自民党有志議員による「Jビューティ産業研究会」(会長・林芳正総務大臣)は15日、日本の美容産業の競争力強化に向けた提言をまとめ、木原稔官房長官に提出した。
韓国が国家総出でKビューティを世界市場へ押し上げる中、研究会はJビューティを「国家戦略産業」と位置づけ、政府の成長戦略に組み込むよう提言。化粧品に加え、美容サロン、ネイル、エステ、美容機器など幅広い関連産業を官民一体で育成する必要性を訴えた。
提言では、「海外展開支援」と「国内規制の見直し」を2本柱に据え、官民横断の「Jビューティコンソーシアム」創設や、化粧品広告規制の見直しなどを打ち出した。
“オールジャパン”で海外展開を後押し
海外展開支援の柱となるのが、美容関連産業が横断的に連携する「Jビューティコンソーシアム」の創設だ。
これまで化粧品メーカーや美容関連事業者は、それぞれ個別に海外展開を進めてきたが、研究会では今後、“オールジャパン”での発信が不可欠と判断。化粧品だけでなく、美容テックやフェイシャル技術、日本式の美容サービスなども含め、日本発美容産業全体のブランド価値向上を目指す。コンソーシアムには、提言策定に向けた意見交換会に参加した業界団体や企業などに参画を呼びかけ、業界横断で海外展開を後押しする体制構築を進める考えだ。
発足後は、官民で海外展開のロードマップを策定し、「5年後にどの規模を目指すか」といった数値目標も共有する方針。同日開催の記者説明会に登壇した小林史明衆議院議員(冒頭写真)は「今年中にも立ち上げたい」と強調。海外展開を支えるOEM・ODM体制の強化や研究への共同投資などを通じ、日本全体の供給力や開発力の底上げを図る姿勢を示した。
マーケティング面では、日本貿易振興機構(ジェトロ)との連携に加え、急拡大するライブコマース市場を見据えたインフルエンサー活用や、コンテンツ産業と連動した海外プロモーションも推進する。
中でも注目されるのが、政府が成長戦略として掲げる「コンテンツ産業」との連携だ。韓国ではドラマを通じた化粧品訴求が一般化し、KカルチャーとKビューティが一体となって世界市場へ浸透してきた。一方、日本では広告・表現規制の厳しさから、同様の展開が広がりにくかった。研究会では、海外向け配信コンテンツなどを活用し、ドラマや映画でのプロダクトプレイスメントを含め、日本独自の美容文化や世界観を海外へ発信していく考えだ。政府が今夏まとめるコンテンツ産業の成長戦略に、「Jビューティ」を加えることも求めている。
「サービス」もJビューティの競争力の一つと位置づける。海外で日本式の美容サービスを展開し関連製品の販売拡大につなげるほか、訪日客に美容体験を提供し、帰国後のリピート購入につなげる“オールバウンド”戦略も推進。海外で活躍する理美容師やネイリスト向けの技能認定制度や留学制度の整備を進め、日本式美容サービスの海外普及を後押ししていく方向だ。
化粧品広告規制の見直しを議論
第2の柱となる「国内規制の見直し」で焦点となるのが、薬機法における化粧品広告表現規制だ。
現在、化粧品の効能表現は56項目に制限されているが、研究会側は「海外勢と比べて訴求力が弱い」と指摘。保湿率などの数値訴求や体験談表示を可能にする方向で、厚生労働省と協議を進める。厚生労働省はすでに「表現範囲を広げる」考えを示しており、小林衆議院議員は「来年中の適用を目指す」と説明した。
このほか、薬用化粧品(医薬部外品)については、既承認品目と有効成分が同一の場合、審査期間の短縮を求めた。加えて、海外から流入する違法広告への対策強化も盛り込んだ。違法広告については、都道府県単位ではなく、国が包括的に対応する必要性を訴えている。
10兆円産業を“個社競争”から産業競争へ
現在、化粧品や美容家電、美容師、ネイル、エステなどを合わせたJビューティ産業は約10兆円規模に達し、13.4兆円規模のコンテンツ産業にも匹敵する。雇用者数も約1000万人(2024年)に上り、その多くを女性が占めることから、女性活躍を支える産業としての側面も大きい。
韓国勢がスピード感ある製品開発や高い発信力を武器に世界市場で存在感を高める中、研究会では、日本ならではの品質や安全性、処方技術、日本式サービスといった強みを産業競争力へ転換していく必要があるとみている。個社単位の競争にとどまらず、“オールジャパン”でJビューティの価値を発信することで、日本の美容産業全体の成長につなげていく考えだ。