ファッション

「アミリ」のCEOは、ブランドの50年後を考える。 将来のレガシーはLA由来の開放感

ロサンゼルス生まれの「アミリ(AMIRI)」が、エイドリアン・ワード・リース(Adrian Ward-Rees)を最高経営責任者(CEO)に指名してから、まもなく1年を迎える。エイドリアンCEOは、「ディオール オム(DIOR HOMME)」(当時)でマネジング・ディレクターを務めた後、「バーバリー(BURBERRY)」で約3年、シニア・バイス・プレジデントを務めた。日本でのビジネスは、独占販売契約を締結するスタッフ インターナショナル ジャパンが手掛けている。エイドリアンCEOに、「アミリ」の今後について聞いた。

WWDJAPAN(以下、WWD):「アミリ」のCEOに就任した経緯は?

エイドリアン・ワード・リース=アミリCEO(以下、エイドリアン):2年ほど前、友人を介してマイク・アミリ(Mike Amiri)=クリエイティブ・ディレクターと知り合った。当時からマイクは、「ブランドとして、次のステップに進みたい。ハイプなファッションブランドとして終わるのではなく、(独自の歴史やカルチャーを持つ)メゾンに進化したい」と語っていた。メゾンへの進化に必要なものを一緒に考えているうちに、CEOのポジションをオファーしてくれたんだ。これまで携わってきた「バーバリー」や「ディオール オム」「ナイキ(NIKE)」に比べれば、「アミリ」はとても小さなブランド。でも開放的なカルチャーと透明性を有し、成長を続けている。ショップスタッフも含めて200人という組織は、皆が互いの顔を認識、つながり、新たなチャレンジをどう乗り越えるべきか話し合い、共有するためにちょうど良い規模感。ラグジュアリーの世界で、カルチャーと透明性でどこまで戦っていけるのか?この2つを武器に、メゾンへの成長を試みる「アミリ」にどう貢献できるのか?を考え、マイクのオファーを引き受けることにした。

WWD:マイクは、どんな人物?
エイドリアン:アートをよく知るクリエイティブな存在でありながら、「ファンにとってのベストは?」を考え、商業的な成功のために決断することもできる。腰の低い、謙虚なデザイナーだ。謙虚だから、デザインチームはもちろん、店頭、物流に携わるスタッフの意見にも耳を傾け、フィードバックを返す。こんな開放感や透明性が、「アミリ」の魅力だと思う。

WWD:そんな開放感や透明性は、どこから来ると感じている?
エイドリアン:マイクのパーソナリティはもちろん、拠点を構えるロサンゼルスの空気感やカルチャーによるところも大きいだろう。我々が目指すのは、青い空や青い海を感じさせる、カリフォルニアのメゾン。皆にもこの魅力を体感してほしい。ポップアップも含めて、アメリカ西海岸のオープンマインドなムードをどう伝えるべきか?考えている。

デニムはダメージ加工やアップリケ、ペインティングで
自己表現できるアイテムとして認識され、復活した

WWD:その上で、デニムをキーアイテムの1つに据えようとしている。
エイドリアン:デニムは長らくダウントレンドだったが、ここ数年で劇的に復活した。理由は、これまでより快適に着られるようになったからじゃない。ダメージ加工やアップリケ、ペインティングなどが、アメリカ西海岸を含む、若い世代のコミュニティで広がり、改めて自己表現できるアイテムとして認識されたからだと思う。そんなコミュニティに向けて、「アミリ」はデニムを再定義しようとしている。若い世代のフレキシブルな感覚を意識して、改めてデニムをドレスアップにもドレスダウンにも使えるアイテムとして提案している。この感覚は、スニーカーやトラックスーツで、すでに若者に受け入れられることがわかっている。そしてロサンゼルス発祥の「アミリ」らしい。こうして若い世代のカルチャーを意識しながら、「アミリ」やロサンゼルスらしい自由な発想を盛り込み続けることができれば、メンズでは着実に成長できるだろう。一方のウィメンズは、また別のマーケット。「アミリ」にとってはまだまだ小さく、強化するには違う戦略や意志、人材が必要だ。

WWD:そうして「メゾン」を目指す。
エイドリアン:豊かな歴史と遺産を持つブランドに長年携わってきた。メゾンとして成長するには、こうしたブランドと戦わなくちゃならないし、そのためには「アミリ」にも遺産、レガシーが必要だ。50年後、「アミリ」にとってのレガシーは、何になっているだろう?そう考え続けると、やはり開放的なムードは普遍的かつ国際的だと思う。当面は、ラグジュアリーブランドよりも買いやすい価格帯の商品や、デニムのように自分のスタイルに取り入れやすいアイテムを、友達の家のような空間・体験を楽しんでもらいながら買ってほしい。そんな顧客体験を繰り返すことで、マイクの歴史、「アミリ」の歴史を体感し続けてもらい、将来子どもや若い世代にその魅力を自分たちの言葉で語ってくれたら「アミリ」のレガシーが生まれるのではないか?「バーバリー」や「ディオール」とは違う形で、すでにあるレガシーを語り直すのではなく、共に作る。そんなビジネスを今、楽しんでいる。

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