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帰ってきたメンズコレドタバタ日記Vol.7 「LV」のショーでヴァージルの心境変化を読み解き、「ダブレット」のファミレスにダッシュ

 1月16日。晴れ。パリに入って、スケジュールは一気に過密に。メトロのストは小康状態に向かいつつあるものの未だに一部区間・一部時間は運転見合わせや運行本数の削減が続き、結果、街は大渋滞です。ゆえに車に乗るとショーに間に合わない事態が頻発。特に“貧乏バス(BB)”なんて信用できないから、メトロとダッシュを繰り返しております。さぁ、疲れてきたね(笑)。でも、今日も元気に行ってみましょう~。

9:50 ジバンシィ

 本日の朝一番は、「ジバンシィ(GIVENCHY)」、クレア・ワイト・ケラー(Clare Waight Keller)のメンズランウエイも、すっかりメンズコレ取材陣の意識の中に溶け込んできました。

 前職「クロエ(CHLOE)」ではリラックスシルエットで描く自然体の女性像が共感を誘いましたが、「ジバンシィ」に移籍して以降、彼女は“強さ”にもこだわっています。正直、最初はぎこちないようにも見えて、「メゾンの前任、リカルド・ティッシ(Riccardo Tisci)のゴスっぽいカンジは踏襲しなくても」と思っていたのですが、今は少しずつ「やっぱり、ちゃんとした洋服が着たいね」というムードが高まっている時。彼女の決断は、正しかったのでしょう。

 今回のメンズも、そんなクレアの強さというか、潔さを垣間見ることができます。ベースはスリムなセットアップ。そこにセカンドスキンのようにピタピタの真っ赤なタートルネックをコーディネートしたり、ジャケットに赤のテープを貼り付けたり、コートのラペルに赤を差し込んだり、幾何学模様のニットを組み込んだりで、視覚効果においてもシャープネスを追求。今シーズン盛り上がっている、オプアートのムードも漂わせます。

 一方のケーブルニットは、ボリュームシルエット。長らく得意とするリラックスムードに溢れ、こちらはもはや安心感さえ覚えるのです(笑)。

10:45 ヴァレンティノ

 昨日感動した「ヴァレンティノ(VALENTINO)」の展示会へ。

 アクセサリーを中心に写真をパシャパシャ撮りましたが、ウエア同様に良いカンジ!実は「ヴァレンティノ」でピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)とタッグを組んでいたマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が「ディオール(DIOR)」に移って以来、「ヴァレンティノ」のアクセサリーはちょっとパワーダウンした印象だったんです。で、「きっとピエールパオロはウエアの人、マリアはアクセサリーの人なんだろうなぁ」と勝手に思っていたワケですが、今回はその考えを改めるべきかも。

 バッグはどんどん小型化。「オニツカタイガー(ONITSUKA TIGER)」とのコラボも写真におさめました。

11:50 オム プリッセ イッセイ ミヤケ

 続いては「オム プリッセ イッセイ ミヤケ(HOMME PLISSE ISSEY MIYAKE)」。今回もさまざまなパフォーマーが最新コレクションを着用して、飛んだり跳ねたり回ったり、楽器を演奏したりと彼らの日常生活を再現。日々の生活に寄り添うブランドというコアアイデンティティーを発信します。これ以上は、説明不要。動画を見てもらうのが一番でしょう。コチラどうぞ、です。

12:50 リック オウエンス

 お次は「リック オウエンス(RICK OWENS)」。今回は、どんなフェティシズムを見せてくれるでしょうか?会場には、今回もツワモノが勢揃い。もはや顔タトゥーくらいでは驚かない自分が若干コワいくらいです。

 コレクションは、いつもどおりぶっ飛んでいるけど、ゴスっぽいカンジは本当に薄くなりました。黒の力を借りて恐怖さえ感じる迫力を生み出すのではなく、本当に強いシルエットで見せる振り切った強さです。柔らかで透明感のある素材と、スカイブルーまで登場する明るいカラーパレットで迫力を表現できるなんて、さすがリック様でございます。

 ファーストルックは、いきなりカシミヤニットのオールインワン。片足はフルレングスなのに、片足はもはやホットパンツ‼︎な丈感(笑)。しかもワンショルダーです。コレを着こなせるのは、デヴィッド・ボウイ(David Bowie)だけでは?そう言えば、ジギーダストなジャケットもあったなぁ。

13:50 ジョン ロブ

 お次は、至高のシューズブランド「ジョン ロブ(JOHN LOBB)」。今年は代表的モデル“ウィリアム”が75周年。若干丸みを持たせてソールを厚くした日本人ウケしそうなタイプから、細長くて薄型のヨーロッパっぽいエレガントまで、同じシューズでも、細部で印象がだいぶ異なることを学びました。

