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インスタで20万フォロワーの「古着女子」を生んだスタートアップyutoriの“ミレニアル流”起業法

 2017年12月にインスタグラム上でオシャレな古着女子をピックアップして紹介するアカウント「古着女子」をスタートして話題となったyutoriが10月、「キャンプファイヤー(CAMPFIRE)」創業者の家入一真氏らが率いるベンチャーキャピタルNOWを引受先とした第三者割当増資を実施したことを発表した。アパレル業界だけでなく、IT業界から大きな注目を集める同社だが、一体どんな会社で、何を目指すのか。1993年生まれの創業者、片石貴展・最高経営責任者(CEO)に話を聞いた。

WWD:もともとモバイルゲーム事業などを手がけるアカツキにいたわけですが、なぜインスタグラムで「古着女子」を始めたのでしょうか。

片石貴展CEO(以下、片石):アカツキでは新規事業部に所属していて、自分でも事業のスモールスタートを試したいと思っていました。前職でインスタグラムの運用などをしていたんですが、「メリー(MERY)」のようなピンク女子系とか、韓国女子とか、いろんなインスタコミュニティーがある中で、下北沢っぽい「古着女子」をまとめたアカウントがないなと思っていたんです。自分も古着が好きだし、好きなことがビジネスチャンスになることって人生でもそんなにないんじゃないかと思い立ち、アカウントを作りました。最初は趣味の延長として毎日投稿をリポストするだけで、別にビジネスではありませんでした。

WWD:その後法人化し、すぐに資金調達を実施しました。

片石:法人化したのが今年の4月です。当時は「古着女子」のフォロワーが10万程度で、もちろんマネタイズもしていません。ツテもなかったので、赤坂さんや佐藤さんらにフェイスブックでダイレクトメッセージを送り、お会いして、出資の相談をしたんです。まずは会社の土台を整えるために資金調達をしました。

WWD:今回、2回目の資金調達をしたのはなぜ?

片石:いきなり大規模な調達をするのではなく、少しずつ規模を大きくしたくて。家入さんとも初期からSNSでつながっていたんですが、ずっと事業のことを信じてくれて、今回ようやく事業拡大のフェーズに入ろうというタイミングで出資をいただきました。

WWD:現在の事業内容は?

片石:大きくはメディアとアパレルです。メディアでは「古着女子」と男性向けの「古着男子」というアカウントを運用しています。これらは一般投稿をリポストするメディアなので、投稿に出てくるモデルとフォロワーが重なっていることが大きな特徴です。今も毎日600〜1000程度フォロワーが増えていて、今後は広告事業なども検討しています。アパレルでは海外から買い付けた古着を販売する「9090」とD2C(Direct to Consumer)ブランドの「ダボット(DABBOT.)」をやっています。古着に関しては今後もテイスト別にさまざまなブランドを立ち上げる予定です。

WWD:なぜ古着ブランドを増やすんですか?

片石:古着の供給元は同じでも、さまざまなテイストの古着が混じっているんです。それらを僕らがテイストごとにわけて販売することで、異なる顧客を狙うことができるなと。古着は一点モノなので、縦に積むほうが難しいと思うんです。

一方のオリジナルブランドに関しては「ダボット」一本で、アイテムを増やす方向で考えています。「ダボット」は最初は僕が紹介してもらった国内工場と直接やりとりをしながら15SKUくらい作ったんですが、今では業務委託という形でデザイナーに依頼をしています。1カ月半ごとに新作を出すんですが、毎回初日でほぼ完売、売り上げも倍増しています。

WWD:なぜ、D2Cブランドが伸びているのでしょうか。

片石:SNSでのストーリー作りにこだわっているからだと思います。商品を作ったらまず、動画とイメージルックを徐々に公開して、世界観を伝えます。その後、インフルエンサーに先に配ることでリアルな着こなしが少しずつSNSにアップされるんです。そうして、ある程度話題になったタイミングで発売をします。発売後は顧客が着用画像を投稿してくれるんですが、投稿をきちんと見ると、どんな写真の撮り方をしているのか、どんなテイストを求めているのか、顧客のリアルな趣味趣向が見えてきます。それを次回の商品開発に生かすことで、かなり実態のあるPDCAを回しているんです。このプロセスをある程度体系化できたので、今後はさらに売り上げを伸ばしていきたいと思います。

WWD:資金調達の話でも感じましたが、堅実ですね。

片石:僕、臆病なんです(笑)。そもそも「俺らにしかできない」みたいな排他的な思想が苦手で。これまでのブランド事業は人脈もお金もある人たちだけができる“富豪ビジネス”的な側面がありました。能力のある人が上から商品を落とすようなイメージが強くて。でも、僕たちは路上から上がっていって、グローバルにチャレンジできることを証明したいんです。巨額の資金調達をすることだけが起業ではありませんし、僕自身、小さな事業を成長させた父親の影響をかなり受けているんだと思います。

WWD:今後、リアルでの販売は考えていますか?

片石:「WWDジャパン」の記事にもありましたが、韓国ブランドの「チュー(CHUU)」のように、都市ごとに体験のための場を作りたいなと思っています。韓国ブランドは見せ方も含めて、すごく参考になります。実は、12月に20坪程度のリアルなコミュニティーのための場所を作ろうと思っていて、そこには各ブランドを置く予定です。

WWD:リアルなコミュニティーとはどんなものを想定していますか。

片石:「ウィーワーク(WeWork、コワーキングスペース運営会社)」のファッション版みたいなイメージです。僕が高校生の時に通っていた原宿のミキリハッシンでは、2階にコミュニティスペースがあって。あれがルーツになっているのかもしれません。「古着女子」でつちかった人という資産があるにもかかわらず、直接的な関係を持てていないので、イベントはもちろんのこと、誰もが来られるような実験的な場所にしたいと思います。

WWD:インスタグラムから始まり、ブランド、リアルな場所ときて、最後はどこを目指すのでしょうか。

片石:“ミレニアルコンテンツカンパニー”です。韓国の「チュー」が“コンテンツ会社”と言っている記事を読んで、間違ってなかったと安心しました(笑)。一つのプロダクトで上場を目指すような企業ではなく、ミレニアルコンテンツを作ってヒットを量産したいんです。ミレニアル世代だけが感じられる空気感ってあるじゃないですか。そんな顧客インサイトを見つければ、ヒットを再現できるはずなんです。年齢的にも時代的にもこれができるのはここ3〜4年だと思います。もちろん、きちんと商業的に成功したいという思いもあります。僕自身がすごいんだと盲信できるタイプではないので、会社の売り上げという客観的な指標をもとに、僕らの働き方や手法を確立したいです。

WWD:最後に、参考にしている企業や人物がいれば教えてください。

片石:ジャンルが全然違うんですが、Suchmosです。これまで音楽業界には“ヒットの法則”があって、やりたいことを貫けずに顧客ニーズを汲み取った“サラリーマン”的な音楽が多くありました。そんな中で、やりたいことをやって、ヒットさせ、時代の空気感を後押ししているあたりが、真のロックスターという感じがして。デビュー当時から大好きなんですが、まさにミレニアルの成功例だと思います。