
今シーズン、最も熱い視線を浴びた若手といえば、スペイン出身のダニエル・デル・ヴァレ・フェルナンデス(Daniel del Valle Fernandez)だろう。自身のブランド「ザ ヴァレイ(THE VXLLEY)」で、「LVMHプライズ2026」のセミファイナリストにも名を連ねる新星だ。彼の記憶に刻まれた風景を、圧倒的なクラフツマンシップによって表現。他にも素材への飽くなき探究を通じ、ファッションの表現領域を拡張しようとする若手たちが際立った。(この記事は「WWDJAPAN」2026年3月9日号からの抜粋です)
「ザ ヴァレイ(THE VXLLEY)」
ウエアラブルアートの新境地
3年の歳月を費やし制作したコレクションのタイトルは、「ザ・ナルシシスト」。自己と向き合い、花、陶磁器、ガラスといった彼の半生を象徴するモチーフを服に埋め込んだ。厚手のウールやフェルトの生地にセラミックパーツを直接縫い付けたり、体の曲線に沿わせて作った木材のフレームに小さな模型を装飾したりしながら、美しい一着に濃厚なドラマを凝縮させた。それらを静止したオブジェではなく、あえてモデルにまとわせたのは、そこに「動き」という命を宿したかったからだという。
「ペトラ・ファーゲルストロム(PETRA FAGERSTROM)」
プリーツが生み出す残像
同じく「LVMHプライズ2026」のセミファイナリストに選出されたペトラ・ファーゲルストロム(Petra Fagerstrom)は、デジタルプリントを施したプリーツで生み出すトロンプルイユのような視覚効果が持ち味だ。元フィギュアスケーターという経歴を持つ彼女の、氷上をハイスピードで滑り抜けるときに生じる視覚的なブレや残像が着想源になっている。コレクションでは「コーチとスケーター」「母と娘」といった自身が経験してきた人間関係をベースに、複雑なパワーバランスを前後の境目が曖昧なアウターなどでも表現した。
COMMENT
私がファッションデザインの道を歩み始めたきっかけは、自分自身のフィギュアスケートの衣装を作り始めたこと。その原点に立ち返る今シーズンの制作は、私にとって一つの円が閉じるような「原点回帰」になった。プリーツは、まとった瞬間に動きが生まれ衣服に第二の命を吹き込む仕掛けだ。将来的には、ただ服を売るだけでなく、インスタレーションやコラボレーションといった多角的な表現を通じて、ブランドの世界を広げていきたい。
デザイナー:ペトラ・ファーゲルストロム
「エー レター(A LETTER)」
紙で作る服
セントラル・セント・マーチンズ卒業生で、共にジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)の元で経験を積んだ2人が2024年に設立。前身の「アレッタ(ALETTA)」として始動し、今季「エー レター」へと改称した。実験的な素材へのアプローチを特徴とし、造花用の繊細な紙や極厚の紙を用いて、英国の日常着に根ざした伝統を独自に再解釈。初期のコレクションは美術館にも収蔵されており、ドーバー ストリート マーケットをはじめ注目を集めている。
COMMENT
「英国の日常に潜む伝統的な服飾文化に引かれている。異素材を用いながら、遊び心を持って新しいものを生み出したい」(フレディ)、「素材と向き合いながら形を探るプロセスを大切にしている。偶然生まれる表情や“手の跡”が、着る人の個性と重なると考えている。紙で表現する繊細な儚さも強みになっていると思う」(マット)
デザイナー:フレディ・クームズ(Freddy Coomes)&マット・エンプリンガム(Matt Empringham)
「ポーリーヌ・デュジャンクール(PAULINE DUJANCOURT)」
若手支援プログラム「ニュージェン(NEW GEN)」枠で発表した。魔女狩りという歴史の闇に光を当て、消し去られた女性たちの物語を、得意のニットで繊細かつポエティックな世界観で表現した。80本以上のチュールの帯を巻きつけたマクラメや小さなクロシェの花々を全身にちりばめたドレスなど、ニットの表現をクチュールに昇華した。
「オスカー オウヤン(OSCAR OUYANG)」
同じく、「ニュージェン」枠で発表。「最後のパーティー」と題し、古びた貴族の邸宅を再現した空間で、退廃的なムードと若者のエネルギーを融合させた。フェアアイル柄のセーターやビンテージ調のチノパン、そこに加える、パーティーの余韻を思わせるラメやスパンコールのアクセント。気だるい雰囲気のプレッピースタイルが癖になる。