PROFILE: 木村カエラ/アーティスト

“ミニ・スカートの女王”として一台ブームを巻き起こした元祖スーパーモデル、ツィッギー。彼女の人生とモデルとしてのキャリアを追ったドキュメンタリー映画「ツイッギー(Twiggy)」が4月24日に公開される。1960年代、イギリス・ロンドンで“スウィンギング・シックスティーズ”と呼ばれるポップカルチャーが街全体を創造的なエネルギーで包み込んでいた。この時代に生まれたファッション、アート、音楽、文学は心の閉塞感を打ち破り、活気あふれるエネルギーで若者たちを魅了していた。“スウィンギング・シックスティーズ”を象徴する人物といえばツイッギーの存在だ。16歳でデビューし、瞬く間にスターとなった彼女は小枝のように華奢な体と大きな瞳、長いまつげがトレードマークで、ファッション界に新しい風をもたらしていく。本作では当時の貴重なアーカイブ映像や独占インタビューを通して、華やかな成功の裏側にある葛藤や挫折、そして現在に至るまでの軌跡をたどる。
また公開に先駆け、同作品の予告編のナレーションを務めるアーティストの木村カエラを迎え、映画の見どころについて語ってもらった。敬愛するモデル、ツイッギーへの思い、ファッション観、そして母としての現在地といった2人の共通点も。ツイッギーをイメージしたレトロポップな60’sファッションにも注目だ。
“なにこれ!”から始まった、ワクワクと憧れ

−−木村さんはツイッギーの熱心なファンだそうで、写真集なども収集されているとうかがいました。彼女を知ったきっかけについて教えてください
木村カエラ(以下、木村):ツイッギーに興味を持ったのは18歳くらいだったと思います。もともと1960〜70年代のファッションや音楽が好きで関連書籍を集めていたなかで、あるファッション誌でポーズをとる少女のようなモデルに目を奪われました。目にダブルラインを引いて、まつ毛も思い切り描いて……。“なにこれ!”ってもう衝撃でした。調べるうちに、その少女こそが伝説のモデル“ツイッギー”だと知りました。何よりも心を奪われたのは、その圧倒的なビジュアルでした。これまで見たことのないメイクも相まって、私にとって理想をカタチにしたような存在。お人形のようで、妖精のようで、どこか人間離れした雰囲気さえ感じさせる。その衝撃はいまも鮮明に覚えています。小柄で細身という当時のモデルとしてはめずらしいルックスも、読者モデルをしていた私の心を強く揺さぶりました。私の場合は、身長はさほど問われませんでしたが、周囲には背の高いモデルさんが多く、どこか引け目を感じたことも。だからこそ彼女の姿は強く胸に響きました。“ツイッギーだって小柄なんだから大丈夫”って。
−−華やかな存在でありながら、どこか等身大の魅力も感じさせるツイッギーですが、木村さんから見た唯一無二の彼女の魅力とは?
木村:ツイッギーには、ほかの誰にもない唯一無二の魅力がたくさんありますよね。かつてはグラマラスな体型が主流だった時代の中で、彼女はスレンダーな体型やボーイッシュなファッション、大胆なアイメイク、印象的なポージングで自身のスタイルを堂々と打ち出しました。流行にはその時代ならではの“型”がありますが、彼女はそこに寄せるのではなく、自分らしさを前面に押し出していった。ツイッギーを見ていると、「自分のままでいい」と自信が持てる。だからこそ永遠のファッションアイコンなのだと思います。
−−彼女のファッションやスタイルについてはどのような個性を感じますか?
木村:大胆なフラワープリントや色の組み合わせ、ボーダー同士の重ね着など自由なスタイリングにひかれます。枠にとらわれず、今にも飛び出してきそうな自由な軽やかさ。そういった空気感は、1960年代から70年代のファッションや音楽に色濃く表れているのを感じます。きっと私は、その時代が持つ解放感と革新性に満ちた世界観が好きなんだと思います。本作のビジュアルポスターに用いたフォントにも、どこかヒッピーカルチャーを思わせるニュアンスがありますよね。
−−華やかな時代を駆け抜けた彼女ですが、歌手やミュージカル俳優としても活躍し現在もパートナーと幸せに過ごしています。自分らしくハッピーに生きる姿は長い人生の歩み方としても印象的ですよね。現在の彼女の生き方について、どのように感じますか?
