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靴ほど時代を反映するアイテムはない エディターズレターバックナンバー

※この記事は2019年9月3日に配信した、メールマガジン「エディターズレター(Editors' Letter)」のバックナンバーです。最新のレターを受け取るにはこちらから

靴ほど時代を反映するアイテムはない

 表題の通りですが、特に女性の靴は女性たちの価値観を反映しますよね。

 ハイヒールは、洋服で言うところのコルセットのような存在だと思います。必要ではないし快適でもないが、“美しく見える”という一点で大きな存在価値があるパーツ。コルセットから女性が解放されてもう100年が経ち、美の基準は刻々と変わってきたのに、ハイヒールは生き残り続けまだまだ重要な存在であり、むしろ多くの女性から愛され求められているすごく貴重な存在だと思います。ラクをしたいのにね……。履きたいのよね……。

 ファッションの殿堂、伊勢丹新宿本店本館2階の靴売り場はそんなゆれ動く女心と社会を反映しているから定期チェックしており、先週開かれた売り場改装のプレビューもお邪魔しました。前回の大きな改装は忘れもしない、2012年のこと。東日本大震災後ということもあり、歩きやすい靴、コンフォートな靴が売り場に一気に増えて驚きました。

 以下の話は時々しているので聞かされるのが2度目の方、ごめんなさい。

 2012年の取材で同行した当時の編集長、山室一幸さんはコンフォートな靴が増えた売り場を見て愕然とし、「伊勢丹がこれではダメだ~、ハイヒールは大切だ~、美しくあれ~」と悲しみ、憤っていました。それに対して私は「山室さんは女の気持ちをわかってない。地震の後に歩いて帰宅した恐怖がまだ身体に残っているんですよ!」と言い返しました。山室さんの女性に対する溢れんばかりの愛情と理想を受け止めきれない自分がそこにはいました。大人2人が伊勢丹新宿店2階の靴売り場の中央(「クリスチャン ルブタン(CHRISTIAN LOUBOUTIN)」あたり)で言い争いをしたことが昨日のことのように思い出されます。

 あれから7年。東日本大震災だけが理由ではないですが、あきらかにあの時を起点に私たちの価値観は大きく変わり、よりコンフォートで、より快適なものをファッションに求める傾向は続いていると思います。今回の改装は、そんな女性たちの靴に対する価値観の変化を救い上げるような施策がいろいろ。この記事でも「1.ラグジュアリーシューズの比較購買がしやすくなった」と「2.パンプスをアプリでマッチング!足を計測してから選ぶ」の2つのタイトルは特に、今の時代を表していると思います。

 極論すればもはやオケージョン対応、とも言われるハイヒールやパンプスを、デジタルと接客の力でポジティブに提案する可能性をそこに見ました。もしかしたらコルセットも、当時デジタルが発達していたら残っていたのかも!?(正直、真夏にコルセットを想像するだけで息苦しいけど)。デジタルの力が美の基準をも左右するんだな~と思いつつ計測器を写真に収めました。

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