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阪急うめだ「ビヨンドワールド」が好調、男女ミックスが奏功

“百貨店の西の雄”と称される阪急うめだ本店は、国内外から広域来店される顧客のデスティネーション(目的地)となるべく、新ストアコンセプトに「夢と冒険と感動体験にあふれた世界最高水準の楽しさを提供するグローバルデパートメントストア」として2024年度から約120億円を投じてリモデルを進めてきた。MDや店舗環境の高感度化・ハイグレード化などを推進。今年3月20日にはラグジュアリーブランドをインストア旗艦店化し、ハイエンドジュエリー&ウォッチワールドを拡大した「ハンキュウ・ラグジュアリー(HANKYU LUXURY)」を5、6階にオープンしている。この富裕層向けの施策の一方で、2025年4月には国内・アジア広域の高感度次世代層に向けてジェンダー、カテゴリー、グレードの垣根を越えた新たなコンセプトゾーン「ビヨンドワールド(BEYOND WORLD)」を3階に約1900㎡でオープンした。1周年を前に、あらためてその開発背景と狙い、イベントスペースの積極活用による新規顧客獲得策、最新のポップアップである中国発「ウーヤー(UOOYAA)」の見所などについて聞いた。

ターゲットはアジア全域、ジェンダーやカテゴリーを越境

――新コンセプトゾーン「ビヨンドワールド」では、高感度なファッション好きのアジア全域の若年層に向けて、従来のジェンダーやカテゴリーの枠を超えたファッションとライフスタイルを提案することを目指したという。開発背景と狙いは?

武田凌・阪急阪神百貨店第一店舗グループモードファッション商品統括部モード・ビヨンド商品部担当:リモデルに際して、次世代顧客の獲得を目的としたマーケティングを行い、購買行動分析を実施した。その結果、高感度な若年層に共通する価値観として「ジェンダーレス」「カテゴリーミックス」「グローバル」の3点を特定した。これらの価値観に対応した商品構成と、阪急うめだ本店独自のクリエイティビティを掛け合わせた新ワールドとして、新たな顧客体験を提供することを企図したものだ。ファッションへのこだわりと先見性、美意識を持ち、自分の好きや個性を大切にするファッション好きの期待と好奇心に応えたいと考えた。

――百貨店の中では男女のクロスマーチャンダイジングやジェンダーレスの提案はこれまであまりなされてこなかった。交渉時のブランドの反応や、オープン後の業界からの声は?

武田:交渉段階からこれまでの百貨店の常識にとらわれない新しい試みに対し、国内外のブランドや業界関係者から非常に高い関心と期待を寄せていただいたと手応えがあった。実際にオープンした後はファッション感度の高い若年層を中心に熱狂的な支持を得ており、「百貨店がここまで振り切ったフロアを作ったのか」という驚きとともに、新たな客層を呼び込むモデルケースとして高く評価していただいていると実感している。

――1周年を振り返って、MDやキャンペーンなどを含めた打ち出しで好調だったブランド・アイテム・イベントは?

武田:常設ブランドで好調なアイテムは、Z世代特有の「自己表現」や「他者との差別化」への欲求を反映し、遊び心のあるアイコニックなジュエリーやチャームなど、パーソナライズ可能なアクセントアイテムが支持されている。ブランド別では雑貨やアクセサリーが充実している「ディーゼル(DIESEL)」「ヴィヴィアンウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)」「アンブッシュ(AMBUSH)」などが好調に推移している。

次世代ならではの多種多様なニーズに最先端コンテンツで応えようとイベントスペースも展開。1年を通じて「カテゴリー、ジェンダー、国籍の超越」を一貫して重視してきた。具体的な事例として、昨年8月、(BLACKPINK、TREASURE、BABYMONSTER、AKMUなどが所属する韓国の芸能事務所)「YGエンターテインメント」の期間限定イベントで、ターゲットであるアジアの若年層に向けたKカルチャーを提案した。結果、新規顧客が9割を占め、そのうち6割が29歳以下の次世代層という、狙い通りの新規客獲得を実現した。また、8〜10月の「ア・ベイシング・エイプ(A BATHING APE®/BAPE)」のイベントでも新規客が約9割に達した。客層はメンズが3割、インバウンド(外国人観光客)が7割と、非常に多様な層の来店に成功した。

――1周年を前に、見えてきた課題と、未来に向けた施策は?

