1. “無印食品”は大化けするか 良品計画、「食」への野望

“無印食品”は大化けするか 良品計画、「食」への野望

コラム 商業施設

2019/4/17 (WED) 13:00
銀座旗艦店1階の青果売り場には近郊で収穫された野菜や果物が並ぶ

 「無印良品(MUJI)」が食に本腰を入れる。運営する良品計画の売上高に占める食品の割合は7.8%(2019年2月期の国内実績)だが、これを長期計画として30年に30%に高める。食品は潜在需要が見込めるだけでなく、客の来店頻度を高めて、服や雑貨の“ついで買い”を促すことが期待できる。食品の拡充によって「無印良品」はどう変わるのか。

「無印良品」で朝食を

 朝7時半。4月4日にオープンした「無印良品」の銀座旗艦店の入り口に、もくもくと湯気が出る看板が置かれた。朝食の営業を知らせるサインだ。

 地下1階のレストラン「MUJIダイナー」では、味噌汁付きのおにぎりセット(税込500円)やトーストセット(同500円)、店内の工房で作られる豆乳粥(同500円)や湯豆腐セット(同850円)などを食べることができる。1階のベーカリーでは店内で焼いたパンを販売。同社のアプリ「MUJIパスポート」を通じてパンやコーヒーの予約も行える。

 日本初の「MUJIホテル」の併設で話題の銀座旗艦店は、食を前面に打ち出した店舗でもある。通常「無印良品」は店の顔となる入り口付近、あるいは多層階なら1階に衣料品の売り場を作るのが常だった。しかし1〜5階(売り場面積3980平方メートル)の銀座旗艦店は、並木通りに面した1階に食品売り場を配置した。ベーカリーのほか、野菜、果物、菓子、加工食品、冷凍食品、調味料、弁当、ジューススタンド、ブレンドティー工房などがマルシェのように並ぶ。昨年12月まで営業していた有楽町旗艦店に比べて食品売り場は34%も広くなった。

 良品計画の松﨑暁社長は、食品は長年の課題だったと話す。「『無印良品』は生活の基本となるものを扱うことを謳っているのに、食の領域が欠落していた。今後は世界で拡大していきたい」。

 7000品目以上の商品を取り扱う「無印良品」の商品は3分野に大別できる。19年2月期の売り上げ構成でいえば、服、バッグ、シューズなどの「衣服・雑貨」が37.2%、家具・インテリア、リネン類、収納具、文具、化粧品、食器などの「生活雑貨」が53.1%、そして「食品」が7.8%。既存店売上高の食品の伸び率は3分野の中でも最も高い13.2%増だが、松﨑社長が言う通り、食品の取り扱いは加工食品、菓子、調味料に集約されている。売り上げ規模も売り場面積もまだ限られているのが現状だ。

客数増の立役者は
“バターチキンカレー”

 とはいえ、存在感は決して小さくない。代表例がレトルトカレーである。エースと呼ばれる“バターチキンカレー”は数年前に人気に火が付き、今や年間250万個以上を売る稼ぎ頭になった。開発担当チームはインド各地に赴き、その土地の伝統的なカレーを研究し、膨大な数の種類のスパイスを吟味して作り上げる。レトルトカレーは今や30種類以上と食品メーカー顔負けのバリエーションが並び、そのマニアックな品ぞろえが人気を呼ぶ。

 レトルトカレーは1個350円ほどだが、客数の増加に大きく貢献してきた。重要なのはカレー目的で来店した客は、ついでに他の商品を購入するケースが非常に多いという事実だ。一般的に服しか置いていない店舗なら顧客の来店頻度は月1〜2回、家具・インテリアならさらに少ない。だが、食品なら週に複数回訪れる。来店すれば、夏物の麻シャツが欲しいな、整理整頓する収納ボックスを買おうかな、そろそろ使っている化粧水がなくなりそうだなと、目的以外の購買意欲を喚起させる。それが「無印良品」の生活全方位型MDの強みである。

 昨年からは新たに冷凍食品を始めた。おにぎり、韓国風海苔巻き、肉じゃが、ぎょうざ、おはぎ、小松菜の白和え、ビーフストロガノフなど50アイテム。ただ、これらを19年2月時点で取り扱っている店舗は国内13店舗とネット通販に限られる。販売するには店舗に大型の冷凍什器を置く必要があり、スペースの問題もあって設備に時間がかかるからだ。

スーパーマーケット業態で
生活に密着

 食品の拡充を突き詰めれば、究極はスーパーマーケット業態になるだろう。すでに良品計画は実験を始めている。

 18年3月にオープンした「無印良品」のイオンモール堺北花田店(大阪府堺市)は、売り場面積4300平方メートルの約半分を食関連が占める。生鮮3品でいえば、銀座旗艦店は青果(野菜と果物)しか扱っていないが、イオンモール堺北花田店では鮮魚と精肉も大きなスペースで販売している。エプロン姿のスタッフが声を出しながら、きびきびと働く活気ある店内は、大型スーパーと見紛うほどだ。

 野菜や魚介類は地産地消を掲げて、地元の新鮮な食材を仕入れている。地域密着やコミュニティ型店舗を志向する「無印良品」にとって、食には店舗と地元住民をつなぐ役割も期待される。同店では地元食材をおいしく食べる料理の試食コーナーやワークショップも定期的に開く。生鮮3品は仕入れや販売に独自のオペレーションが必要なため、同店のスーパーマーケット運営は外部企業との協業している。松﨑社長はここで仮説・検証を重ねたのち、国内および中国でのスーパーマーケット業態の新規出店を視野に入れるという。

 「無印良品」の標準店の売り場面積が825平方メートル程度なのに対し、良品計画は今後は1650平方メートル級の大型店を増やす方針を打ち出した。この面積であれば冷凍什器が置けるし、場合によっては生鮮品の販売も可能になる。食品によって来店頻度を増やし、利益率の高い衣服・雑貨や生活雑貨でしっかり稼ぐ。大型化しても売り場効率をアップさせるために、時間をかけてビジネスモデルを構築する考えだ。

 「無印良品」の国内の既存店売上高は、3月まで前年同月の実績を26カ月連続でクリアした。小売業の中で売り上げは極めて好調といえる。数シーズン続けた定番商品の値下げ策やMDの見直しが奏功した。ただ、家具・インテリアやリネン類など比較的高額な商品は伸び悩んでおり、19年2月期の通年で生活雑貨は0.3%の微増にとどまった。そのため、19年2月期連結業績は、人手不足解消のための積極的な採用活動によって増加した販管費を思いのほか吸収できず、8期ぶりの営業減益だった。

 衣食住に幅広く対応する「無印良品」は、服であれば「ユニクロ(UNIQLO)」、家具・インテリアであれば「ニトリ(NITORI)」「イケア(IKEA)」など、強力な専門店との戦いを余儀なくされる。「生活の基本となる商品」をワンストップで扱う業態の強みを最大化するためにも、食品の重要性は増していくことになる。

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