ケリング(KERING)の次なるCEOに選ばれたのは、なんとルノーの“改革者”。「ラグジュアリーと自動車って、そもそも交わるの?」そんな疑問が浮かんだ方も多いかもしれません。けれど彼の歩んできた道を見ると、意外なほどこの転身が“あり得る話”に思えてきます。特に注目したいのが、ケリングが先進的に取り組んできたサステナビリティ戦略との親和性です。
ケリングとデ・メオ氏の親和性
イタリア出身のルカ・デ・メオ(Luca de Meo)氏は、ルノー(RENAULT)、トヨタ・ヨーロッパ、フィアット(FIAT)、フォルクスワーゲン(VOLKSWAGEN)、そしてCEOとして再びルノーに戻るなど、自動車業界を横断してきた人物です。その手腕は「変革者」と評され、今回のルノー退任は業界に大きな余波を与えました。
注目すべきは、彼が主導し2021年に発表したルノーの中期経営戦略「ルノリューション(Renaulution)」。これは単なる電動化戦略ではありません。小型EVの都市実装、ブランドの再定義、戦略の一環で2022年に設立された循環型経済を推進する子会社「ザ・フューチャー・イズ・ニュートラル(The Future is NEUTRAL)」では、新車のリサイクル材含有率を大幅に高め、部品の価値をできるだけ長く維持する構造を構築しています。戦略の成果は、「理念」や「いいこと」にとどまりません。2020年に約81億ユーロ(約1兆3672億円)の最終損失を計上し、売上高も約434億ユーロ(約7兆3259億円)にとどまっていたルノーは、そこから構造改革を進め、2023年にはグループ売上高を約524億ユーロ(約8兆8420億円)、純利益を約23億ユーロ(約3867億円)と黒字転換しています。すなわち、循環型経営が“理想”だけでなく“利益”にもつながり得ることを証明した、象徴的な事例と言えるでしょう。
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