武田:ターゲットとしていた若年層の獲得は堅調に推移している。一方で、好調なアクセサリーや雑貨に対し、RTW(既製服)とのコーディネート提案、つまり「セット購入」をいかに促進させるかが課題だ。また、新規客の割合が非常に高いため、いかにリピートしていただき、来店頻度を向上させるかも重要だと考えている。今後の施策としては、幅広い趣味嗜好をもつ若年層のお客さまに対して、ニッチで魅力のあるライフスタイルコンテンツの提案と、他フロアとの連動を深めることで、店単位で若年層向けコンテンツを提案しようと考えている。セット購入率向上に向けては、SNS等のオンラインと店頭のオフラインを連動させたスタイリング提案を強化する。国内外の新進気鋭ブランドやカルチャーコンテンツのイベントを継続的に展開し、フロア全体で「今の空気感」を捉えたトータルコーディネートを発信していく。

中国発「ウーヤー」が関西上陸、日中韓も横断

――3月の春最盛期に中国発の「ウーヤー(UOOYAA)」のポップアップを導入した。昨年10月のラフォーレ原宿に続くもので、関西初登場となった。開催期間も4月7日まで延長を決めたという。ブランドとの出合いやその魅力、「ビヨンドワールド」として期待することとは?

武田:「ウーヤー」との出合いはインスタグラムだった。昨年の日本進出のタイミングで彼らの投稿を目にし、ストリートの自由奔放さと緻密なクラフト感を融合させた「圧倒的な遊び心」に、一瞬で心を奪われた。アジア発の気鋭ブランド特有の熱量とエッジの効いたスタイルを、常に新しい刺激を求める当店のお客さまへいち早く紹介したいと考え、関西初のイベント展開をオファーした。期待することは2点。一つは、固定観念に縛られない「ウーヤー」の自由な発想を伝えることで、お客さまのファッションへの探求心を刺激すること。もう一つは、自らアジアのトレンドを発信する「デジタルネイティブなZ・ミレニアル世代」との新たな接点を作ることだ。オンライン上の熱量をリアルな店舗(ビヨンドワールド)へと呼び込み、ここが次世代ファッションコミュニティの新たな拠点となることを願っている。

――館全体の商況とインバウンドの状況、中国の日本渡航自粛の影響や見通しについては?

武田:「グローバルデパートメントストア」化を目指したリモデルに伴う大型改装が継続するなか、国内のお客さまについては、前年の売上高を上回る水準で好調に推移している。3月20日の「HANKYU LUXURY」のオープンによって、富裕層を中心としたお客さまのさらなるご来店を期待している。一方で、インバウンドについては、関西国際空港における大幅な減便に伴い、中国からのツーリスト客のご来店が大きく落ち込んでいる状況が続いている。見通しは正直立たない状況だが、顧客化できている海外VIPの方々については、比較的堅調にご来店いただている。また、東南アジアやヨーロッパからのお客さまは前年を上回るペースで増加している。今後もご来店いただくお客さまの国籍・エリアは拡大が予想されるため、日本のお客さまと変わらないサービス、環境の提供に努めていく。

――「ビヨンドワールド」のゾーニングを見ると、韓国・現代百貨のソウル汝矣島(ヨイド)店「ザ・ヒュンダイ・ソウル」の地下にある「クリエイティブ・グラウンド」のコンセプトにも近い先進性があると感じた。勢いのある韓国ブランド/K-ファッションや、それに続く「ウーヤー」などの中国ブランド/C-ファッションに、日本発のJ-ファッション、グローバル発のG-ファッションを融合させたストリート×コンテンポラリーの提案は、百貨店の若年層の取り込みに有効そうだ。

武田:韓国(K)や中国(C)といった国やカテゴリーの枠組みで捉えるのではなく、お客さまにとって「これまでにない驚きや新しい体験」を提供し続けることが本質的な価値だと考えている。アジアをはじめとした海外ブランドが持つ圧倒的なエネルギーと、日本(J)ならではの繊細な感性や編集力を融合させ、グローバルな視点でキュレーションしていく。それこそが、これからの百貨店が若年層を惹きつけるための鍵であり、新しい魅力創出につながるものと確信している。

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