
LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパンは11月21日、渋谷区が推進する「シブヤ未来科」の一環として、日本初の教育プログラム「Excellent!(エクセレント)」を実施した。同プログラムは、LVMHグループのさまざまなメゾンが誇る卓越したサヴォアフェール(匠の技)を次世代へと継承することを目的とし、13〜15才の学生を対象に職人技や顧客体験に根ざしたクリエイティブな職業を紹介する。今回、フランスやイタリアに続く形で、日本での初開催に至った。
参加したのは、渋谷区広尾中学校と松濤中学校の2年生132人。「ベルルッティ(BERLUTI)」、「ディオール(DIOR)」、「ゲラン(GUERLAIN)」、「ロエベ(LOEWE)」、「ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)」、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」、パルファン・クリスチャン・ディオール(PERFUMS CHRISTIAN DIOR)、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」の8つのメゾンが体験型ワークショップを通じ、クラフツマンシップを伝える。
「ベルルッティ」
パティーヌで表現する“自分らしさ”
「ベルルッティ」では、レザーに色付けを行う職人のことを“カラリスト“と呼ぶ。レザーの状態で発色も大きく変わり、オーダーもさまざま。コミュニケーションの中から“顧客が本当に求める色“を導き出し、実際に色付けしていく匠の技だ。
今回“カラリスト“として参加した学生たちも、用意された7色の染料から好きな色を選び、色を重ねてみたり、ワックスで磨いたり、ブラシで色をなじませたりして、実際に「ベルルッティ」で使用されているベネチアレザーを自分だけの色で染め上げた。
「ディオール」
“プリッセ”と“ボウ”から学ぶ“ギフトの芸術”
ここで学ぶのは、「ディオール」ならではの“ギフトの芸術“。そのギフト作りからは、創設者クリスチャン・ディオール(Christian Dior)の思いを感じさせる。「ディオール」のファーストコレクションからインスピレーションを受けたプリッセを作り、大切な人へのメッセージをつづった。仕上げにはボウをボックスにまとわせ、ギフトボックスが完成する体験だ。
ギフトボックスの中に入る“プリッセ”作りは、実際に「ディオール」の新入社員が研修で学ぶ“職人技“。「箱を開けた瞬間から夢を与えたい」という想いを込めた“プリッセ“が、人々にとっての「ディオール」のクラフツマンシップの入り口となる。
「ゲラン」
“ビーボトル“の歴史と自己探求
かつてナポレオン3世とユージェニー皇后の婚礼祝いとして献上された「ゲラン」の“オーデコロン イムペリアル(現在の“オーインペリアル“)”。ナポレオン3世のシンボルであるミツバチが69匹あしらわれたこの“ビーボトル“は、「ゲラン」の歴史とクラフツマンシップを語るに欠かせない。
このワークショップでは、「ミツバチと共に世界を知ろう」をテーマに、「ゲラン」が約200年大切にしてきた伝統と革新のサヴォアフェールを通じ、フレグランス創作の過程を学んだ。ミツバチに関するクイズのほか、香りの体験、“ビーボトル“の塗り絵を通じた自己探求を行った。
「ロエベ」
ロエベ リクラフトの職人に学ぶレザークラフト
カサロエベ表参道と阪急うめだ本店8階で展開する、「ロエベ」の革製品の修理・補修を専門としたロエベ リクラフト(LOEWE ReCraft)。そのサービスを提供するのは、1846年にマドリードの革工房から始まった、「ロエベ」の卓越した職人技を身につけた革職人たちだ。
生徒たちは革職人たちからレザーの特性を学び、実際に「ロエベ」のバッグに使用されているレザーを使用したクラフトを体験。ハンドステッチやハトメ打ち、バニッシュなどを行い、自分だけのネームタグを作り上げた。この体験は、もともと「ロエベ」の新入社員研修の一環として行われていた内容をこのプログラムのためにぎゅっと凝縮したものである。
「ロロ・ピアーナ」
“繊維の達人“のカシミヤ糸で生地作り
卓越した技術とノウハウ、そして機能性とエレガントさを兼ね備えることから、“繊維の達人“と称される「ロロ・ピアーナ」。使用するのは、世界の限られた産地から調達した最高品質の繊維だ。
