「バルマン(BALMAIN)」は11月5日、オリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)=クリエイティブ・ディレクターの退任を発表した。後任は未定で、今後のクリエイティブ体制については追って発表される予定。大胆なクリエイションでブランドビジネスの発展に貢献してきた彼の14年間という任期は、交代の激しいファッション界において、かなり長い一章だった。
フランス・ボルドー生まれで、1歳の時に養子となり育ったオリヴィエは09年、「ロベルト カヴァリ(ROBERTO CAVALLI)」から「バルマン」に移り、当時クリエイションを率いていたクリストフ・デカルナン(Christophe Decarnin)の下でスタジオの責任者(ヘッド)を務めた。そしてデカルナンが退任した11年、若干25歳でクリエイティブ・ディレクターに就任。その若さでの抜てきというだけでなく、フランスのファッションメゾンを率いる初の黒人ウィメンズウエア・デザイナーとなった彼は、文化的な影響力や熱狂を生み出すことで「バルマン」に大きな変革をもたらしてきた。
自身も「インスタグラム(Instagram)」で970万人のフォロワーを抱え、SNS活用の先駆者でもあったオリヴィエは在任中、音楽フェスティバルのようなイベントを通じたショーの一般公開や、NFTなどテクノロジーの活用、1945年創業の伝統的なブランドとポップカルチャーのつながりの強化を図るとともに、多様性と包摂性を最優先してきた。また、“バルマンアーミー(#BALMAINARMY)”と名付けた自身のオンラインコミュニティー、そしてビヨンセ(Beyonce)やリアーナ(Rihanna)、キム・カーダシアン(Kim Kardashian)といったセレブリティーとの親交を生かして記憶に残るキャンペーンやコレクションを制作。バービー(Barbie)やディズニー(Disney)からネットフリックス(Netflix)まで多彩な協業にも取り組み、特に15年に発売した「H&M」とのコラボコレクションはほぼ完売を記録した。さらに24年には、エスティ ローダー カンパニーズ(ESTEE LAUDER COMPANIES)のライセンスの元、彼が監修したプレミアムフレグランスも発売した。
オリヴィエは、声明の中で「この14年間を過ごした我が家とも言える場所で、『バルマン』の素晴らしいチーム、そして私の家族のような存在と共に成し遂げた全てに深い誇りと感謝の念を抱いている」とコメント。メイフーラ・グループ(MAYHOOLA GROUP)の最高経営責任者(CEO)でもあるラシッド・モハメド・ラシッド(Rachid Mohamed Rachid)=バルマン会長とマテオ・スガルボッサ(Matteo Sgarbossa)=バルマンCEOに対して「私への揺るぎない信頼とまたとない機会を託してくれたこと」に感謝の意を示し、「未来と私自身のクリエイティブな旅の新たな章を見据えつつも、このかけがえのない時間をいつまでも胸に刻み続ける」と述べた。