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東京ストリートシーンのキーパーソン今野直隆 クラブと「ナイキ」を愛する男

 今、ストリートシーンで成功を収めるには「ナイキ(NIKE)」とのコラボレーションは欠かせない。2018年、日本においては川久保玲や高橋盾、阿部千登勢らそうそうたるデザイナーがコラボしてきたが、その先陣を切ったのは東京発ストリートブランド「マジックスティック(MAGIC STICK)」のディレクター、今野直隆だった。

 今野ディレクターは11年に「マジックスティック」を立ち上げて以来、素材と縫製にこだわった高いクオリティーのハイエンドなストリートスタイルと、長年培った音楽・ファッションシーンでの太いコネクションを生かしてさまざまなブランドやアーティストと共にトピックを発信し、シーンを賑わせ続けてきた。

 その数あるトピックの中で最大と言っても過言でないのが、昨年2月に発表した「ナイキ」とのコラボ“エア フォース 1 HI VIP(AIR FORCE 1 HI VIP)”だ。今野ディレクターが愛して止まないクラブカルチャーを着想源とした同スニーカーは、発売と同時に完売。同年11月には別カラーも登場するなど、人気を見せている。

 ブランド立ち上げから9年目を迎え、脂が乗り切った今野ディレクターに、パーソナルな部分からブランドの展望、そして並々ならぬ“ナイキ愛”までを聞いた。

WWD:そもそもファッション業界を志した理由を教えてください。

今野:高校が私服通学だったのもあって、他の人よりも早くファッションに興味を持ちました。それに僕らの世代っていわゆる“パーティー”のはしりで、クラブがみんなの遊ぶところだったんです。だからそこに行ってモテたいからって毎週毎週服を買い漁ったり、古着屋でバイトしたりと、志したっていうよりも必然的でしたね。

WWD:業界に入ってから比較的早い段階で「ネクサスセブン(NEXUS VII.)」を初期メンバーとして立ち上げましたが、経緯は?

今野:今野(智弘)さんがまだ千葉でお店をやっていて、「ネクサスセブン」を立ち上げる(2001年)タイミングで知り合ったんです。その頃、僕は他のブランドで販売員を経てPRをやっていました。ただとにかく小さな会社でPR以外に企画や生産も任され、1人でできることが多かったから重宝されて声がかかったんだと思います。

WWD:8年近く「ネクサスセブン」に在籍した後、11年に「マジックスティック」を立ち上げるまでの2年間は何を?

今野:イベントのオーガナイズや海外に行ってました。「ネクサスセブン」在籍時からイベントもオーガナイズしていて、今でいうマーチャンダイズ(アーティストのグッズ)など、“自分が着たいものを作る”を実行していたんです。それを続けていくうちにブランド化したいという気持ちが強くなった。そして海外に長いこと行って、見て、触ってという経験を積みたかったから、会社を辞めてニューヨークに渡ったんです。

向こうではいろいろな経験が積めたし、自分で作って着てたものを「お、かっこいいじゃん!」みたいに言ってくれて、改めてブランドを始める自信がつきましたね。それから帰国して「マジックスティック」を立ち上げました。と言っても当時はお金もなかったので、Tシャツとかシンプルなものから始めたんですが、自分が欲しいからって無理して革ジャンとダウンジャケットも作って、案の定、卸先が見つからなくて苦労しましたね(笑)。

WWD:「マジックスティック」の由来は?

今野:「マジックスティック」の名前が一人歩きして世間的にはブランド名となっていますが、実は商標的には「マジックスティック エンターテイメント(MAGIK STICK ENTERTAINMENT.)」なんです。これは音楽プロデューサーでMCでもあるパフ・ダディー(現ディディー)と彼の音楽レーベル「バッド・ボーイ・エンタテインメント(現バッド・ボーイ・レコード)」に憧れたもので、パフ・ダディーの引き立て役としての超一流の存在感や、セクシーな面、エンターテイメント性から非常に影響を受けています。そこから誰でも覚えられるバッドボーイっぽいちょっとダサい言葉を考えて、自分の根っこにある“人を楽しませること”と、当時オーガナイズしていたイベントから命名しました。僕の服を着ることで1日の気分が良くなってほしい、という思いもあったりします。誤解されがちな“アレ”や50セント(50 Cent)の曲からではないんです。

WWD:デザインにおけるインスピレーションは?

今野:いろいろありますが、結局は自分の目。SNSももちろん見ますけどあまり注視しないようにしていて、街に出る。それこそパリコレを見に行ったり。でもコレクションというよりも街を歩いてる一般の人やバイヤー、クラブにいる人などリアルな人たちを見ますね。「あ、この感じかっこいいな」って感じられるものがたくさんあるので。

WWD:今野さん自身、音楽と深い繋がりがありますが、デザインには影響を与えていますか?

今野:これは僕だけじゃなくて、皆さんが絶対にそうだと思います。むしろ関わらないことはないんじゃないですか?音楽の趣味って絶対にファッションに現れるんですよ。ストリートシーンにいる人たちは、必ず何かしらの音楽がバックボーンにあって、その“通り道”があるからこそ、ストリートなのかなと。