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「シャツをカスタマイズするとは、つまり料理の“シズル”を感じることだ」

 アメトラファンの琴線に触れる言葉として「かたくな」「変わらない」がある。その点で、1961年創業の米国ブランド「インディビジュアライズド シャツ(INDIVIDUALIZED SHIRTS以下、インディビ)」はシャツ部門で燦然と輝く存在だ。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)は「Make America Great Again!」と叫んだが、その間にもメード・イン・USAの灯は消え続けた。一方で「インディビ」は、ニュージャージー州の本社工場で「かたくな」にモノ作りを行っている。

 日本ではファッション誌の影響もありカジュアルシャツのイメージが強い「インディビ」だが、その名の通り“その人のためシャツ”作りが真髄で、カスタムメードシャツでは米国ナンバーワンのシェアを誇る。ジョージ・H・W・ブッシュ(George H. W. Bush)、ジョージ・W・ブッシュ親子をはじめとする歴代大統領やセレブリティー、スポーツ選手も愛用しており、「ブルックス ブラザーズ(BROOKS BROTHERS)」のカスタム部門を長く任されていたという逸話はアメトラファンの暗記事項ともなっている。

 12月に入って、僕は5度目のカスタマイズを行うために原宿のセレクトショップ、ユーソニアングッズストア(USONIAN GOODS STORE)を訪れた。同店は「インディビ」のカスタムを常時受け付けている国内唯一のショップだ。価格は2枚で4万8000円から。納期は約2カ月。

 過去の僕のオーダー例を少しだけ紹介したい。例えばデニムシャツは「バンドカラー」がトレンドだった15年に「他とは違う一枚を」と依頼したもので、着用と洗濯を繰り返すことで見事に“育って”きた。ストライプシャツは「タックアウトしてよい」プルオーバーの着丈をあえて2インチ長くしてタックインするスタイルにしており、クレリックシャツはラウンドカラーをボタンダウンにして、その襟元を注目させるために袖はあえて身頃と同じ生地とした。

 来日したジム・ハイザー(Jim Heiser)=インディビジュアライズド シャツ社長にシャツをカスタマイズすることのだいご味について聞くと、「カスタムという行為は料理と似ている。過程を見なくても口に入れることはできるが、肉を焼く音やにおい(=シズル)を感じることでいっそう味わい深いものになるだろう。つまり、それがカスタマイズする意義だ」と答えた。

 なんてすてきな表現なんだろう!そして、「それが数十年間『変わらない』スタイルさ」と軽やかに笑った。マクロなこだわりは母・妻・娘で構成される女系なわが家では常に総すかんだが、僕はこれからもシャツをカスタマイズしようと思う。そう、シズルを感じるために。