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インバウンドを通じて、日本のブランドとサービスの価値を世界へ

 ファッション小売業のカレンダーでは、2月下旬は冬物と春物の端境期で服が売れない時期とされてきた。しかし今年はだいぶ様子が違う。2月21日(土)の銀座・中央通りの歩行者天国。「バーバリー(BURBERRY)」「セリーヌ(CELINE)」「プラダ(PRADA)」「H&M」「ユニクロ(UNIQLO)」などの大きな紙袋を両手に提げた人たちの姿が至るところにあった。

中国人旅行者に聞く、目的と行動

 春節(旧正月)の大型連休で日本を訪れた中国人旅行者だ。主に団体ツアーでやってくる彼らは、2時間前後の短時間、駆け足で目当ての店舗を巡り、買い物と免税手続きを済ませて、大量の買い物袋を携えて観光バスに戻り、次の目的地に移動する。観光バスの発着所になっている8丁目付近は、まるで上海や香港の繁華街にいるのかと錯覚するほど、中国人の買い物客でごった返していた。

 「サマンサタバサ(SAMANTHA THAVASA)」の紙袋を持った上海在住の女性(23)は「バッグと財布を買った。あとは日本製の化粧品をたくさん購入したい。買い物の予算として2万元(約36万円)用意してきた」と話した。「バーバリー」で春物のトレンチコートとバッグを買った福建省在住の女性(30代)は「『バーバリー・ブルーレーベル(BURBERRY BLUE LABEL)』がもうすぐ無くなると聞いたので、必ず買おうと決めていた。(ライセンス契約の終了を)なぜ知っているかって?中国のネットに出回っているよ」と笑っていた。

1人当たりの購買単価は10数万円。100万円以上の腕時計や宝飾品も

 円安による割安感が彼らの購買意欲を例年以上に刺激する。銀座三越では、春節の18〜22日の5日間の免税売上高が前年比3倍以上に跳ね上がった。1人当たりの購買単価は10数万円。ほかの百貨店でも100万円以上の腕時計や宝飾品など高額商品がよく売れた。昨年4月の消費税増税後、買い控えが続く国内ファッション市場において、チャイナマネーの存在感が浮き彫りになった。

 弊紙の3月2日号ではインバウンド特集を掲載し、訪日外国人の消費の状況とそれを商機と捉える商業施設の取り組みをリポートしている。2014年に日本を訪れた外国人は過去最高の1300万人超。円安に加えて、ビザ発行の緩和が追い風になって一気に300万人近く増えた。政府が外国人観光客の誘致拡大を掲げる「ビジット・ジャパン・キャンペーン」を開始した04年と比較すると、ほぼ倍増したことになる。政府は東京五輪が開かれる20年に2000万人、30年に3000万人に増やす目標を立てており「観光立国」に向けた期待が高まる。現時点では日本の観光業収入はフランスや米国に遠く及ばず、同じアジアの香港やタイと比べても3分の1程度にすぎない。それだけに伸び代は大きい。買い物を主たる目的とした海外旅行を指す“ショッピングツーリズム”という言葉があるが、中華圏の観光客はショッピングを好む傾向が強く、観光庁の調べによると中国人1人当たりでショッピングに12万7000円も使う。一昨年、旅行会社や百貨店などが参画して、海外からの買い物客を誘致するためにジャパンショッピングツーリズム協会を発足させたばかり。日本においてインバウンドは“夜明け前”の市場なのだ。

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