ファッション

「ステラ マッカートニー」の“サステナ・マルシェア”は何がすごかったのか【2024年春夏パリコレを深掘り!vol.2】

2024年春夏パリ・ファッション・ウイークの期間中にショーを開催した100以上のブランドから、現地取材チームが深掘りしたいコレクションをピックアップ。今回は、ファッションの楽しさとサステナビリティの両立に正面から向き合って大成功した「ステラ マッカートニー(STELLA McCARTNEY)」のショーを徹底解説する。

まずは上の、ショー会場の完璧な構図を見てほしい。朝のエッフェル塔を背景に、街路樹の間の歩道に作ったランウエイの上を一列で歩くモデルたち。右手には一斉にスマートフォンを掲げる観客。そして左手にはパリらしいマルシェのトタン屋根が並ぶ。このマルシェは今季のショーにおいて重要な役割を果たした。

マルシェの21店舗に新進気鋭のサステナ技術

会場となったパリ7区の屋外市場、マルシェ サックス ブルテュイユは普段は野菜や魚、惣菜などを売っているが、この日は”ステラのサステナブル・マーケット”と題して、21店舗それぞれにデザイナーのステラ・マッカートニー(Stella McCartney)が考えるサステナブルな素材や技術、アイテムを並べた。サステナブルな素材の多くは科学やハイテクと密接なケースが多く、理解が難しいものも多いが、マルシェで原料や生地に触れながら説明を受けるとスッと理解できる。マルシェに立って説明をする企業家や技術者の多くは女性でいずれも今後、ファッション界内に限らずその名を知られるだろう企業・人だ。熱心に語る彼女たちの情熱に触発されつつ「あのニットドレスが海藻からできていたなんて!」と得た気づきはリリースを読むだけよりもはるかに記憶に残る。そこで本記事ではまず、各店を写真で深堀りする。

ヒッピーライクなニットドレスの素材は海藻由来

招待客は、ショーの前の20~30分でこれらのブースを巡り、コレクションを形成するサステナブルな素材について一通り頭に入れた後ショーを見ることとなった。リリースには「全体の95%が責任ある素材から作られた、ブランド史上最もサステナブルなコレクション」とある。ただし、いったんショーが始まれば、服のどこがリサイクル素材か、はたまた自然再生型農業によるコットンかは判別できない。ただしマルシェで知識を得ているから「このブランドの服を着ることは、地球を傷つけることにつながらない」という安心感は残る。それが大切だ。

モデルとフォトグラファーの距離が近いバックステージの写真からは、素材の特性をより詳しく知ることができる。そこで今季の特徴でもある70年代調のマニッシュなパンツスーツや軽やかな素材のドレスがどんなサステナブル素材で作られているのか、代表的なアイテムをチェックしよう。

両親のバンド「ウイングス」などこだわりの音楽。オーディオはJBL

ショーの始まりを待つ間に流したのはステラの両親であるポール・マッカートニーとリンダ・マッカートニーのバンド「ウイングス」の曲、フィナーレに採用したのはフレンチ・エレクトロ・ムーブメントを代表するアーティスト、ミスター・オワゾと、音楽一家出身のステラは音楽にもこだわりを見せる。ショー会場のオーディオは音響器機メーカーのJBLが担当した。ちなみにJBLは先日、フランスで世界初のポータブルスピーカーのリセールプラットフォームである「JBLセカンドチャンス」を立ち上げたばかりで、電子破棄物の削減に努めている。

ステラのサステナビリティの取り組みは本気で本格的だ。そして彼女を取りまくのは、ファッション関係者だけではなく、農業やバイオ、デジタル、モビリティなど幅広い世界の人たちだ。ステラは自分がハブとなり、サーキュラーエコノミーを目指す異業種をつなぎ、新しい才能を浮かび上がらせて鼓舞し、生活者に気づきとファッションの楽しみを与えようとしている。マルシェとショーはまさにそれが形となったものであり、考え抜かれたショー演出は見事だ。

最後に“ステラのサステナブル・マーケット”を動画でチェックしてほしい。記者がスマホ片手に急ぎ足で歩き抜けた5分間の記録から会場の空気を感じるはず。動画は赤いコート姿のアナ・ウィンター(Anna Wintour)米「ヴォーグ」編集長兼コンデナスト(CONDENAST)アーティスティック・ディレクターがマルシェをのぞくシーンからスタート!

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