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デザイナー交代を経た新生「ソーイ」が見せる“究極のインスタレーション”とは

 「ソーイ(SOE)」が2012年春夏ぶりに東京コレクションに帰ってくる。昨年、ブランド設立から16年目を迎えたタイミングで「東京ファッションアワード(TOKYO FASHION AWARD)」に応募し、見事受賞したことから「アマゾン ファッション ウィーク東京(Amazon Fashion Week TOKYO以下、AFWT)」への参加が決まった。

 「ソーイ」は、東京で生まれ育った伊藤壮一郎が01年にメンズブランドとして立ち上げた。シンプルで洗練されたミニマルなデザインは、“日本のブランド“というよりも“東京のブランド“と言った方がしっくりくる。驚くことに、今シーズンの2018-19年秋冬コレクションから伊藤はデザイナーを退き、ディレクターに就任。新デザイナーには、専門学校卒業後、10年間伊藤の下で働いていた高木佑基が就いた。苦楽を共にし、会社の上司と部下という関係を超えて気を使わず話せる間柄だという2人に、アワード参加の理由や久々のショーに対する思いを聞いた。

WWD:ブランド設立16年というタイミングでアワードに応募した理由は?

伊藤壮一郎ディレクター(以下、伊藤):これまでとやっていること自体は変わらないし、自分たちの心持ちのためにと言うのも変ですけど、「高木と2人でブランドをやっていく」と決めたことへの景気付けの意味が大きいですね。

WWD:アワード受賞で海外の合同展示会にも出展した。これまで独自で行っていた海外の展示会と違いはあった?

伊藤:アワードの応募は海外の販路とブランド認知拡大が主たる目的でした。やってみて新しいお客さんのきっかけは得られたかなと思います。でも手応えは帰ってきてからの方が良いですね。

高木佑基デザイナー(以下、高木):パリにはウィメンズを持っていかなかったし、東京では新たにメンズを足したり、コレクションを全て持っていってたわけではないので、「全部見たい」と海外からわざわざ東京まで来てくれた方もいました。今まで自分たちだけでやっていた時よりは多くの人に見てもらえたかなと思います。

WWD:「AFWT」では、すでに展示会で見せたものを改めてインスタレーション形式で発表するわけだが、難しさはある?

高木:海外でも国内でも展示会を通じて見せ終えているし、今はSNSもあるので、力の入れどころが難しいですね(笑)。

伊藤:やっぱり、ショーというのは凄い考えるんですよ。今回だと1体目でどうやってこっちの世界観に引きこめるかのやりようがないし、もったいぶって暗転して洋服を見せるといった従来のショーのイメージとも違う……。これまでショーをやったことがないブランドがショーを経験できるのは意味があると思いますが、「ソーイ」はこれまでもやってきているので見に来てくれる人の温度ばかりを考えてしまいますね(笑)。だからインスタレーションとしてのコンセプトを、洋服とは別に持つ必要があるというところからがスタートでした。

WWD:これまで趣向を凝らしたショーを行ってきた印象があるが、今回は?

伊藤:全然普通です(笑)。「趣向を凝らしてるか」と聞かれたら普通に見えると思いますが、何もない空間で被写体に引き込まれる究極のインスタレーションです。昔は若気の至りでいろいろやっていたこともありますが、今の僕らはあまりゴテゴテしたものが好きじゃない。いかにミニマルにシンプルに、強く意味のあることができるか。自分たちがやっている意味合いやメッセージに沿っているイメージですね。

高木:春夏でも秋冬でもなく、自分たちのイメージしているものを表現する発表の場、という考え方ですかね。自然体というか、自分たちが思っていることをフィーリングで出すインスタレーションになるかと思います。

WWD:今回はウィメンズも登場するそうだが。

伊藤:メンズは高木で、ウィメンズに関しては僕がデザインしていますね。2016年に「ソーイ ウィメン(SOE WOMEN)」を立ち上げましたが、今シーズンから効率化を考えて「ソーイ」に統合しました。年に何回も海外に行って展示会をするサイクルだとどうしても疲弊してくるので。ただ、メンズのアイデアをウィメンズに落とし込むこともあるので、高木のアイデアがウィメンズに反映されていたりもしますね。今後は僕と高木のイメージの精度を上げていき、1つにする予定です。

実はシャツがメーンの「ソーイ シャツ(SOE SHIRTS)」も今は一旦休止していて、これも効率的に物事をいろいろやらなくてはいけない流れの中で決めたことです。ただ、何らかの形で続けてはいきます。

WWD:このタイミングで新たにデザイナーを立てた理由は?

伊藤:少し前から高木が全般を見るようになってはいたんです。2人がデザイナーでもよかったんですけど、わかりやすくしました。彼はもともと、僕がお世話になっていたテーラリングの先生の教え子だったので、10年前の入社当初は「高木=テーラード担当」みたいなイメージでした。高木は職人肌なのでデザイナーという肩書きがしっくりくる。それに足腰がしっかりしているからちょっとやそっとの風じゃ傾かない。それと、僕と感覚が似てるので任せられると思いました。今はディレクションする立場になって、デザイナーの時には見られなかったビジネスの面だったり、ビジュアルだったり、いろいろな側面を見られるようになったから楽しいですね。具体的には、ロゴを7〜8年ぶりに変更しました。

WWD:高木さんにとって伊藤さんとはどんな存在?

高木:伊藤は僕の中でもちろん会社的には上司というのもありますけど、近所の兄ちゃんみたいな、いとこの兄ちゃんみたいな(笑)。気を使わずに気さくに話せる関係。話をしていても感覚的に自分にはない発想があるし、悩んだら相談するし、任せてもらえる時もあるし、逆に僕が「どう思います?」と提案する時もあるし、一般的な上下関係のイメージはないですね。

伊藤:いとこの兄ちゃんはないでしょ(笑)。

WWD:ブランドの若返りを意識してる?

伊藤:意識はしています。どうしても若い感覚は必要になってくるし、時代において必要なことなのかな、と。でも深くは考えてないですね(笑)。

高木:若返りというか、前々から売る側のスタッフの意見も聞いたり、ブランドとして以上に会社として、常に若いスタッフの意見を聞く体質はありますね。好きなものばかり作ってもうまくいかないですし。

WWD:デザイナー交代で洋服のテイストも変わる?

伊藤:ちょっとした服のニュアンスは変わってくるとは思いますね。

高木:僕にとって「ソーイ」は会社みんなのもの。「『ソーイ』=伊藤」みたいな感覚はあまりありません。「『ソーイ』はどういうアイデンティティーを持ってるのか」と、ブランドにちゃんと向き合って服を高めていきたい。そのためにディレクターの伊藤だけじゃない、スタッフみんなと力を合わせないと難しいと思っています。

WWD:来シーズン以降も東京で発表したいか?

伊藤:海外で見せたいという気持ちはありますね。ビジネス的にもグローバルでやりたいし、東京で東京のためだけにやる必要性がなくなってきてるのは確かだと思うので。

高木:僕もショーをやるならチャレンジも含めて海外かなとは思っています。