ファッション

リシュモンが時計ブランド「ボーム&メルシエ」売却、ダミアーニ傘下に

スイスのラグジュアリーコングロマリット、コンパニー フィナンシエール リシュモン(COMPAGNIE FINANCIERE RICHEMONT以下、リシュモン)は、傘下の時計ブランド「ボーム&メルシエ(BAUME & MERCIER)」を、イタリア発ジュエリーブランド「ダミアーニ(DAMIANI)」を傘下に持つダミアーニ・グループ(Damiani Group)に非公開取引で売却した。取引条件は明らかにされていない。

リシュモンは声明の中で「ブランドのイタリアにおける強固な存在感、主にマルチブランドの卸売りで販売する流通モデル、そしてラグジュアリーウオッチ市場においては手の届きやすい価格帯の時計を揃える点を踏まえると、『ボーム&メルシエ』の長期的なポテンシャルはダミアーニ・グループの一員になることで最も発揮される」と述べた。移行を円滑に進めるため、夏に予定している取引完了後、少なくとも12カ月間は「ボーム&メルシエ」に対して業務支援を提供するという。

一方のダミアーニは、自社のマルチブランド流通ネットワークを活用し、戦略的な立地において段階的にモノブランド店舗を開設することで「ボーム&メルシエ」の認知度とリーチを高めていく計画だとしている。

ダミアーニ・グループのラグジュアリー・ポートフォリオには「ダミアーニ(DAMIANI)」や「サルヴィーニ(SALVINI)」「ブリス(BLISS)」といったジュエリーブランドのほか、イタリア・ムラーノ島を拠点とするガラスメーカーの「ヴェニーニ(VENINI)」が含まれる。さらに同グループは、マルチブランド型の時計・ジュエリーディストリビューターである「ロッカ(ROCCA)」も運営する。

売却が取り沙汰されていた「ボーム&メルシエ」

1830年創業の「ボーム&メルシエ」は、リシュモンが数十年にわたり保有してきたブランドだが、売却については以前から取り沙汰されていた。同ブランドはリシュモンの時計部門の中でも比較的商業的な位置付けにあり、直販よりも卸売への依存度が高いブランドとされてきた。本社はジュネーブで、直営店は8店舗。時計の製造は、スイス・ジュラ地方にある自社工場で行っている。

ヨーロッパを拠点とする独立系金融サービス会社、ケプラー・シュブロー(Kepler Cheuvreux)は、同社が発表しているリサーチノートで、今回の売却を歓迎するとコメント。「ボーム&メルシエ」が「長年にわたり苦戦してきた」ブランドであり、今回の売却はリシュモンの新CEO、ニコラ・ボス体制の下で「問題を抱える事業に対するより踏み込んだ対応」を示すものだと指摘した。同社はまた、リシュモンが同ブランドの再ポジショニングに苦戦してきたことに触れ、かつてはMBO(経営陣が参加する買収)も検討していたとした。ケプラーの試算によれば、同事業の売上高は約1億ユーロ(約184億円)で、赤字が続いているという。

さらにケプラーは、高級時計が今後もリシュモンにとって「重要な柱」であり続けるとの見方を示し、今回の撤退を大きな戦略転換の兆しとは捉えていないとした。リシュモンは歴史的に、赤字事業に対して「過度に寛容な姿勢を取っている」と批判されてきたとも付け加えている。実際、リシュモンは長期保有を前提とする気質で、ブランドを手放すことに消極的なことで知られる。だが、金融アナリストからの長年の圧力を受け、赤字が続いていたラグジュアリーECのユークス ネッタポルテ グループ(YOOX NET-A-PORTER GROUP)を、マイテレサ(My Teresa)の親会社であるラックスエクスペリエンス(LuxExperience)に売却した経緯がある。

リシュモンの時計部門が回復の兆しを見せ始める中での売却

コンサルティング会社リュクスコンサルト(LuxeConsult)の創業者であり、時計アドバイザー兼アナリストのオリヴァー・R・ミュラー(Oliver R. Müller)は、「『ボーム&メルシエ』のDNAや価格帯を考えると、ラグジュアリーに明確に軸足を置くリシュモンには適合しなかった」と指摘。「同ブランドは10年以上前に成功期を迎えたが、その後は売上の低迷に加え、CEOや戦略の度重なる変更によってブランドが不安定化した」と続けた。

ミュラーはさらに「ダミアーニがどのような戦略を取るかは未知数だが、同社は非常に強力な小売ネットワークを持っており、かつて成功を収めたこのブランドを再ポジショニングする余地はある」と述べた。

今回の売却は、リシュモンの時計部門が、ラグジュアリー需要低迷の長期化を経て回復の兆しを見せ始める中で行われた。報道によれば、会計年度第3四半期において、同部門の売上高は7%増の8億7200万ユーロ(約1617億円)。時計部門としては2四半期連続のプラス成長で、南北アメリカ大陸および中東・アフリカ地域における2桁成長に牽引され、全地域で増収を記録した。

リシュモン全体としても、ホリデーシーズンに好調な業績を記録し、売上高は11%増の64億ユーロ(約1兆1874億円)に達した。一定為替レート(恒常為替)ベースの第3四半期売上高はアナリスト予想を上回り、ラグジュアリー業界にとって一筋の希望をもたらす結果となった。

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