木村:自分自身の個性をきちんと理解し、それを最大限に生かし輝き続ける姿に心を打たれました。そういう生き方ができる人は年齢に関係なく、内側からキラキラと光を放っているように見えます。この作品を観たとき彼女のエネルギーを全身で感じたし、私もそんなふうに生きていきたいってパワーをもらいました。
真似はしない。“好きなもの”は自分なりの解釈で昇華

−−今日のファッションやヘア、メイクもどこかツイッギーを思わせますが、これまでにご自身のスタイルに取り入れたことはありますか。
木村:どれだけ憧れても、私はツイッギーになることはできません。だからこそ“私自身”をどう表現するかを大事にしています。もちろん大好きな世界観なので、ツイッギーのようにダブルラインのアイメイクを施したこともあるし、60年代風の衣装で撮影に臨んだこともあります。でもそれは単なる模倣ではなく、あくまで自分なりの解釈として取り入れるようにしています。憧れをエッセンスとして抱きながらも、表現するのはいつも“私自身”。このスタンスでこれからも自分らしい世界をつくっていきたいと思っています。
−−木村さんのスタイルには確固たる“自分軸”があり、それを心から楽しまれている印象を受けます。普段はどのようなインスピレーションでファッションやヘアを楽しんでいますか?
木村:私にとってファッションは魔法のような存在なんです。お気に入りの服に袖を通すと、自分が輝くのが分かる。でも着たい服があっても「今は無理かもしれない」と感じてしまう瞬間だってある。怠けてしまった自分にハッとして、「もうミニは似合わないのかな」って落ち込むことも。でも私はそこで諦めるのではなく、それを原動力にするタイプなんです。限界を決めてしまうのではなく、もう一度ちゃんと鍛え直して、また堂々と着られる自分になる。本当に服が好きだからこそ、着たいものを自由に選べる自分でいたいんです。でも家で過ごすときはスエットにパーカといったラフな格好ばかり(笑)。オンとオフのギャップも含めて、ファッションは自分を切り替えてくれるスイッチなんです。ヘアスタイルもその時々の気分やモードによって変わります。やったことない色や髪型が常にテーマにあって、ショートにしたりボブにしたり。でもパッツンの前髪と短いボブが自分の中では一番しっくりくる。なので大事なライブや周年の時はボブに戻します。
−−今年2月にライブを開催しましたが、衣装についてはどんな点にこだわりましたか。また“ファッションの魔法”がかかる瞬間とはどんな時ですか?
木村:表現したいことと衣装がマッチした瞬間です。私にとってファッションは単なる服ではなく、心の強さや自分の中の繊細な部分をそっと動かしてくれる存在。たとえばライブハウスのようにお客さんとの距離が近い場所では、あえてラフなTシャツとデニムを選びます。ステージと客席の境界が近いからこそ、衣装で構えすぎると壁ができてしまう気がするから。いっぽうで会場が大きくなり、向き合う人数が増えれば増えるほど、大胆な衣装をまとうことで、自分の心を守る鎧のような役割を果たしてくれることも。ファッションは表現の一部であると同時に、ステージに立つ自分を支え守ってくれる存在だと思っています。
母として、アーティストとして、ありのままの自分を選び続ける

−−もう1つツイッギーとの共通点として、木村さんはお子さんを育てながら仕事を続け、夢を持ち続けています。すべての両立は決して簡単なことではないと思いますが、日々の忙しさの中で意識して守っていることや心がけていることはありますか?
