桑田悟史デザイナーが手掛けるミラノ拠点のブランド「セッチュウ(SETCHU)」は1月17日、ミラノ・メンズ・ファッション・ウイークで2026-27年秋冬コレクションを披露した。1年前のピッティ・イマージネ・ウオモ(PITTI IMMAGINE UOMO)、そして半年前のミラノ・メンズに続く3回目のショーは、桑田自身がコレクションの背景を説明したり、ランウエイに登場したモデルにアイテムを加えてスタイルを仕上げたりという時折ユーモアを交えたプレゼンテーションからスタート。昨年に移転・拡大した新オフィスを会場に、普通の“ファッションショー“ではなく「ハウスウォーミング・パーティーのようなものにしたかった」と語る親密なショーは、「セッチュウ」の服作りの核となるユニークな構造と、モデルがまとい歩くことで生まれる服の躍動感を同時に伝える新感覚のものだった。
今季の出発点となったのは、釣りを愛する桑田が長年夢見ていたという世界有数の釣りの名所に行くため、昨年8月に訪れたグリーンランド。そこで体験した木も育たない岩だらけの荒涼とした大地や吹き荒れる風、そして最大の都市ヌークにある国立博物館で見た衣服文化からイメージをふくらませた。
例えば、先住民族のイヌイットが生活のために狩るアザラシの毛皮を精巧なジャカード織の生地で再現し、トップスやラップスカートを仕立てた。一方、今季のシルエットを特徴付ける前身頃に食い込んだアームホールと袖は、毛皮で作られる彼らの防寒着が着想源。動物の身体構造に沿い、素材を無駄なく最大限に生かすための合理的な設計でデザインしたものだという。それだけでなく、日本でも北国を訪れた桑田は、伝統的な藁の靴や雨をしのぐ蓑からもヒントを得た。そんな厳しい環境を生き抜く暮らしの中で必然的に生まれたフォルムやクラフトが、素材や仕立てにこだわるラグジュアリーファッションと交差する。
また、「セッチュウ」のシグネチャーになっているさまざまな着方で楽しめたり、シルエットが変化したりする構造へのアプローチにも、新たな提案が見られた。今回登場したのは、序盤に実演で見せたバッグへと変形するコートやMA-1、パファージャケット。表地と裏地の間の層に大きなファスナーポケットを作ることでひっくり返して全てを収められるようになっていたり、曲線を描くファスナーを全て閉じると袋状にできたりといった構造で、「プレイフルな機能性」を表現する。さらに設立初期から大切にする「折り紙」の発想は、山折りと谷折りで作った形状を落とし込んだ四角いスタッズやトラックスーツのサイドラインにあしらったモチーフからも見て取れる。
ショー後、桑田は「みんなに新しい何かを見つけてもらえれば良いなと思ったし、自分にとってもこの形式は新しい試みだった」と振り返った。ショーとプレゼンテーション、グリーンランドと日本、生活に根差した実用品としての衣服と新たな美を創造する洗練されたファッション。さまざまな要素を折衷しながら、「セッチュウ」は着実に進化し続けている。