フォーカス

街の個人経営ブティックから愛される25歳のワールド営業マン 

 一着の服ができあがるまでには、デザイナー、パタンナー、素材を作る人、縫製する人など多くの人が関わり、でき上がった服は販売員が売る。その橋渡しとなる役目を担う営業マンは日が当たることは少ない。ファッション業界にいるたくさんの営業マンが日々、デザイナーをはじめとした多くの人が作った服を、一人でも多くの消費者の手に渡るよう奮闘する。実際、ファッション業界の営業マンのお仕事とはどういったものなのかーー。

 ワールドグループで専門店への卸事業を展開するワールドアンバー。中でも専門店東日本販売課は、いわゆる地元密着型の個人経営の専門店部署だ。営業マンは、街の商店街にある昔ながらの専門店に足しげく通い、まずはワールドのブランドを置いてもらい、ブランドの売り上げアップはもちろん、専門店自体の売り上げ拡大にいかに貢献できるかを考え奮闘する。郊外のショッピングモールの増加で商店街が衰退したり、後継者問題があったり、専門店自体の存在が危うい中、メーカー側のサポートは重要だ。阿部慎太郎さんは、約15年ぶりに同課の営業に新入社員が配属され、自身の両親世代の先輩に“愛され”ながら仕事を楽しんでいる。取材当日(2月15日)が25歳の誕生日で、4月から営業4年目の阿部さんに営業の仕事について聞いた。

WWD:大学卒業後、営業職を希望した理由は?また、なぜワールドだったのか?

阿部慎太郎(以下、阿部):もともとファッションは好きでしたが、絶対アパレルメーカーに入りたいというわけではなく、モノを作って販売までしている会社であれば、部署異動でモノがどうやって作られて販売されていくのかが、一気通貫して学べるのではないかと思っていました。就職活動を続ける中で、アパレル以外の異業種も受けたのですが、グループディスカッションで一緒になった“ライバル”や人事の方、社員の先輩方など、出会った人たちが自分に合っているなと感じました。ワールドに決めたのは、業界の1、2番手に入りたく、また当時、当社は希望退職者を募った後で人が少なくなった中で、なんとなくですが、いろいろなことに挑戦できる土壌があるのではないか、と思ったからです。

WWD:入社後、現在の専門店卸事業を担うワールドアンバーを希望したのか?

阿部:入社後、店舗での販売員の研修後に配属が決まるのですが、実は専門店卸事業のこと知らなかったんです。上山健二社長から内示を受けたとき、そんな部隊があるのかと驚きました。当時、東西で約80人いますが15年ぶりの新卒で、一番年齢が近い人で45、6歳の人でした。父よりも上の方も多くいます。

WWD:現在の仕事内容は?

阿部:現在は、神奈川、埼玉、一部西東京の街のブティックを中心に、個人経営の専門店(70店)を担当しています。担当する専門店さんは、当社ブランドのシェアがあまり高くないところが多く、どうやってシェアを拡大していくかが課題です。ほぼ毎月、弊社で展示会を開催しますが、専門店さんに足を運んでもらい発注していただきます。展示会では約30ブランドを取り扱うため、覚えるのも大変です。最初は消極的な態度だったからか、おすすめしても発注してもらえない……。発注してほしいときはその店に合う商品であると自信を持って強く押すことが大事です。最初は「1枚入れるよ」と発注してくれるのですが、それが売れて、他にもほしい人が現れたりすると、「もっと発注すればよかった」といってもらえたときは嬉しいですね。

WWD:先輩だけでなく、取引先である専門店の人たちもだいぶん年上の方が多いと思うが、苦労する点はあるか?

阿部:元々、話をするのは好きなんですが、専門店の方は祖父母と同じぐらいの年齢の方もいて、どうコミュニケーションを取っていこうかと考えました。最初は本当に緊張しました。周知のことですが、街の商店街は厳しいです。店主が歳を取るにつれ、顧客も歳を取りますから、新規の方や、若年層を獲得していかなければいけない……。新客を取るために、地元のネットに掲載をお願いするとか、SNSやブログをやってはどうかとアドバイスしますが、やってみようというオーナーさんは残念ながら少ないです。オーナーさんは今の顧客さんを大事にすること、その顧客の方にいかに購入してもらえるかを考えていて、これは深い信頼関係が必要です。毎日来店する顧客も多く、オーナーさんの仕事の8割はお客さんの話を聞くことです。また、専門店さんの多くは横のつながりが少なく、一人で切り盛りしている方が多いです。だから、オーナーさんの話を聞いてあげるのが、私の仕事の一つでもあります。オーナーさんの話を8割聞いて、2割自分の話をするという感じですね。

WWD:専門店の営業マンならではの仕事はある?

阿部:例えば、担当の専門店さんがお客さまを呼んでモデルのファッションショーを開催するときは司会をしたり、商品の説明をしたりします。これは直接、お客さまの顔が見えてとても刺激になります。昨日はマネキンの交換とディスプレーの変更に行ったのですが、お年を召された店主の方だったので、「電球を換えてほしい」とお願いされて換えました。そのほかにも、「ロールスクリーンがほしい」と言われたら、「ちょっと遠いけど、あっちのお店の方が安いので買ってきますよ」ということもあります。仕事以外の話しも大事な時間で、長居してしまうことも多いです。あと、仕事で必ず携帯しているのがメジャーで、売れ筋商品は写真撮ったり、採寸したりします。担当の専門店さんは婦人服、ミセスが中心でどういう着丈やサイズ感が売れるのかを常に意識していますね。当たり前ですが、自分自身着ないですし。

WWD:営業マンとしての強みは?

阿部:担当店舗は1年目は30店舗でしたが、2年目からは70店舗を任されています。担当する店舗が変わったりするので単純に前年と比較できませんが、私自身の売り上げは伸びています。20歳以上も歳上のオーナーさんらの話を聞き、そこから学ぶことも多いです。そういった方々とのお仕事から、私自身、気遣いでは負けないと思っています。自分でいうのもなんですが、年上の方から可愛がってもらえているなあと。でも、あくまで私自身は取引先の営業マンです。オーナーさんに肩入れしすぎず距離感のバランスは重要で、入り込みは禁物です。

WWD:今後の目標は?

阿部:やはり、専門店さんのショップ内でのワールドブランドのシェアを高めていくことが一つです。ゆくゆくはオーナーさんに働きかけて、新しい店舗を出店してもらい成功させることができたら。お店作りに、一から関われたら大変だろうけど喜びも大きいと思います。それ以外でも、ワールドが展開する直営店にも携わってみたい。直営の売り方を学びたいですし、ECとのオムニチャネルも勉強したい。それから、1枚の服がどうやってどれぐらいのコストで作られているのか、生産にも携わりたい。いろんなことに挑戦し、そして営業に戻ってこられたらと思っています。個人的には、父を超えたいですね!