14:55 ルイ・ヴィトン

 さぁ、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のお時間です。

 コレクションは、モノすごいフォーマルです。スーパーど直球。自身のブランド「オフ-ホワイト c/o ヴァージル アブロー(OFF-WHITE c/o VIRGIL ABLOH)」もスーツメインでしたが、「ルイ・ヴィトン」はそれ以上。そして黒人モデルがちょっと減ったように思います。シルエットも、ストリート出身のデザイナーが生み出しがちな、ボックスシルエットのジャケットにリラックスパンツではなく、コンパクトなジャケットにスリムパンツ。キム・ジョーンズ(Kim Jones)の「ディオール(DIOR)」に通じる路線です。

 一体、ヴァージルに何があったのでしょう?その答えのヒントは、きっとこの記事。「ストリートは終わった」とまで言い切る、自身の心の変化にあるのでしょう。「オフ-ホワイト」でも「ルイ・ヴィトン」でも感じましたが、ヴァージル、スリムになったし、フィナーレの挨拶も大人な立ち居振る舞いでした。その辺りも、心の変化の現れかもしれません。

 「ストリートは、終わった」。だからこそヴァージルは、仲間内で盛り上がっているヒップホップなカンジから一線を画したかった。出自のカルチャーではなく、その世界を超越した普遍のネクストステージで勝負したかった。そこで黒人モデルの数を減らし、フォーマルでガチンコ勝負し、シルエットもコンパクトにまとめたのではないか?そんな気がします。

 にしても、そんな心意気をちゃんと形にできるメゾンの偉大さ。改めて思い知らされました。正直、「オフ-ホワイト」のフォーマルとは全然違う。スーツに欠かせない美しさのレベルが格段に違うのです。アイデアソースは同じ人。なのに、こんなに変わるのだからトップメゾンとはスゴいモノです。

 一方、アクセサリーは今回もキャッチーです。建築に造詣の深いヴァージルは、ついにバッグの当たり前の形さえ疑い、“ひしゃげた”アクセサリーを並べました。コレが、モノは入れづらいだろうけど(笑)、モノすごく愛らしい!終盤は、キーモチーフになった空を映し出すミラーバッグ。頭の上には大空。カバンの中にも青空なんてハッピーすぎます。

16:05 ヘロン プレストン

 さぁ、ここからが殺人的スケジュール。どう考えても全部はクリアできないのですが、それでも、「1つでも多くのコレクションを見たい!」ダッシュが続きます。結局3回のミニショーに間に合わなかった「ターク(TAAKK)」、ゴメンなさい……。

 殺人的スケジュールの第一弾は、「ヘロン プレストン(HERON PRESTON)」。今回も「カーハート(CARHARRT)」や「CAT」などとコラボレーションして、ワークスタイルを生み出します。ワークスタイルだから、シーズン毎に大きく変わったりはしないのかな?ただ、そのスタイルの裏には意志がこもっているのか?正直、なかなか読み取れません。

16:30 クラークス

 定番のデザートブーツが50周年(‼︎)を迎えた「クラークス(CLARK’S)」の展示会に。そのバリエーションに驚きました。こんなにあるのね~。

 ソールを厚くしたり、それをラバーで覆ってみたり、色のバリエーションも豊富。ベジタブルタンニンやフェイクレザーまで、あらゆるデザートブーツが揃います。イベントでは、アーティストによる染色も。世界で一足のデザートブーツです。

17:40 ダブレット

 さぁ、今シーズン一番の爆走でたどり着いたのは「ダブレット(DOUBLET)」。パリで初めてのプレゼンテーションです。

 会場は、ファミレス⁉︎「ダブレット」同様に「D」から始まる、あの黄色と赤がイメージカラーのファミレスを模した空間には、テーブルと椅子、メニュー、それにナプキンが並んでいます。

 中のメニューは、こんなカンジ。相変わらず芸が細かい(笑)!でも、紙ナプキンの綴りは「DOUBELT」‼︎どこまでが本気で、どこからがジョークなのか⁉︎井野さんワールド、全開です。

 ショーのBGMは、「We Are the World」。モデルは奥まで行くと、ラーメンとか納豆ごはん、デラックスなお子様ランチ的セットを持ってテーブルまで戻ってきます。フェミレスでは、店員さんが持ってきてくれるケドね(笑)。で、みんなでおしゃべりして大爆笑。おいしいご飯は国境を越える。だから「We Are the World」なのですね(笑)。

