ファッション

異色の日米合同のファッションテック、日本のブランドを世界へ発信

 アオイシップ(AOISHIP)は日本人と米国人が創業した、異色のスタートアップ企業だ。世界最大級のスタートアップの育成プログラムであるスタートアップ ブートキャンプ(STARTUPBOOTCAMP)の「ファッションテック」部門に選出された。世界中から約1200社の応募があり、アオイシップを含めた11社が選ばれ、1月からミラノでプラダ(PRADA)やアクセンチュア(ACCENTURE)をはじめとした約100社の有識者がアドバイザーを務めるプログラムに参加している。新型コロナウイルスの影響で、現在はオンラインに切り替わっている。最終のプレゼンテーションもメディアや投資家を招いて5月12日にミラノのプラダ財団で開催される予定だったが、オンラインでの開催になった。創業者の伊藤和将代表兼最高執行責任者(COO)に話を聞いた。

 アオイシップはソーシャルメディアを活用して、日本ブランドの海外でのマーケティングや販売をサポートするECプラットフォームを提供する。現在、特許を出願中だというインフルエンサーマーケティングの仕組みがユニークだ。カスタマーとインフルエンサーが購入した商品のSNSポストを通じて“ブルーコイン(報酬ポイント)”を得られ、“ブルーコイン”は次回購入時に使用することができる。ポストからの購入数に応じてインフルエンサーがレベルアップしていくというゲーム感覚の仕組みも面白い。インフルエンサーはフォロワーが500~1万人のマイクロインフルエンサーを起用する。

 サイトはすでに始動しているが、すべてのサービスを含めた本格始動は5月を予定している。現在出展するのは三松が手掛ける“モードな着物”「キイロ(KIIRO)」や「ヒスイ(HISUI)」など24ブランドで、インフルエンサーは約100人。今後、中国のラグジュアリーEC「セクー(SECOO)」とも協業予定で、「セクー」のサイト内にアオイシップのコーナーを開設する。また、テストマーケティングの結果、強化するエリアは東南アジアで、現在シンガポールやタイのインフルエンサーにアプローチしているという。

 ブランド側は商品をアオイシップの倉庫に送り、アオイシップが物流をサポートする。委託販売手数料は30%。

 同社は2018年9月に伊藤COOとアメリカ出身のアダム・ブジダ(Adam Boujida)代表兼最高経営責任者(CEO)が創業した。2人ともエンジニアでファッション業界の経験はない。伊藤COOはソニーでプレイステーションのエンジニアとして働き、その後いくつかのスタートアップを立ち上げた。

 伊藤COOは立ち上げのきっかけを「もともとファッションが好きでいつかファッション分野に進出したいと考えていた。ゲームやアニメ、寿司やアートといった日本の文化は海外でも評価が高いが、ファッションは未開拓な部分が多いと感じている。また共同代表のアダムは、日本出張の際に知人から日本ブランドの服を買ってくるように頼まれることが多かった。加えて、僕自身もデザイナーから海外進出が難しいという相談を受けたことがあった。ブランド側のマーケティングや販路開拓のハードルをなくすサービスができればと考えた」と説明する。また、「世界のファッションECの市場規模は50兆円であるのに対して日本は1.7兆円。今後も世界的には年間11~13%の成長が見込まれている。日本ブランドは世界をターゲットにしていくべきだ」とも語った。

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