PROFILE: 左から、川口高輝NKT代表、ラミ・メクダッチ「ローラ ジェームス ハーパー」創業者

フランス発フレグランス「ローラ ジェームス ハーパー(LOLA JAMES HARPER)」(以下LJH)、が日本に上陸した。7月には、SEVENTEENのジョシュアとコラボレーションした新作オードトワレ“トゥゲザネス”などの発表を兼ねたポップアップを東京で開催。「LJH」は、フォトグラファー、ミュージシャン、映画監督などとして活躍するラミ・メクダッチが2013年に設立。日本では、畜舎用資材の輸入商社NKTが輸入販売を手掛ける。イベントで来日したメクダッチにブランドのコンセプトについて、NKTの川口高輝代表にビューティ部門立ち上げの経緯や今後の「LJH」の展開について聞いた。
旅先の風景を香りで表現するファミリープロジェクト
メクダッチは1990年後半にパリのセレクトショップ「コレット(COLETTE)」の香り“エール ド コレット”をプロデュースした人物。その後、「ホテル コスト(HOTEL COSTES)」の香りも手掛けるなど、パリの最先端のショップや社交場の香りを作ってきた。クリエイターとしてさまざまな顔を持つ彼が2013年にスタートしたのが、「LJH」だ。17年に「コレット」が閉店する際に、“エール ド コレット”の香りを受け継ぐ許可をもらい「LJH」で“213 リュ サントノレ エアー”として展開している。
メクダッチは、「私と妻のセリーヌ、息子のノエ、娘のリリが旅先で出合った風景や音楽、香りなどを表現するファミリープロジェクトだ」と話す。ブランド名については、当時の娘の人形の名前“ローラ”と息子が好きだったバスケットボール選手レブロン・ジェームズ(LeBron James)、当時良く聞いていた歌手のベン・ハーパー(Ben Harper)を組み合わせたという。「LJH」では、仲間との思い出の場所や馴染みの店の香りもあり、パリの古いレコーディングスタジオやニューヨークのコミックストア、サンディエゴのサーフショップなど、家族が世界中の旅先で出合った場所を表現した香り約20種類をそろえる。中には、イネス・ド・ラ・フレサンジュ(Ines de la Fressange)の別荘やパリ左岸の有名惣菜店「ダ・ローザ(DA ROSA)」の香りといったユニークなものも。
「香りは思い出に導いてくれる入り口のようなものだ。リリは現在フォトグラファーとして活動、ノエはショートフィルムを撮影している。だから、香りとそれらを組み合わせて紹介している」とメクダッチ。「LJH」では、ルームスプレー、キャンドル、オードトワレなどに加え、ノエやリリが撮影やキュレーションした写真集なども販売している。
“コミックストア”の香りから生まれたコラボレーション
マルチクリエイターとして幅広いネットワークを持つメクダッチ。スマッシングパンプキンズやK-popスターなど交友関係も広い。彼がジョシュアに出合ったのは、約3年前。メクダッチは、「ジョシュアはフレグランスの“通”ともいえる存在。『LJH』の“ザ コミック ストア オブ ジョージ(以下、コミックストア)”を気に入ってくれて雑誌で紹介された。そこから会話が始まり、彼が好きな場所の香りを作ろうということになった」と話す。そこで生まれたのが、“ザ ジョシュア ホン ハン リバー ウォークのルームスプレーとキャンドルだ。ジョシュアのお気に入りの瞑想スポットであるソウル漢江沿いの緑豊かな遊歩道の香りを表現したもので、抹茶、ウッド、ムスクの透明感のある香りだ。オードトワレの“ザ ジョシュア ホン トゥゲザネス”は、緑茶にベルガモットとスパイス融合した香り。ユネスコ青年親善大使を務めるジョシュアがユネスコで行ったスピーチ“みんなで一緒に学び、進む”という思いが込められている。
メクダッチは、「ジョシュアの影響で“コミックストア”の香りはベストセラーの1つ。レコーディングスタジオやサーフショップの香りも人気だ。香りを通して、その場所の雰囲気やストーリーに触れられるのが人気の理由だ」と言う。現在、「LJH」はヨーロッパや北米、香港、韓国のセレクトショップなど約400店舗で販売している。
先代の思いを引き継ぎ“癒し=香り”のビジネスをスタート
「LJH」を輸入販売するNKTは畜舎クリーニングや人工芝などの大手輸入商社。世界最先端の畜産用器材の展開を通して日本の畜産業を支えている。同社が全く異なるライフ&フレグランス事業部を始めた理由について川口高耀NKT代表は、「医者になりたかった先代の思いを、“癒し=香り”に置き換えて引き継いだ」と話す。同代表は、フレグランスなどさまざまな商品を扱った経験の持ち主。先代から根幹事業と“癒し”への思いを引き継ぎ、経験とネットワークを活かして約5年前にビューティ事業部を立ち上げた。現在は、自社EC中心に、天然成分100%のオーラルケア「ラブバイト(LOVEBYT)」、イギリス発ディフューザー「イーム(EYM.)」、タイ発ナチュラルコスメ「マウントサポラ(MT. SAPOLA)」などを販売している。
「LJH」との出合いは、パリのお土産に「コレット」の香りをもらった社員の提案から。昨年末に「LJH」にアプローチして、スピーディに話を進めた。「ディプティック(DYPTIQUE)」をはじめ、さまざまなフレグランスブランドを取り扱ってきた川口代表は、「これも縁。香りもボトルのデザインもシンプルで洗練されている。他のブランドにはないストーリーがあるブランドなので、これはイケると思った」と話す。輸入販売の交渉を始めた当時はまだ、ジョシュアとの協業は発表されていなかった。話を進めるうちにコラボの発表があり、日本でのポップアップが決定した。
通常、日本上陸時にはテスト的に市場で受けそうな香りや商品を絞って販売をスタートするケースが多いが、商品展開もほぼフルラインアップをそろえる。香りの種類が多く、SKUは50以上。川口代表は、「ターゲットは30~50代。男女問わず、気分に合わせて色々な香りを楽しんでほしい。だから、香りの数も絞らず、現地と変わらない手に取りやすい価格設定にしている」と話す。価格は、ルームスプレーが9900円、キャンドルが9900円、オードトワレが1万5400円〜2万9700円だ。
ジョシュアとのコラボのポップアップショップの売上高は予想を1.5倍上回ったという。今後は、自社ECでの販売に加え、東京都現代美術館や銀座蔦屋書店、博多阪急、タカシマヤ ゲートタワーモールなどでポップアップを開催する。