ビューティ

ポーラ・オルビスHDが美容以外にも投資をする理由は? 28歳の新たな挑戦に迫る

 ポーラ・オルビスホールディングス(以下、ポーラ・オルビスHD)がコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)事業をスタートさせたのが2018年2月。現在までに10社に出資をしているが、その出資先はビューティ企業だけではなく、アパレルやフィットネス、スクールなど多岐にわたっている。そもそもなぜポーラ・オルビスHDがCVCを始めたのか。またなぜ美容系以外にも投資するのか。現在、同社のCVC事業を担当する岸裕一郎氏に話を聞いた。

WWD:ポーラ・オルビスがCVCを始めたきっかけは?

岸裕一郎(以下、岸):弊社には社内ベンチャー制度があって、個人的にやってみたかったCVC事業も含めて4案を提案しました。その中で、このCVC事業の案が選ばれて、実際にやることになりました。正直、個人的には一番採用されないだろうなと思っていた案だったのでびっくりしました。今入社6年目なのですが、3年目の終わりからCVC事業に関わるようになりました。それで18年2月から本格的にスタートし、今年10月にポーラ・オルビス キャピタルという名称を掲げるようになりました。今は2人体制で僕はD2Cをメインに、もう1人はリテールや海外ブランドを中心にみています。

WWD:岸さんはもともと投資の経験はあった?

岸:全くなかったので、先輩の投資家に話を聞いたり、自分で調べたりしています。それこそ、最初はどうやって投資先を見つければいいのかも分からなかったので、先輩投資家やベンチャーキャピタル(VC)から投資先を紹介してもらうことも多いです。

WWD:ポーラ・オルビスHDのCVCとして美容系の企業に出資するのは分かるが、アパレルやスクール事業に投資する理由は?

岸:最初は“女性起業家の支援”ということを掲げてスタートしました。それで投資1社目はミレニアル世代の女性に向けたキャリアスクール事業「シーライクス(SHElikes)」を運営するシー(SHE)でした。ちょうどシーも立ち上がったばかりのころで、私たちの考えとも一致したんです。今「シーライクス」には多くの人が参加していて、その熱狂度も高いコミュニティーができていて、ここから新たなブランドが出てくる可能性もあります。その後、女性起業家ではなく、カテゴリーでくくった方が投資先を選定しやすいということで、今は“D2C”“ビューティテック”“リテールテック”に絞っています。弊社はもともと“美を中心に世界中の人々のライフスタイルを彩る”ということを目指していて、美容をメインにしつつ、それだけではなく、ライフスタイルに関わる企業には投資を検討しています。基本は1億円以下で“シード”から“アーリー”が中心で、今は“D2C”がメインで5割、それ以外で5割といった感じです。なるべくスピーディーにやっていきたいと思っていて、年間10社前後への投資を考えています。

WWD:具体的にはどういった企業に出資している?

岸:今は10社に出資しています。先ほどのシー以外には、スマートミラーや肌診断アプリ「ビューティ(Viewty)」を開発しているノベラ(NOVERA)、子どものためのオンラインスクールを運営するハグカム(HUGCOME)、D2Cアパレルブランド「ソージュ(SOEJU)」を運営するモデラート、インバウンドプラットフォーム事業を運営するワメイジング(WAMAZING)、オンラインフィットネス事業を運営するソエル(SOELU)、デリケートゾーンケアブランド「アイムラフロリア(I‘M LA FLORIA)」を運営するメリア(MELLIA)、メディアやD2Cコスメブランド「フィービービューティーアップ(PHOEBE BEAUTY UP)」を運営するディネット(DINETTE)、インフルエンサーブランドの企画・販売などを行うパトラ(PATRA)、D2Cカスタマイズサプリ「フジミ(FUJIMI)」を運営するトリコ(TRICOT)です。

WWD:起業家は男性が多い?

岸:スタートアップ全体だとやはり男性が多いです。ただD2Cだと女性も多く、特に化粧品は自身の悩みや要望からブランドをつくる女性が増えています。

WWD:投資先はどう選んでいる?

岸:基本的には僕が選んだものを、上司と相談して実際に投資するかどうかを決めます。最近は「出資してほしい」という相談もよく受けるようになりました。投資先のコンセプトがかぶらないようには気をつけていますが、コンセプトが違っていれば美容系でも数社に出資しています。10年ほどの長期視点で、弊社グループにインパクトを与えられるような企業を考えています。

WWD:出資先のサポートなども行うのか?

岸:弊社が持っている技術や知見といったリソースを活用してもらえればとは考えていて、サポートは少しずつ始めています。あと僕個人としては、一緒にブランドを育てていく気持ちを持っていて、必要な場合はメディアPRなど全力でサポートするようにしています。

WWD:今後はどういった企業に出資を考えている?

岸:直近ではD2Cのコスメやアパレルに投資してきたので、今後は“ビューティテック”の領域にも期待しています。IoTで行動データなどが取れるようになると、チャレンジできることがかなり増えると思うので。あと、食やヘルスケア、エステの領域、海外だと韓国や東南アジア、ヨーロッパの企業にも興味があります。

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