木村:本当に慌ただしい毎日です(笑)。母親として子どもが自分よりも大切だからこそ、つい無理をしてでも頑張ってしまう。でも、限界を感じる瞬間は誰だってありますよね。そんなときは無理を隠さず、「もうダメです!」と子どもたちに宣言してます。常に完璧でいようとするのではなく、自分の状態を正直に言葉にする。頑張ることも大事だけれど、限界を認める強さもまた同じくらい尊い。ママも人間なんだよって。その姿こそが、子どもたちにとっても大切なメッセージなのかもしれません。あと「ダメなときはダメ」と最初にきちんと伝えるようにしています。それは親と子という上下関係ではなく、“人と人”として向き合うこと。私が悪かったと思えば、素直に「ごめんね」と言う。そうすると、子どもも自然と「ありがとう」や「ごめんね」をきちんと伝えてくれるようになりました。仕事の現場では、家族との時間も大切にできるようスケジュールを組んでいただくなど周囲のスタッフにも支えてもらっています。
−−ちなみにお子さんも木村さんの影響を受けて、一緒にファッションを楽しむことはありますか。たとえば服を選ぶ時間を共有したり、お互いのコーディネートについて意見を交わしあったり
木村:子どもと服をシェアすることが増えました。私が少し大きめに着ているアイテムや、自分で選んで買った服を自然に着こなしていたり。親子で同じ服を楽しめるのは嬉しい変化ですね。
−−子どもと会話しなら一緒に服をシェアできるっていいですね。ちなみにお子さんはツイッギーのことをご存じなのでしょうか? 今回、木村さんが予告編のナレーションを務めることについてどのような反応をされていましたか。
木村:「え、本当?よかったじゃん!」って(笑)。ツイッギーの写真集も見せているので、宣伝に行ってくると伝えたら、「すごいね、よかったね!」ってとても喜んでくれました。
ファッションはいつだって自由に、とことん楽しむ!
−−あらためて映画をご覧になって、特に心に残っているシーンや素敵だなと感じた場面はありますか?また作品を通して、よりツィッギーに魅力を感じたポイントを教えてください
木村:ツイッギーについては以前から多くを知っているつもりでしたが、本人のインタビューや当時の映像を通して、その裏側にある想いや人生の選択までを知ることができました。彼女は若くして自分の魅力や個性をしっかり理解し追求してきたのではないでしょうか。その主体的な姿勢こそが、世代を超えて愛され続ける理由なのだと改めて感じました。さらに印象的だったのは、「成功よりも自分の人生を大切にする」という姿勢です。自分自身を尊重することで結果的に良い方向へ導いてくれる。そしてファッションはもっと自由に、とことん楽しむべきなんだなって。
−−60年代の全盛期に注目が集まりがちなツイッギーですが、彼女の人生全体を丁寧に描いている点も印象的でした。女性の生き方のひとつの指標や、ファッションを見ているだけでも十分に楽しめそうですね。
木村:本当に元気をもらえる作品で、さまざまな年代の方に響くものがあると思います。私にとっては10代の頃からずっと追い続けてきた存在で、なおさら深く感じるものがありました。この作品を観ることで多くの方が前向きな気持ちになってくれると嬉しいです。
映画「ツイッギー」について
60年代を象徴する元祖スーパーモデル、ツイッギーを追ったドキュメンタリー映画「Twiggy(ツイッギー)」は、3月7日からイギリスとアイルランドで公開をスタート。日本では4月24日から公開予定だ。監督は『マリー・クワント スウィンギング・ロンドンの伝説』(2021)に続く、俳優サディ・フロスト(Sadie Frost)が担当した。同作品では、ツイッギー自身がこれまでの人生を振り返るとともに、貴重な当時の映像やファッションも満載だ。ほか、ポール・マッカートニー(Paul McCartney)、ステラ・マッカートニー(Stella McCartney)、ダスティン・ホフマン(Dustin Hoffman)、ブルック・シールズ(Brooke Shields)がインタビュー出演している。
PHOTOS:MICHIKA MOCHIZUKI
STYLYNG:CHIE NINOMIYA
HAIRMAKE:MIHOKO FUJIWARA
CREDIT:マフラー 8800円(ボクボク|ピーアールワントーキョー)/ネックレス3万7400(グーニャ プロジェクト|H3O ファッション ビュロー)/ワンピース、モックネックニット、タイツ、パンプス スタイリスト私物 (H3O Fashion Bureau TEL:03-6712-6780)