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ファッションショーのセレブ追っかけ、どう思う?

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世界のファッションショー会場では、日本のメディアによる写真や動画での「セレブをキャッチ」する動きが昨今加熱している。これまでもアーティストや俳優らはゲストとして来場していたものの、BLACKPINKやBTSといったK-POP勢を筆頭に、撮影合戦がエスカレート。しかしSNSでの拡散力がある一方で、クリエイションよりもゲストが先行して見えるという懸念もあり、賛否両論だ。実際に取材する担当者や読者、業界人の声から、このトレンドの向かう先を考える。

現場記者とSNS担当
それぞれの葛藤

大塚千践(以下、大塚):最近はショー会場でセレブリティーを入り待ち・出待ちして、パパラッチする機会が激増しました。特にSNSでの反響が高いので頑張って追いかけるのですが、そこに労力を割く分、できなくなることもあります。例えば個人的には、ショー会場に到着して着席した後は、スマートフォンで前のショーの原稿を書くことが多かったので、その時間をセレブの入り待ちに使うと、作業が徐々に後ろにずれていきます。これが続くとジャブのように体力に響いてくるんですよ。

浅野ひかる(以下、浅野):ただ、セレブリティーが登場することでSNSでのインパクトはありますよね。拡散されるし、フォロワー数も増えるので、媒体にとってプラスの面はあります。

大塚:そうなんです。だから、これまでの取材フローに、セレブのパパラッチが単純にプラスされるというハードな状況を続けるしかないんです。フォロワー数の伸び方は今も勢いがあるのですか?

浅野:やはり他のコンテンツと比べて数字は大きく伸びますが、コロナが収束に向かうにつれて、そのインパクトはやや落ち着いてきてはいますね。理由は、いろいろなブランドやメディアがやりすぎたからだと思っています。ブランド側の影響は分かりませんが、メディアとして他と同じような写真や動画素材を頑張って撮りに行くメリットは少なくなってきてはいます。

大塚:読者も同じような写真や動画が一気に出回ると当然飽きるので、他と同じ素材をただ撮ればいいというわけではないということか。現場では正直そこまで考えられる余裕はなかったんですが、最近はどこも慣れてきたのか、メディアは媒体名入りのマイクを用意したり、日本の女性誌は動画コメントをもらうために列を作ったりしていると聞きます。ブランドからも、セレブの動画コメントを撮ってほしいという依頼が急増しました。

セレブバブルの今こそ考えたいこと

浅野:やや過剰気味ではありますが、いちメディアとしてやらないわけにはいかないという状況なのも事実なんですよね。ソーシャル担当としては葛藤です。いかに独自性を出せるか、またそのためにブランド側とも交渉できるかを日々考えています。

大塚:メディアにとっての強みはそれぞれにあるはずなので、そこにセレブの拡散力をうまく融合させる方法を、ブラント側とも一緒に考えたいですよね。「WWDJAPAN」でいうと、コレクションリポートでしょうか。そうでないと、現場で追いかけているスタッフはただ消耗するだけなので。

浅野:セレブバブルがはじける予兆がある今だからこそ、この流れの第2フェーズを一緒に考えたいです。メディア側としてもただの数字至上主義にならず、何を伝えたいのかを考えながら発信しないといけません。ブランド側は商品の打ち出しにつなげたり、顧客層拡大のきっかけにしたりと、一過性のトレンドで終わらせないための次の一手が必要です。

大塚:インフルエンサーのトレンドの変化も影響しているんでしょうか。コロナ前までは、フォロワー数の多いインフルエンサーがショー会場で自ら発信する光景を多く目にしましたが、現在は歌手や俳優らのアンバサダーが大勢シートに座っており、それをメディアが拡散しています。一時期に比べて、ただフォロワーを多数抱えた人よりも、ブランドや商品についてしっかりと発信できる、「売れる」マイクロインフルエンサーがブランドに重宝されると聞いています。ショーではイメージ作りやタッチポイントを増やすアンバサダーを、新作イベントなどで商品の売りにつなげたい場合はマイクロインフルエンサーを起用するという二極化なのかもしれませんね。

浅野:アンバサダーはブランドイメージを一気に変える影響力があります。昨今のアンバサダー合戦により、ブランドは当然彼らをショーにも招待します。私たちもその恩恵は受けるのですが、セレブ目当てでSNSをフォローしてくれたアカウントは、しばらくすると求めている投稿がされないのでフォローを解除します。タッチポイントを増やすことと、コアな層にしっかり刺さるバランスを考えないといけないのは、ブランドもメディアも同じですね。

大塚:現地でショーリポートとソーシャル担当を分けられたら一番いいのですが、日本人席は徐々に縮小されているのでそういうわけにもいきません。とはいえ、クリエイションを伝えるのも「WWDJAPAN」の役割だし強みだと信じているので、そのバランスが偏らないように6月のメンズ・コレクションも取材してきます。

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