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英老舗「スマイソン」が変わる 「バーバリー」出身のクリエイティブ・ディレクターが語るデビューコレクション

 ノートや手帳などのステーショナリーやレザーグッズで知られる英老舗ブランド「スマイソン(SMYTHSON)」は2月16日、ルーク・ゴダディン(Luc Goidadin)新クリエイティブ・ディレクター就任後初となる2019-20年秋冬コレクションを披露した。プレゼンテーションの会場に選んだのは、ロンドンのサマーセットハウス。アンティークな家具や鳥かご、彫刻、そして、遊び心溢れる空想の鳥のオブジェで飾られた空間に、グラフィカルなシェイプやパターンとノスタルジックな雰囲気を醸すカラーパレットが特徴的なアイテムを並べた。「バーバリー(BURBERRY)」でクリストファー・ベイリー(Christopher Bailey)の下、チーフ・デザイン・オフィサーを務めていた彼は、どのように1887年創業の老舗ブランドに変化をもたらすのか?ファーストコレクションのポイントから今後の方向性までを聞いた。

-ファーストコレクションのインスピレーション源は?

ルーク・ゴダディン(以下、ゴダディン):創業者であるフランク・スマイソン(Frank Smythson)の手掛けたアーカイブや彼の考え方からイメージを膨らませました。もともと銀細工師であり、旅行者向けのエンポリウム(さまざまなものを取り扱うギフトショップ)をニュー・ボンド・ストリートに開いた先進的な思考を持った人物で、もの作りにおいてはエレガントで時にエキセントリックな英国らしさを追求していました。そんなルーツを守りつつ、私らしい“洗練”と“ユーモア”を加えることでモダンなコレクションに仕上げることを目指しました。

-会場では、羽がノートになったり、体がバッグになった鳥のオブジェが目を引いた。アイテムのデザインにも鳥や羽が多く使われていたが?

ゴダディン:鳥や羽は、ブランドを象徴する非常に軽い“フェザーウェイトペーパー”からヒントを得ました。そこからイメージを膨らませ、実際のアイテムにはモチーフのプリントやハンドペイント、フェザーのようなフリンジ装飾として取り入れています。

-ノスタルジックなムードのカラーパレットやグラフィカルなパターンも印象的だ。

ゴダディン:カラーパレットのインスピレーション源は、色味が少しおかしい1950年代の古い写真で、鮮やかではあるけれど、英国の天候にも通じるようなミルキーなグレーがかった色合いを採用しています。そこに、ボルドーやネイビーといったクラシックな英国らしい色を加えました。パターンは、アーカイブにあったストライプやドットのパターンを拡大して組み合わせたり、40~50年代に使われていた電話の下に敷くマットからヒントを得たりしています。また、Sをモチーフにしたモノグラムは、フランクがデザインしたうねったペンの形状をアレンジしたもの。スカーフに用いた絵画風のプリントは、古い作品に英国らしいひねりを加えて私自身が描いたイラストを使っています。

-新たなコレクションのキーアイテムは?

ゴダディン:個人的に気に入っているのは、非常に柔らかなビッグトート。ボンディングレザーを使用しており、表と裏の色のコントラストがポイントです。もともとはウィメンズ用にデザインしたものですが、さまざまなカラーバリエーションがあるので、男性にも受け入れられるのではないでしょうか。また、今回のコレクションではカラフルなプリントを施したシルクスカーフや、スコットランド発の「ジョンストンズ(JOHNSTONS)」との協業による大判のカシミアスカーフも提案しています。

-アイコニックな手帳やノートにはどのようにアプローチしていくか?

ゴダディン:プリントやトリムを加えたモダンなデザインも提案していきますが、定番のアイテムも展開し続けます。重要だと考えているのは、継続とサプライズのバランス。なので、全てを変えてしまうのではなく、顧客から長く支持されているアイテムは継続しつつ、そこに新たな発見をもたらすようなサプライズの要素を加えていきます。もちろん、ノートをはじめとするステーショナリーが、ブランドにとって大切なアイテムであることは変わりません。紙は非常にエモーショナルでパーソナルなものであり、デジタルが発達する一方で、今改めて紙の魅力が評価されているように感じています。特に若い世代で紙に関心を抱く人が増えていることは興味深いですね。

-店舗のリニューアルも行うのか?

ゴダディン:全面的なリニューアルは行わず、このコレクションが発売になる7月には、ショップにロンドンでのプレゼンのようなセットを配置し、新たな印象を加えるつもりです。そうすることで、自身の手掛けたアイテムだけでなく世界から集めたさまざまな商品を扱っていたフランクの“エンポリウム”の要素を今の店舗に取り入れ、「スマイソン」の世界観を表現していきたいですね。そのため、私たちが提案していないジュエリーやホームウエアなどに関しては、新たに職人たちとコラボまたは提携し、店舗で取り扱う予定です。

-「バーバリー」での仕事との違いは?

ゴダディン:「バーバリー」ではウエアからアクセサリーまでを手掛けていましたが、一つのことにフォーカスしたいと考え、「スマイソン」で働くことを決めました。「バーバリー」は会社自体の規模が非常に大きかったので、関わる業者や人の数も多く仕事の進め方も複雑でしたが、それに比べると「スマイソン」はずっとコンパクト。製紙や製本からプリントやエングレーブまでを英国内にあるインハウスの工場で行い、レザーグッズはイタリア・フィレンツェで製作しているのですが、全てのプロセスがよりシンプルで美しいものを生み出すのに理想的な環境だと思います。

-今後、「スマイソン」をどのような方向に導いていくか?

ゴダディン:これまではプロダクトとして捉えられることが多かったですが、「スマイソン」は豊かな歴史を持ったブランド。そのヘリテージを生かし、現代に合ったストーリーを表現していきたいです。

JUN YABUNO:1986年大阪生まれ。ロンドン・カレッジ・オブ・ファッションを卒業後、「WWDジャパン」の編集記者として、ヨーロッパのファッション・ウィークの取材をはじめ、デザイナーズブランドやバッグ、インポーター、新人発掘などの分野を担当。2017年9月ベルリンに拠点を移し、フリーランスでファッションとライフスタイル関連の記事執筆や翻訳を手掛ける。「Yahoo!ニュース 個人」のオーサーも務める。