オンラインファッション大手の「シーイン(SHEIN)」は、中国・広州のサプライヤーで働く従業員の賃金と職場環境について、第三者機関による調査結果を公表した。国際的な認証機関のWRAP(Worldwide Responsible Accredited Production)に委託し、調達額上位208社を対象に賃金記録を分析した。基準への適合を確かめる社会的監査から一歩進み、賃金の水準そのものと、働く本人の受け止め方まで踏み込んだ。
法定最低賃金を4割以上上回る記録が95.5%
調査は2025年5〜11月に実施。WRAP認定の監査機関であるアコーディア(Accordia)、ALGI、CTIの3社が現地を訪れ、無作為に抽出した現場従業員2441人の直近3カ月分の出勤記録と給与記録から、7317件の賃金サンプルを分析した。
確認した賃金記録の99.8%が現地の法定最低賃金を満たし、95.5%は最低賃金を40%以上上回った。CTIが国際基準を参照して算出した広州の生活賃金(時給ベース)と比べても、95.3%がその水準以上で、61.2%は40%以上上回った。時間外の割増賃金の要件を満たしていた記録は97.5%。性別や部門による著しい賃金格差は確認されなかったという。課題が見つかったごく少数のケースは、該当サプライヤーと根本原因を特定し、是正を進めた。
「生活費を賄えている」は6割、労働時間は希望が割れる
数字の上では高い水準を示す一方、働く側の実感には開きがある。従業員を対象にした任意・匿名の18問のアンケート(有効回答9981件)では、現在の賃金で生活費を賄えていると答えたのは60.9%。26.7%は十分ではないと答え、12.4%は「わからない」とした。「シーイン」は、賃金が十分かどうかの感じ方は収入水準だけでなく個人の状況や希望にも左右されるという、生活賃金研究で指摘される傾向を反映している可能性があるとする。今後の収入増加に「自信がある」「非常に自信がある」と答えたのは合わせて63.5%。収入が増えたら使いたい分野は「子どもの教育」と「住宅」が多かった。
労働時間について自由記述で触れたのは81人で、回答者全体の約1%。このうち39人が短縮を望み、42人はもっと働ける選択肢を求めた。ほぼ半々に割れた格好だ。ただ、今回の公表内容は時間外の割増賃金が守られているかを示したものの、実際の労働時間の長さは開示していない。
苦情窓口を知らない従業員が35%
職場環境に満足しているとの回答は86.8%、経営陣に意見を伝えられるとの回答は86.9%に上った。一方で34.9%が「シーイン」の苦情処理窓口を知らなかった。これを受け、国際的な非営利団体のエシカル・サプライチェーン・プログラム(ESCP)とWRAPと連携し、一部のサプライヤーで第三者が運営する「ワーカーケア・ホットライン」を試験導入。26年3月の開設以降、法務、心理、人事の専門的な支援を提供している。
取引先から見た発注元としての評価も公表した。キャスケール・ベター・バイイング(Cascale Better Buying)の「Better Buying Partnership Index(BBPI)」第5回評価に参加し、サプライヤー72社が回答。マイナス100〜プラス100のスケールで64点と、ソフトグッズ分野のベンチマーク61点を上回った。期限通りの支払いなどが評価された一方、閑散期や販売終了時の需要の変動を踏まえ、より大規模で安定した発注を求める声が寄せられた。