アトモスの創業者・本明秀文さんの独自の目線と経験から、商売のヒントを探る連載。スポーツブランドとハイブランドの協業は、話題性や機能性、価格、プロモーション面など、双方に大きなメリットをもたらす。最近の象徴的な事例が、「アディダス(ADIDAS)」とランニングブランド「サティスファイ(SATISFY)」のコラボだ。今回は、その背景をひもときながら、ラグジュアリー戦略やリセール市場の拡大について語る。モノを所有すること以上に、その先の価値が重視される時代。これからの消費はどう変わる?(この記事は「WWDJAPAN」2026年6月22日号からの抜粋です)
本明秀文(以下、本明):「アディダス」が先日発売した、フランスのランニングウエアブランド「サティスファイ」とのコラボは、「アディダス」の勢いを感じさせる。「サティスファイ」は、パンクやストリートカルチャーを取り入れた独自のランニングスタイルで人気だけど、Tシャツが3万〜4万円、シューズが6万円と、一般的なスポーツブランドに比べると価格帯が高い。だけど「アディダス」と組むことで、価格も抑えながら認知も広げられる。一方の「アディダス」にとっても、ランニングに新しいファッションの文脈を持ち込める。
──双方にとってメリットが大きいんですね。
本明:スポーツブランドとハイブランドのコラボは、長らく「ナイキ(NIKE)」が得意としてきたビジネスモデルだった。「アクロニウム(ACRONYM)」のエロルソン・ヒュー(Errolson Hugh)が手掛けていた「ナイキ ACG(NIKE ACG)」や「オフ-ホワイト(OFF-WHITE)」コラボなんかは、まさにそれだよね。「アクロニウム」や「オフ-ホワイト」のジャケットは数十万円するけど、「ナイキ」であれば3万円で買える。そしてプロモーションの規模もブランド単独でやるのとケタ違い。今回の「サティスファイ」コラボでは、アリゾナ州オロバレーのナランハパークに「ザ・サークル・ピット(THE CIRCLE PIT)」と名付けたコースを作って、バンド演奏の中をランナーが走るというライブ体験型のイベントをやっていた。競技というより、コンサートに近い感覚でランニングを再定義するコンセプトだよね。相当な制作費がかかっていると思う。こんなにお金をかけて元が取れるのか?とも思うけど、カニエ・ウェスト(Kanye West)の発言が問題になったときに、「イージー(YEEZY)」の未販売在庫が約13億ドル(約2000億円)に上ると報じられて、予想以上に作っていた。だから世界でドーンと売れば、プロモーションにかけた費用なんて簡単に回収できるんだろうね。
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