で大人です。少女漫画の「りぼん」を作る上で、面白さ、難しさ、驚きはなんでしょうか?

相田:実は僕自身が子どものころ、「りぼん」に触れていたんです。男性ながら、普通に面白がって読んでいた部分もあって、本当に面白ければ、ターゲットはちゃんと子ども向けの作品であっても、年齢とか性別とか問わず楽しんでいただける可能性はあると思っています。昔の「りぼん」はそういうものでした。「ちびまる子ちゃん」をはじめ、僕らの世代の男性でも「りぼん」の漫画、世界を知っている人は多いと思います。コアなターゲットは小・中学生の女の子であるけれども、作品の力で幅広い読者も引っ張れる。そこを考えると少女漫画の可能性はもっと広がるのではないかと。でも男性だからという難しさよりは、僕ら男性でも面白いと思ってもらえるモノを作っていくことでしょうか。いろいろ矛盾してますけど(笑)。

WWD:なるほど、なんか分かります(笑)。ブレないコアがあり、そこから幅広い層に響いていくということですよね。そういったことからも、現在、部数も伸びていますね?

相田:「りぼん」はここ数年、好調を維持しています。しかし一般的にみて、雑誌離れが進んでいるのは確かで、少女漫画全体の売り上げは厳しい状況です。それもあって、こういったポップアップなどで、雑誌に立ち返ってもらいたい、雑誌に少しでも戻ってきてほしいという思いもあるんです。ただ、大人になってもずっと読み続けてほしいというよりも、今の小・中学生に「りぼん」を通過(読んで育って行って)してほしい。ラインアップも充実しているし、読んでもらえると面白いと思ってもらえると自信を持っています。

WWD:好調とはいえ、デジタル化の波、雑誌離れの加速、さらには新型コロナウイルスといった予期せぬ状況など、出版業界にたくさんの課題がある中、今後どうしていきますか?

相田:まず、新型コロナの影響を受け、われわれとしては出版物・コンテンツを予定どおり読者の方々へお届けすることを第一義に、努めてまいりたいと考えております。それを踏まえた上で、雑誌に触れることが少なくなってきている中で、一度、読んでくれた小・中学生を離さない努力をしなければと思っています。子ども向けのファッションやビューティブランドさんともコラボして付録を作ったり、興味関心の高そうな企画を充実させています。今の時代、本屋に行くことも少なくなっていて、ユーチューブなどほかに興味を持つようなことが増えていると思うんです。でも漫画とユーチューブが比べられているというよりは、単純に漫画に触れられることが減っているのではと。だから、まずは漫画を知ってもらうこと。ユーチューブとかで漫画の試し読みなどもしてますし、それで知ってもらって読んでもらえたら、絶対面白いと思ってもらえると思います。少女漫画、もっと言えば漫画文化自体が停滞してしまうところがあり、そこは「りぼん」がやらないといけないと。原点、基本の作品を通して漫画の面白さを伝えて行きたい。使命だと思っています。

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