ファッション

誰もが自由に楽しめる地平 「ノンレクチャー ブックス/アーツ」の空き地的役割とは

3月13日、東京・渋谷にコンセプト型のアートブックショップ「ノンレクチャー ブックス/ アーツ(NONLECTURE BOOKS/ARTS)」がオープンした。書店やギャラリーといった既存の枠組みに収まらない、アートブック、展示、音楽、ドリンクなどを横断する複合的なカルチャースペースとして展開する。ノンレクチャー代表の持田剛は、タワーレコード渋谷店にあった「タワーブックス」のマネジメント、「代官山 蔦屋書店」の洋書仕入れ担当、「ブックマーク 原宿」のディレクションを歴任してきた。持田は本店舗を「書店でもギャラリーでもない、自由に過ごせる空間を目指した」と語る。本店舗はアウトドア・スポーツメーカーのゴールドウインが協賛している。

店名にある「ノンレクチャー」は、アメリカのモダニスト詩人であるイー・イー・カミングスの著書「I: Six Nonlectures」に由来。1950年代、カミングスがハーバード大学で行った6日間の講義では、詩の書き方などの技術論ではなく、自身の生き方について語ったことで知られる。海外、とりわけニューヨークスクールや抽象表現主義のアーティストの間ではバイブル的に読まれてきた一冊だ。「詩の技術ではなく生き方を語った講義の精神に共感した。何かを教える場所ではなく、自由に集まり、楽しめる空間にしたかった」と持田は説明する。

空間設計の思想には、建築家・青木淳の著書「原っぱと遊園地」の概念も影響している。多くの商業施設が遊び方を限定する“遊園地型”であるのに対し、同店はドラえもんに登場する原っぱのように、人が思い思いの過ごし方をできる場をイメージした。「決められた楽しみ方だけではなく、自由に過ごせる場所をつくりたかった」と持田は話す。

店内にはアートブックのほか、展示スペースやポップアップエリア、バー機能を備える。週末にはトークイベントやDJイベント、ミニライブなども予定しており、場の役割を固定しないカルチャースペースとして運営していく。持田の四半世紀近くにわたる洋書を中心とした各書籍仕入れの経験をもとに選書を行ったアートブックは約1500冊、約700タイトルが取り揃えられる。世界中の出版社から届くカタログを参考に、シーズンごとにラインアップを更新するという。

「渋谷はコロナ以降、外国人が非常に増えた。海外からの来訪者にも楽しんでもらえる店にしたい」と語る一方で、漫画やアニメといったコンテンツはあえて最小限にとどめた。「渋谷には”まんだらけ”や”ヴィレッジヴァンガード”など、そうしたコンテンツを扱う店がすでに多くある。自分たちはポストライクなアートや写真、映画、サブカルチャーなどを横断して紹介していきたい」と説明する。

アパレルに目を向けると、オリジナルTシャツのほか、関係者によるTシャツやバッグも販売している。「ダブルタップス」デザイナーの西山徹が手がけるオンラインメディア「STAMP」のスーベニアTシャツを本店限定で販売。また、ジェリー鵜飼や五木田智央と関係の深いブランド「タコマフジレコード(TACOMA FUJI RECORDS)」や「ルーズジョインツ(LOOSE JOINTS)」のTシャツなど、アーティストに縁あるアイテムも並ぶ。

ドリンクは、ナチュラルワインとクラフトビールを中心に構成。セレクトはポキリコーが担当し、メスカルやテキーラは下北沢の万寿寺酒場が協力する。コーヒー豆はジャックダニエルズミントのものを使用し、来店者はドリンクを楽しみながら展示や書籍を閲覧できる。

店内奥のスペースでは、ゴールドウインのブランド哲学と連動した展示を展開する。ネイチャーやエコロジーといったテーマを軸に、よりコンセプチュアルな作品を紹介する構成で、メインスペースとは異なるサイクルで展示を更新する。

「新しいシーズンが始まるタイミングでスタートしたかった。新年度を前に渋谷の人の流れも変わる。この街にこういう場所があると知ってもらえたらうれしい」。新しい季節に渋谷の中心で、新たなカルチャーの交差点となることを目指す。

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