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特急サンダーバードが「kawaiiレストラン」に 京都の廃線高架上で営業

JR京都駅の一駅隣の梅小路京都西駅に列車型レストラン「フューチャートレイン キョート ダイナー&カフェ」が9月20日オープンした。2016年に廃線となったJR梅小路短絡線の高架空間を“未来行きの列車が停車するプラットホーム”に見立てた話題の施設だ。8月のプレオープンには5000人以上が訪れ、話題になってきた。クリエイティブプロデューサーは”Kawaii”カルチャーの第一人者であるアーティストの増田セバスチャン氏。京都と北陸を結んだ特急サンダーバード681系の廃車両を紅梅色に再塗装してアップサイクルしている。

ド派手なピンクトレインの非日常感

京都鉄道博物館に隣接する同施設は全長約90m。改札口を入ると、再生されたサンダーバードの先頭車両(1号車)に続き、食堂車をモチーフとしたメインダイニングの2号車、バーカウンターやボックス席を設けた3号車、そしてホーム席、キッチン、テラス席が並ぶ。

特に注目を集めるのは、1号車のアート体験空間「フューチャーバード」だ。増田氏とデジタルクリエイティブ会社のイマジカ イークスが協業した。「未来行きの列車の機関室」をテーマに、鉄道車両の運転席や計器類を生かした舞台装置の中、レトロフューチャーな装飾とCG、電飾、音響を融合した演出で、非日常的な没入型体験を提供する。

約20分の乗車体験の後は2号車の食堂へ。メニューはスモークとともに現れる「豪華絢爛バーガー 梅未来」(3000円)や、高さ30㎝を超える「KAWAII五重塔パフェ」(2600円)など、京都の食材とKawaii要素を融合した独創的な料理ばかりだ。非日常を演出する内装とともに、食体験そのものが物語の一部となるよう設計されている。1号車での没入体験とコース料理を組み合わせた完全予約制のプラン(1万1000円)も用意。エンタメと食をひとつながりの体験として提供する。

テーマパークのように、ゲストを出迎えるスタッフの存在も非日常な時間を盛り上げる。列車の車掌をイメージしたマスコットキャラクター「バーディ・バディ」はピンクの帽子とカラフルな尾が目印。ピンクの羽をモチーフにした制服に身を包む“時空アテンダント”とともにガイド役としてゲストをもてなす。時空アテンダントの衣装は、Kawaiiカルチャーを象徴するものだ。映像演出や料理の進行にも登場し、未来感あふれる空間や料理と一体化して物語の世界観を支える役割を果たしている。

同施設は、飲食やアミューズメント事業を手掛けるDDグループ(東京、松村厚久社長)が企画・開発し、同社傘下のダイヤモンドダイニングが店舗を運営する。増田氏と同社との取り組みは15年に原宿に開業し、世界中のセレブを魅了した「カワイイモンスターカフェ」以来となる。

「銀河鉄道999」へのあこがれを形に

現在、アメリカを拠点に活動し、日本のポップカルチャーを世界に発信する増田氏はフューチャートレインについてこう語る。「サンダーバードを使ったエンターテイメント施設を作ることは少年時代からの夢だった。小学生の頃は鉄道に乗ってどこかに行くことがすごく好きで、そのときの高揚感や『銀河鉄道999』『宇宙戦艦ヤマト』などの作品へのあこがれを形にした。単なるレストランにとどまらず、食体験を融合したアトラクション型施設として楽しんでほしい」。

京都鉄道博物館や京都水族館を訪れる鉄道ファンや家族連れ、インバウンドに加え、20代の若年層の取り込みも狙う。「京都は世界中の人々が訪れる都市だが、寺社仏閣と並んでポップカルチャーを体験したいという声も多い。昼間は伝統的な文化財を、夜はこうした新しいカルチャーを楽しめる拠点になればいい」(増田氏)と期待を寄せる。

同様の体験型エンターテイメントレストランを世界各地に開業するのが、増田氏の今後の目標だ。今年冬には「カワイイモンスターカフェ」の考えを継承したアミューズメントパークを東京・原宿に開設する。ヨーロッパと中国でも準備を進めているという。

本プロジェクトは、京都駅西部エリアのさらなる賑わい創出をめざしてスタートした。JR西日本、京都駅ビル開発、梅小路ハイライン、地域金融機関、京都市を含む11者が25年3月に「鉄道高架空間の活用によるエリア活性化に関する連携協定」を締結した。20日のセレモニーに登壇した京都市の松井孝治市長は「梅小路エリアは若い人も増え、非常に注目を集めている。北側には京都リサーチパークもあり、文化やモノ作りを含めた一大拠点になっている。フューチャートレインが新たな賑わいを生み出す起爆剤となることを期待したい」とあいさつした。

京都ではオーバーツーリズムが深刻化し、市内の人気観光地では混雑が常態化する。観光客によるマナー問題も顕在化している。京都駅西部エリアに注目度の高い観光スポットを新設することは、観光客の分散化と回遊性向上を図る狙いもある。

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