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「スキンケアフロアの設計がうまい」伊勢丹新宿本店約40年振りの大改装 化粧品売り場のデジタル施策を市川渚が体験 後編

 三越伊勢丹は2019年9月25日、伊勢丹新宿本店本館の化粧品フロアのリモデル第1弾として2階のスキンケアゾーンをオープンした。“セルフケア”をコンセプトに“なりたい自分になるために、素肌を整え、素質を高める場”と定義する同フロア。これまで1階にそろえていたスキンケアカテゴリーを2階に拡張移設することでより深い製品提案やコンサルテーションが可能になった。

 約40ブランドをそろえる同売り場では新たにデジタルテスターを用意し、顧客自身が商品を調べることができるツールを設けたほか、パーソナルな肌測定を行うAI(人工知能)搭載型のツールを取り入れたデジタルコンサルテーションがキーとなる。

 同売り場では指名買い、目的買いに対応できるクイックカウンターを各ブランドに新設した。これまでスキンケアと言えば着席し、接客を受けながら購買につなげるのが主流だったが、クイックカウンターでは買い物の時短ニーズに応え、時間がない顧客にも満足できる体験を提供することができる。

 今回、ファッションやデジタルの業界で活動するクリエイティブ・コンサルタントの市川渚氏に1階メイクアップ同様売り場を体験してもらった。

 まずは「SK-II」。タブレット端末に顔を映し出すと、AR(拡張現実)で化粧水のつけ方をレクチャーするツールを設置。お客の顔の形に合わせて映像内に手が投影され、それにならって実際に手を動かせば正しく効果的に化粧水を塗布することができるというもの。そのほかにも、メイクを落とさず測定できる肌診断をそろえる。同サービスは乾燥や毛穴、シワなど肌の悩みなどをカウンセリングし、ユーザーと同年代の肌データをベースに肌年齢や状態などを診断、お客一人一人に合ったスキンケア方法を提案するというものだ。

 同ブランドの美容部員に曰く「毎日肌の状態は変化します。診断した方の多くは肌年齢を気にされますが、それよりも水分量やくすみなどを気にされたほうが今後お手入れしていく上では重要です」とのこと。

 実際に肌診断を受け、市川氏は「こうして診断し、肌年齢を可視化されると数字ばかりに目が行きがちですが、改めて今現在の肌の状態を知り、スキンケアの大切さを再認識しました。メイクを落とさずに診断を受けることができるのも手軽で嬉しい。継続して診断を受けることで肌の状態が改善されていくことが分かれば、モチベーションも高まりますね。」とコメントした。

 次に「イプサ(IPSA)」。素肌の状態の診断結果から、肌に合ったファンデーションなどのリップの色などを提案する機能をそなえ、測定結果はスマートフォンに保存できる。肌状態に合わせておすすめされた製品などを確認出来るほか、会員登録することで肌データや購買履歴、受け取ったサンプルまでデータ化され、全国の「イプサ」店舗で確認できるシステムを導入した。また、お客は肌データを元にクイックカウンターでも製品を購入できるというのも特徴だ。

 「細部まで診断して下さった上で、自分に合う製品をお勧めしていただけるので、説得力が増しますね。また、受けた診断内容や勧めていただいた製品など店頭での体験をベースにして、それらをサポートするサービスがスマホを通していつでもどこでも利用できる仕組みはとても現代的。ユーザーファーストな設計で好感を持ちました。」と語る。

 今回の大改装でより強化した“体験型”のデジタルコンテンツは、リアル店舗とオンラインをつなぐ足がかりになりそうだ。これまでAIやARを用いたデジタルコンサルテーションといえば、メイクアップが主流だった。スキンケアでも店舗に足を運ぶことで体験できるサービスや提案などを拡充することで、お客は肌状態を可視化できるようになりオンラインでも自分に合った製品をリピート購入することができる。季節の変わり目や肌の状態が揺れる時などに店頭に足を運べばその都度パーソナルな提案を受けられ、店舗側も顧客が定期的に足を運ぶ回数を増やすことができる。ECサイトなどが発展し、顧客が店頭に行かずとも製品を購入できる時代で、リアル店舗はそのあり方を問われているが、互いの利点を生かし上手く融合した施策が今後ますます増えそうだ。