ファッション

「スリーコインズ」香港1号店が盛況 日本とほぼ同価格を実現できた理由

パルの雑貨ブランド「スリーコインズ(3COINS)」は、香港1号店となるハイサンプレイス店を7月18日にオープンした。香港で最大規模を誇る日本商品専門のECサイト「YAICHI 谷日百貨」や実店舗を展開するNEXT81グループとタッグを組み、海外市場に一歩を踏み出す。

‎地下鉄の銅鑼湾(コーズウェイベイ)駅に直結する商業施設「ハイサンプレイス」の地下2階に出店した。周辺にはタイムズスクエアやそごうなどの商業施設があり、香港でも活気のある繁華街の一つだ。売り場面積は約175平方メートル(約53坪)でSKU数は約2600点。日本国内で取り扱う生活雑貨や服飾雑貨に加え、香港限定商品も数点展開する。日本の店舗と同様にキッチン、収納、アウトドア、メンズなどテーマ別にゾーンニングし、通路からも一目でわかりやすい売り場構成にした。

プチプラ雑貨に長蛇の列

オープン初日は平日でしかも雨天にもかかわらず、午前11時の開店前に200人以上が並び、香港市民の「スリーコインズ」に対する期待の大きさをうかがわせた。客層はZ世代の女性からカップル、ファミリー、男性客まで幅広く、開店以降も終日、長蛇の列が絶えなかった。混雑を避けるため、初日は閉店時間を19時に前倒しした。

YAICHIの担当者は「店の仮囲いに『スリーコインズ』の出店が告知されてからSNSで話題になった。オープン前日には、いいね数が4000近く、フォロワー数も7000近くまで増え、想像以上の反響だった」と説明する。

日本語が堪能で何度も来日している23歳のおしゃれな男性は、瞬間冷却パックや竹製鬼おろし、ヘアドライキャップなどを購入した。「日常的に香港では見かけないものがたくさん並んでいる。香港で日本のものが買えるのが新鮮な体験だった」と笑顔を見せる。アロマオイルとヘアアクセサリーを買った女子大生は「『スリーコインズ』のことはもともと知っていた。安くてクオリティがよく、実用性がある。家庭で使える日用品が増えるとうれしい」と話した。アイスメーカーや解凍プレートなどを買い、300香港ドルを使った25歳の男性も「とても安いのでホントはもっと買いたかった。日本は大好きで『スリーコインズ』の商品は自宅にたくさん持っている」という。

日本を訪れる香港の人の数は24年度に約270万人で過去最高を更新した。旅行者らの口コミで「スリーコインズ」認知度は高い。そのため、香港での販売価格がいくらになるのか注目されたが、店内には日本とほぼ同価格の商品が並び、日本好きの香港人に歓喜をもって迎えられた。
価格帯は18~228香港ドル。日本で税込330円の商品は18香港ドル(直近の為替レートで約340円)で販売する。1650円のキャリーオンバッグは90香港ドル(約1702円)。日本円表記の方が香港の消費者に喜ばれることから、日本円と香港ドルを一覧にした価格表を店内に掲げた。

カギをにぎる現地パートナーの存在

 

日本と同水準の価格設定を実現できたのは、現地パートナーであるYAICHIが持つプラットフォームと長年の貿易経験を生かし、物流コストの削減を図ったためだ。YAICHIの創業者でCEOのエルマス・ロウ氏は「香港では最近、中国で買い物する”北上消費”が増えている。また日本旅行では1人当たり平均26万円を消費している。日本とほぼ同価格で商品が手に入れば、わざわざ日本に行かなくてもいいし、香港経済の活性化にも貢献できる」と、スリーコインズ事業に大きな期待を寄せる。

「スリーコインズ」の海外進出は2016年に中国・上海に出店し、2年後に撤退して以来となる。コロナ禍を機に急成長し、25年2月期の売上高は過去最高の709億円に達した。底力を蓄えて満を持しての再挑戦となる。「以前は日本国内での実力も十分ではなかった。一旦撤退し、国内でのリブランディングに注力して事業拡大する力を蓄えてきた」と、スリーコインズ事業を成長に導いたパルの澤井克之専務は話す。

海外進出にあたっては複数の企業から引き合いがあった。パルが事業パートナーとして選んだのは、香港を拠点に日本ブランドのアジア展開を支援してきたYAICHIだった。20年以上日本との貿易にかかわり、日本商品にこだわったECプラットフォームでは約35万SKU、2000社以上の日本ブランドを取り扱う。小売りビジネスも展開し、香港での出店、運営ノウハウに強みを持つ。澤井専務は「日本とほぼ変わらない価格で販売できること、リアル店舗だけでなくEC展開も可能なこと、物流網がすでに整備されていることがYAICHIを選ぶ決め手だった」(同)と話す。背景には、物価の高い香港市場でいいものを安く提供することが新たな顧客価値につながるという読みもあった。

ハイサンプレイス店の初年度売上目標は1000万香港ドル(約1億9000万円)。リアル店舗に続き、ECサイト「YAICHI 谷日百貨」も8月中旬に開設予定だ。香港出店に続き、8月16日にはクアラルンプールにある「三井ショッピングパーク ららぽーとブキッ・ビンタンシティセンター」にもマレーシア1号店をオープンする。

香港でも年内にあと1~2店舗の出店を検討する。「1号店が非常に好感触を得ており、いろんな商業施設から引き合いが来ている」と澤田専務。香港でのYAICHIとの取り組みが成功すれば、来年から本格化するグローバル戦略に弾みがつきそうだ。

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