不安定な時代の「芯」を求めたり、余計なデザインを廃したりすることで、(時流に逆らうかのように)細くて、長いシルエットを探求する昨今のメンズのように、「プラダ(PRADA)」はウィメンズでも、無駄のない本質的なシルエットに回帰した。特にふんわりと広がるスカートやローウエストのディテールは、誰が見ても、一目で「プラダ」と認識できる。そのキーアイテムとなったのは、スカート。ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)は米「WWD」の取材に対して、「ファッションデザインに注目する際、人はどうしても全身や胴体部分に目を向けがち。ウエストや、そこから下で何が起きているかについては、あまり注目されてこなかった。でも実はそここそ、多くの動きが生まれる場所だ」と語る。
「女性にとってのスカートは、
男性にとってのTシャツ」
ミウッチャはスカラップド・ヘム、ホタテ貝を横に並べたかのように波打つ裾のシルクスカートの形を何度も整えながら、その長方形のフォルムを「絵画の額縁」になぞらえた。「私たちには、その額縁の中にアイデアを収めることが求められている」と続ける。一方のラフ・シモンズ(Raf Simons)は、かつてのインタビューでミウッチャが語っていた言葉を借り、「女性にとってのスカートは、男性にとってのTシャツに相当する」と応じた。2027年春夏のウィメンズ・コレクションでは、パンツルックは1回も登場しなかった。
ラフは、「セクシーでありたい時、ラグジュアリーな気分でいたい時、仕事に行く時、あるいは子供たちとリラックスして過ごしたい時など、スカートはあらゆる場面に対応できる」と話す。そしてスカートだけだが、さまざまなスカートをランウエイに送り出した。「セクシーでありたい時」のためには、深いスリットを刻んだラップスカート。スリットの部分はカラフルなサテンで切り返したり、過去のアーカイブから着想を得たビジュー刺繍を飾ったりで視線を集める。「ラグジュアリーな気分でいたい時」には、ビーズの花だけで作った膝上丈のタイトスカート。「仕事に行く時」は、サマーウールで作ったグレーのプリーツスカート。そして「子供たちとリラックスして過ごしたい時」は、子供との会話が盛り上がりそうな抽象画プリントの切りっぱなしスカート。さまざまなスカートは女性の多種多様なシーンや生き方を彩ると同時に、フェミニンからマスキュリン、機能から装飾、インテリジェンスからアグリー・ビューティまでを網羅して行き来する「プラダ」の本質を表している。その中でミウッチャは、冒頭から終盤にかけて何度も提案したラップスカートを「男女を問わず、歴史上最も原始的かつ機能的な衣服の一つ」と評している。
視線を下半身に集めるため
上半身はミニマル。最小のブラトップ
下半身へと視線を集めるため、上半身はミニマルだ。ブラトップは布地を最小限にして、スーパーミニマル。タックインするチェックやクレリックのシャツも極めてシンプルで、パンツ同様、一度も登場しないジャケットの代わりには「プラダ」の定番とも言えるニットを合わせた。そこにビンテージ加工のレザーブルゾンなど、ラフ・シモンズの加入後にステイプル(定番)となったバイカーズブルゾンなどをプラスしている。
グルービーな抽象画プリントのブラトップとスカートは柄違い、オーガンジーのスカートにはシャツブルゾンと同じ生地で作ったプリーツスカートを合わせるなど、スタイリングはミスマッチも覚悟の上なほど自由だ。2人は、「頭の先からつま先までトータルでデザインされたコーディネートは、あまり多くの可能性を与えてくれない」と説明する。多様なスカートで、多彩な女性の生き様を描いた今シーズンのコレクションに、2人は無限の可能性をのせた。