生徒たちは、このこだわりのカシミア糸を使用した生地作りを体験。それぞれが好きな色の糸を選び、織機の使い方を学び、実際に生地を織ることで、カシミアの豊かさと繊細さ、職人技の奥深さを体感する。ワークショップの終盤にはカシミア糸を使用したタッセルチャームを制作。この日の思い出として持ち帰った。
「ルイ・ヴィトン」
「長く愛用できる」ケアサービスの秘密
「製品を末長くご愛用してもらうために」という思いから展開する、「ルイ・ヴィトン」のケアサービス。創業当初より長きに渡り行うサービスは、ブランドのクラフツマンシップの真髄とも言える。
ワークショップでは、実際にアトリエで働く職人がパーソナライゼーションやリペアをレクチャー。「ルイ・ヴィトン」のレザーを使用したミシンでの縫製、ブランドを象徴する“モノグラム・キャンバス“素材へのペインティングを通じて、時代を超えて愛され続けるブランドに秘められた職人技を学んだ。
パルファン・クリスチャン・ディオール
人々を幸せにするスキンケア&メイクアップ
「魅惑的な残り香で女性を飾るため」のフレグランスとして生まれた“ミス ディオール“。クリスチャン・ディオール(Christian Dior)の「人々を美しくするだけでなく、より幸せにしたい」という思いから、エレガンスとエンパワーメントを形にしたスキンケア&メイクアップ製品を提供する。
参加した生徒たちは、ディオールが紡いだ歴史やスキンケア、メイクの基礎知識を習得。実際に「ディオール」の製品に触れながらプロの技術を学び、自分に似合うメイクアップを体験した。
「ティファニー」
熟練のレタリングとエングレービング技術
1837年の創業から、唯一無二のクラフツマンシップを探求し続けてきた「ティファニー」。その技術と伝統を体現するのは、熟練の職人たちが長きに渡り継承してきたエングレービング(手彫り)技術だ。
職人に教わりながら、生徒たちは芸術的に文字を描くレタリングに挑戦。それぞれ自分の名前やイニシャルなどを課題に、ていねいに仕上げていった。その後、実際に銅板にレタリングとエングレービングを施すまでの体験を通じ、歴史を超えて愛される卓越した技術を学ぶ。

各メゾンのワークショップは約80分間。終了後には、参加した生徒全員に修了証が授与された。ノルベール・ルレ(Norbert Leuret)LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン社長、そして渋谷区立広尾中学校の川上弘文校長、渋谷区立松濤中学校の中村哲也校長は、次のようにコメントしている。
ノルベール・ルレLVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン社長
「日本で初めて『Excellent!』プログラムを開催できることを大変うれしく思う。LVMHグループは、何世紀にもわたり受け継がれてきた職人技と革新を融合させながら、卓越性を追求してきた。今回のプログラムを通じて、若い世代の皆さんにものづくりの喜び、創造性の大切さ、そして人と人とのつながりの価値を感じてもらいたいと考えている。生徒の皆さんの好奇心と創造力が、さらに開花することを心から願っている」。
渋谷区立広尾中学校 川上弘文校長
「シブヤ未来科の理念である『自ら考え、仲間と協働し、未来を実現する力』を育むうえで、今回のプログラムは非常に貴重な機会だ。世界最高峰のメゾンが大切にしている職人技やホスピタリティーを直接体験できることは、本物に触れるという絶好の機会であり、教科書では学べない生きた学びとなる。生徒たちの将来の選択肢を広げるきっかけになれば幸いだ」。
渋谷区立松濤中学校 中村哲也校長
「松濤中学校は、『世界へ 松濤中生』というスローガンのもと、国際理解教育を進めている。グローバルに活躍する人材を育む上で、今回のプログラムは非常に貴重な機会をいただいた。伝統ある各ブランドが長年培われてきた専門技術を体験しながら、世界に影響を与える創造性の一端に触れる学びとなった。今日の学びが、生徒にとってこれからも世界的な視野で挑戦し続ける第一歩となることを願っている」。
渋谷区は2024年度から、「ちがいをちからに変える街。渋谷区」のビジョンのもと、すべての区立小中学校で探究学習「シブヤ未来科」をスタートした。「自ら考え判断して学び続ける自己調整力」「多様な仲間と協働して新たな価値を生み出す創造力」「自分が思い描く未来を実現する挑戦力」という3つの能力の育成を目標に、まち全体を探究の場として、地域や企業と協業しながら主体的に課題を解決する学びに取り組む。
PHOTOS:RYOHEI HASHIMOTO