
ZOZOが、ここ数年取り組んできた「似合う」を軸とするAIエージェント戦略を具体化する。10月29日の2027年3月期中間決算説明会で、主力の「ゾゾタウン」で商品選びや着回しを提案するAIに加え、リアル店舗での利用を想定した仮想試着ミラーを開発していることを明らかにした。武器は、購買・閲覧履歴などの独自データと、「似合う」を提案するアルゴリズム。ネットとリアルの双方に自分に似合う服と出合える接点を設け、購買につなげる構想だ。
「似合う」解明を武器に購買喚起
同社はすでに、複数のサービスで「似合う」を提案している。4月にはLINE公式アカウント「ZOZOの似合うコーデAI ラボくん」を開設し、AIとの対話を通じて好みや悩みに応じたコーディネートを提案するサービスを始めた。9月にはコーディネートアプリ「WEAR by ZOZO」に、ファッションの方向性を導き出す「ファッションコア診断」や、生成AIによるバーチャル試着などを備えた「似合うルーム by ZOZO」を導入。実店舗「似合うラボ」で培ったノウハウを生かし、ユーチューブでも着こなしのコツを発信している。
開発中のゾゾタウンのAIは、商品選びの相談に応じるほか、購入したアイテムの着回しを提案する。一方、リアルの接点を担う「似合うミラー」は、「似合う」判定を学習したAIを搭載した仮想試着ミラーだ。さまざまなジャンルのコーディネートをまとめて仮想試着し、普段は着ない服にも挑戦できる仕組みを目指す。気に入ったコーディネートのアイテムを、どの店頭で扱っているか確認できる機能も想定する。
これらを通じて目指すのは、欲しい商品を検索して買う従来の流れに、「自分に似合う服を知る」ことを起点とした購買の流れを加えることだ。服への関心を引き出し、スタイリングの提案から商品選び、購入後の着回しまで支援することで、継続利用と顧客生涯価値(LTV)の向上につなげる。
AI時代にも残る、ZOZOの価値
背景には、消費者に代わって商品を探すAIエージェントが普及する時代への備えがある。多くのブランドと消費者を一つの場で結ぶゾゾタウンは、両者を仲介する「リボンモデル」で成長してきた。消費者側のAIがブランドに直接アクセスするようになれば、こうした仲介役の存在意義が問われる。
ZOZOは、この先の展開を商材によって異なる2つのシナリオで捉える。日用品のように仕様が明確で公開情報も多い商材では、消費者側のAIだけで商品を選びやすくなり、仲介役の価値が薄れる。一方、ファッションのように人によって評価が異なり、公開情報だけでは最適な商品を選びにくい商材では、売り手側と消費者側のAIが対話・協働して提案する形が有力になるとみる。
澤田宏太郎社長兼CEOは、服の見え方や感じ方が一人一人の感性と結びついていることを指摘する。「人によっては、似合う似合わないではなく、他人から見て恥ずかしくないという考え方もある」。その曖昧で個人差の大きい要望に応えるために、購買・閲覧履歴や商品とひも付いたコーディネート画像など、同社が蓄積してきたデータを生かす。消費者側のAIだけでは得にくい情報を持ち、「その人に似合うもの」を提案できることが、仲介役としての強みになるという考えだ。
購買データを支える決済は手放さない
ゾゾタウンの9月末時点の年間購入者数は1355万人。一方、アクティブ会員1人当たりの年間購入金額は、前年同期比3.4%減の4万951円だった。獲得した顧客の継続利用や買い上げをどう伸ばすか。その手段として期待するのが、「似合う」を起点とした一連のサービスだ。AIエージェントの商品取扱高への影響について、澤田社長は「AIで似合うものがバッチリ見つかれば、自然と売り上げは増えていく。これはお店で人力でやって証明済みだ」と話す。
購買につながる接点を広げる一方、重視するのが自社サイト内での決済だ。澤田社長は「決済は非常に貴重なデータ」と強調し、何を買ったかという情報の重要性を説く。AIが商品選びを担うようになっても、自社サイトで決済するよう促し、その接点は手放さない方針を示した。独自データを生かして「似合う」を提案し、その結果として生まれる購買データを蓄積する。ネットとリアルに広げる接点を、この循環につなげる狙いだ。