(左)廣田悠子/コントリビューティング・エディター:京都市在住歴5年。創業100年超の老舗が市中各所にさりげなく存在することに感服し、買って支える一員として日々生活している。お気に入りの時間は哲学の道や鴨川の散歩
ILLUSTRATION : UCA
毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2026年7月13日号からの抜粋です)
廣田:西陣織の老舗HOSOOの特集です。和装関連の市場が縮小する中、帯用の約32cm幅だった織機を約1年かけて150cm幅へと独自に改良。インテリアファブリックとしての西陣織を提案し、ラグジュアリーという新たな市場を切り開き、伝統工芸の可能性を広げました。そのHOSOOが今度はシルクやヘンプを原料から作る、しかも最新の科学技術を結集するという新たな挑戦を始めると聞き、これは面白そうだなと思い、今回の特集を企画しました。
皆合:私は表紙撮影で社長の細尾真孝さんとご一緒しました。着物での撮影だったのですが、スタイリングや空間を生かせる場所の提案など、終始クリエイティブな視点で向き合ってくださったのが印象的でした。細尾さんは、お父さまから「倒れるなら前へ」という言葉を受け継いでいるそうで、伝統を守るだけでなく、革新していこうとする姿勢を随所に感じました。
廣田:細尾さんはインタビューで「歴史は1枚のタペストリーのようなもので、自分はその緯糸にすぎない」と話していました。伝統をそのまま残すのではなく、その時代ごとの価値や技術、人との出会いを織り込みながら未来へつないでいく。その中で何を織り、どう調和させるかは、自分の美意識にかかっているという考え方なんです。細尾さんらしいロマン溢れる思想であると同時に、西陣織が何百年も受け継いできた「美」の本質を表す言葉ですよね。
京都の街に息づく「地続き感」
皆合:京都で撮影した意味も、まさにそこでした。街を歩くと、歴史と現代が自然につながっていて、その「地続き感」がHOSOOの思想とも重なって見えました。
廣田:京都に住んでいると、時間軸が独特だなと感じます。いわゆる老舗が多いのですが、「老舗」と言えるのは創業300年以上という感覚が一般的で、まずそれに驚きました。ちなみに老舗が多くある京都でも特に老舗とされる寺院用の仏具店「田中伊雅佛具店」は、創業がなんと平安時代!1100年以上事業を続け、ビジネスは50年という長いスパンで考えていることから、次の世代への継承はもはや自然なことなのだろうと思います。細尾さんの考え方にも、同じ時間の捉え方が息づいているように感じます。何を次の世代につなげていくのか。これはサステナビリティを考える上でも重要な視点だと思います。