 ということで、人種も性別も体型のバラバラなモデルたちが着るのは、刺しゅうスエットからスプレーアートのフェイクファーコート(今回の絵柄は、世界の風光明媚な町並みです)など、これまでの名作。新作は、パンダの顔が3Dなスエットやカンフーシューズ(嬉しいか嬉しくないかわかんないけど、「北京」って言葉をいっぱいのせてますw)、ニッパーで切り落とす前のプラモデルみたいに手袋とかビーニーがフレームにくっついてるセーター(冬のジュディ・オングになれること間違いなし)、アマゾン(AMAZON)の段ボールそっくりなトレンチコート(一歩間違えば、倫理的にもアブないw)など、これまた爆笑のアイテムばかり。爆走の甲斐がありました。

16:20 ジェイエム ウエストン

 さらにパリの街を駆け抜けて、シューズブランド「ジェイエム ウエストン(J.M. WESTON)」のプレゼンテーションに滑り込み!今回は新作ではなく、リメイクの発表会。実は「ジェイエム ウエストン」、今後、履かなくなった人から靴を買い取り、修理して、今度はそれを別の人にお手頃プライスで販売するというステキなプロジェクトをスタートします。予定ではリペアなのですが、今回はアーティスティック・ディレクターのオリヴィエ・サイヤール(Olivier Saillard)がリペアではなく、まったく違うシューズに変えてしまった全27足を発表です。

 このプロジェクト、そもそもサステナブルだし、「ジェイエム ウエストン」のシューズは高すぎて買えない人にもチャンスがあるし、思い入れのある一足を譲り受けるという“意志のバトン”みたいなフレームワークがとてもステキ。加えてオリヴィエの提案は本当にユニークで、「リペア以外もやればいいのに」と思ってしまうほどです。「コム デ ギャルソン(COMME DES GARCONS)」みたいに(本人もそう言ってたw)水玉を描いたり、タッセルが以上にデカかったり。老舗の、違う一面を垣間見せます。

 リペアもフルオーダー出来たら面白いし、完全にお任せで予期せぬ一足が届くなんてのもアリかもしれない。そんな風に思います。

19:25 ドリス ヴァン ノッテン

 さぁ、本日のゴールも見えてきました!「ドリス ヴァン ノッテン(DRIES VAN NOTEN)」です。会場は、前回のウィメンズと同じ。ドリスがクリスチャン・ラクロワ(Christian Lacroix)とコラボして、珠玉のコレクションを発表した新オペラ座。その大道具の保管エリアです。

 発表したのは、グラムロック。ハイヒールと大きなビジューがギラギラ輝くコスチュームジュエリー、それにフェイクのフォックスファーという、元来女性が楽しんできたアイテムを男性に委ね、性差を超越というか、蹴散らすかの如きのパワフル&エレガントなスタイルにまとめました。チュールのシャツ、サテンのパンツが、今シーズンのメンズに欠けている色をもたらし、気分を盛り上げます。

 スタイルのポイントとなったヒール付きのブーツは、奇しくも今シーズンのトレンドアイテム。徐々に、ではありますが、ヒール付きで、スクエアのトー(つま先)を持つブーツがメンズの世界にも広がっています。ドリスはそこからジェンダーの垣根を蹴飛ばすコレクション仕上げた雰囲気です。

20:50 ボッター

 さぁ、今日最後のランウエイは、「ボッター(BOTTER)」。「ニナ リッチ(NINA RICCI)」も手掛けるデュオ、ルシェミー・ボッター(Rushemy Botter)とリジー・ヘレブラー(Lisi Herrebrugh)がパリメンズに初挑戦です。応援するために、今日は1日「ボッター」のラガーシャツでパリの街を駆けずり回りました(笑)。

 正直まだまだ荒削りですが、面白いメンズです。クチュール級のDIYメンズ、って言うのかな?ベースは、「ボッター」と言えば、のラガーシャツだったりベーシックなスーツですが、そこに無数の“エノキだけ(洋服の値札を下げるための、プラスチックのアレです)”やガーゼ、パールで繋げたネットなどを合わせたり、解体したり、つまんだり、剥がしたり。工作みたいな感覚で、ストリートのムードを取り入れるのです。でも、どれもメチャクチャ手が込んでる。多分、スーパー高い(笑)。ただ、どこにもない一着ゆえ、面白い進化が見られるかもしれません。

21:30 アグ

 本日のラストは、「アグ(UGG)」。今年12カ月連続でローンチするスニーカーの第一弾お披露目のパーティーです。1月発売のスニーカーは、コレ。アトモスの本明秀文社長が手掛けました。モコモコのファーは、ネズミのイメージ?その証拠に、チーズのワンポイントがあしらわれています。そのほかも、「アグ」の生まれ故郷カリフォルニア州のヨセミテ国立公園をイメージした、コルク製のスニーカーなどが勢ぞろいです。