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作品のルーツから仕事術まで 個展開催中の吉田ユニに15の質問

PHOTOS:SHUHEI SHINE

 ラフォーレミュージアム原宿は12月1日まで、アートディレクター吉田ユニの個展を開催中している。5年ぶりとなる今回の個展では、このために制作したキービジュアルをはじめ、ミュージシャンのチャラ(Chara)や星野源のCDジャケット、「装苑」(文化出版局)での連載といった作品に加えて、メーキング映像や実際に使用した小道具も展示。制作の裏側にも触れることができるまたとない機会だ。

 個展の開催に合わせて、展示に込めた思いやイマジネーションの源泉、日々の息抜きまで、15の質問を吉田ユニにぶつけた。

WWD:個展のタイトル「ダイナログ(DINALOG)」の意味は?

吉田ユニ(以下、吉田):“対話”を意味する“ダイアログ”と、手仕事の“アナログ”をかけ合わせた造語です。わたしの作品は実際に手を動かしてアナログに作っていく部分が多いのですが、その中での対話やコミュニケーションから着想しました。

WWD:展示の見どころは?

吉田:ウェブでも見ることができる作品も大きなサイズで展示することで、普段気付けない細かい部分が見える楽しさがあると思います。また、作品の“断面”を見てもらえたらと思い、前回の個展でも好評だったメーキング部分を増やしました。見せる前提で作っていないものもあってちょっと恥ずかしかったのですが、前回すごく喜んでもらえたので。

WWD:今回展示されている作品の中で、記憶に残るエピソードは?

吉田:どの作品も手の込んだものばかりで思い入れがあるのですが、実は生のフルーツを使う作品がなかなか難しいんです。ワコールの「アンフィ フルフル(AMPHI FUL FRU)」のビジュアルではさまざまなフルーツをカットしてランジェリーに見立てたのですが、すぐに切り口が変色してしまうのでスピードが大切。一発勝負の中、美しいバランスを実現するために急いで作業しました。

WWD:多忙な毎日に、ユニークな発想はどこから生まれている?

吉田:実は自分でもわからないところがあって……。意識的にインプットしているというよりは、日々の生活から吸収したものを絞り出しているような感じかもしれません。

WWD:“チャーミングな中に違和感がある”作品のルーツは?

吉田:子どものころに大好きで買ってもらった図鑑や、顕微鏡で見たものの記憶が大きいと思います。図鑑の中の虫や動物、菌類が整然と並ぶ姿や、細密画が美しくて。リアルなものが好きで、歴史や伝記もよく読んでいました。

WWD:仕事中のBGMは?

吉田:AMラジオです。「オードリーのオールナイトニッポン」(ニッポン放送)、「バナナマンのバナナムーンゴールド」(TBSラジオ)、「ハライチのターン!」(同)などが好き。「爆笑問題カーボーイ」(同)は20年以上聞いていて、歴代のハガキ職人が集まる企画がすごくうれしかったです(笑)。

WWD:仕事の依頼が絶えない吉田さんのリフレッシュ方法は?

吉田:トランプとゲーム。手を動かしていないときでも常に企画について考えているので、没頭できるものがあるとリフレッシュになりますね。好きなトランプゲームは神経衰弱。結局考えるのが好きみたいです……。

WWD:身の回りのものを選ぶとき、大切にしているポイントは?

吉田:直感です。ピンとくるものってなかなかないので、かわいい!と思ったらすぐ決めます。最近はクリスマスツリーに飾る動物モチーフのオーナメントをたくさん買いました。

WWD:自身の作品とクラアントワークに違いはある?

吉田:違いはそれほどないです。もともとお題に向かって作るのが好きなので、自分の作品でもお題をつくっています。「何でも自由に」というよりは、制約の中で精一杯伝えるのが好きで、謎解きやクイズの答えを考える感じですね。

WWD:お題に対する答えを出すプロセスは?

吉田:お題について考えているときに、キーワードが点で頭の中に浮かんできます。そのいくつかがピシッと線になるときが“思いついたとき”。例えば星野源さんの「ポップ・ウィルス(POP VIRUS)」のCDジャケットでは、「美しいけれどグロテスクなもの」というお題をいただき、ウイルスが感染していく様子を「種から芽が出て、花になって、広がっていく」というストーリーで表現しました。一見植物のかたまりに見えるモチーフは、実は心臓もイメージしていて、入り交じる茎や赤と青の色で動脈と静脈を表しているんです。

WWD:制作中、ボルテージの上がる瞬間は?

吉田:2回あります。1回目は、アイデアを思いついた瞬間。2回目は、撮影のときにイメージが形になった瞬間。

WWD:吉田さんの作品に生き物や果物、花が繰り返し登場する理由は?

吉田:人間もそうですが、生き物にすごく魅力を感じるんです。果物や花が作品に入ることで、命の温度感を表現できるところが好き。ちなみに、最近実家で犬を飼い始めました。4歳のメスのトイプードルで、ファムといいます。わたし自身もすごく癒されて、ストレスが減ったかもと感じるほど。

WWD:アートディレクターとして大切にしていることは?

吉田:心掛けているのは、目的がブレないようにすること。アートディレクターがしっかりと芯を持っていないと、企画がどんどんブレてしまうので。たくさんの人が関わる仕事では特にそうですね。

WWD:たくさんの人と関わる仕事をうまくまとめる秘訣は?

吉田:コミュニケーションを大切にしています。それぞれの意見が集まってきたときに、「どうしてそうしたいのか」をきちんと聞いて、さらに良い提案をできるようにしています。アートディレクターは最初から最後まで企画に携わるので、関わる皆が良い結果だと感じられるよう、積極的に話をします。クライアント、私、完成したものを買ってくれる人の全員が喜べる仕上がりにならないと意味がないので、全員がうれしくなれる“小さな点”のようなポイントをずっと探しています。

WWD:最後に、今後やってみたいことは?

吉田:海外にも活動の幅を広げたいです。展示も海外に持って行きたいし、アジアはもちろんヨーロッパでも仕事をしたいですね。表現手法が多様化する中、動画を制作することもありますが、やはりグラフィックが好き。一枚の絵に込めたいという気持ちがありますね。