ファッション

「ロエベ」2016-17年秋冬パリ・コレクション

REPORT

アートに囲まれた空間で見せる穏やかで洗練された女性の美

 ショー会場はいつもと変わらずユネスコ本部。しかし、今季は庭園ではなく室内のホールを選んだ。ランウエイにはじゅうたんを敷き、至るところにアート作品や盆栽を配置。客席となるオブジェのような椅子も、いつもと同じ石のものに加え、アクリルのボックスに無数のT字カミソリやタワシを詰めたモダンアートのようなものなどを並べた。そんな空間は、ジョナサン・アンダーソンがキュレートしたミュージアムのようであり、彼の好きなものを集めたアパルトモンのようでもある。そして、空間から感じられるアート・フィーリングはコレクションにも反映されている。
 ファーストルックは、抽象画のようなラバープリントをのせたタイトなトップスと、ハンカチーフへムのフレアスカート、レザーのビスチエのコーディネート。モデルの動きに合わせリズミカルに裾が揺れるスカートは今季のキーアイテムで、ハンカチーフヘムだけでなく、前後とサイドの長さを変えたり、ツイードの端をほどいてフリンジ状にしたりとさまざまな形で登場する。また、ビスチエも繰り返し用いられ、黒と箔押しのようなゴールドの2色で女性らしいくびれを形作る。

 基本のシルエットは、ファーストルックに象徴されるようなフィット&フレアと、同素材のアイテムの組み合わせやロングドレスで見せるロング&リーンだ。ナイロンのジップアップベストとプリーツスカートを合わせたようなものや、タートルネックニットに襟ぐりの深いロングドレスを重ねたようなものなど、レイヤードしているように見えて実は一着というデザインが豊富にそろう。もちろん、ヘアゴムをつなぎ合わせたようなドレスやスカートなどジョナサンのエキセントリックな感覚が見えるアイテムもあるが、いつもよりは控えめな印象だ。素材はコットンやシルクが中心で、端を切りっ放しにしたり、洗いをかけたりすることでユーズド感をプラス。メゾンの核を成すレザーは、パッチポケットやストラップなどの部分使いでアイテムに落とし込んでいる。また、サンドやブラウン、カーキ、白、黒といったナチュラルな色を基調にしたカラーパレットは、ジョナサンのデビューシーズンからメゾンの本質と打ち出している“オーガニック”なムードを高めている。

 アート・フィーリングはアクセサリーにも見られる。特に目を引くのは、モデルの胸元を飾る民芸品のようなマスクやネコのモチーフの大きなペンダント。ゴールドのリングを重ねたようなチョーカーや、メタルプレートをつなげたネックレスもコーディネートにアクセントを加えている。また、アイコンバッグの“アマソナ”には、3つの異なるサイズを重ねたようなトロンプルイユのデザインや、別のポーチをくっ付けたようなものなど遊び心溢れるモデルが登場した。

 今季は、これまでの3シーズンよりも成熟した女性像が印象的だった。その穏やかで洗練された美しさは、着こなしの難易度が高かったこれまで以上に幅広く受け入れられそうだ。

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