ファッション

“偏愛”を貫く 元祖ファッションユーチューバー・ハズムの生存戦略

 ユーチューバーのハズムが運営する東京・中目黒のセレクトショップ「ダン(DAN)」が面白い。同店は“経年変化の、その先にあるもの”をコンセプトに2018年にオープン。ワーク・ミリタリーテイストを軸に、「ザ イノウエ ブラザーズ(THE INOUE BROTHERS)」「ポータークラシック(PORTER CLASSIC)」など高品質で長く愛用できる服をセレクト販売してきた。しかしここ最近、変わり種のオリジナル商品を連発し、店内のラインアップが激変している。

 まずはこのジャケット(3万8500円)。家具に興味がある読者なら、ピンとくるだろう。前見頃を埋め尽くすポケットは「ヴィトラ(VITRA)」の名作として知られる壁掛け収納“ウーテンシロ(UTEN.SILO)”がモチーフだ。「コロナ禍で外出ができなくなり、意識が家の中に向いた。僕のように、洋服好きには家具が好きな人も多い。だからその両方の物欲を“解決”できるものがあればいいなと思った」とハズム。

 次にこちらのダウンジャケット(5万5000円)。一目見て元ネタが分かったら、相当熱心な「ディズニー(DISNEY)」ファンだ。白色のたっぷりしたシルエットは、「ベイマックス(BAYMAX)」のカーヴィーなボディを表現したものだ。パロディーではなく、ウォルト・ディズニー・ジャパンに掛け合い、正規のライセンス商品として昨年冬に販売した。「個人経営のセレクトショップでライセンス商品を作りたいという要望は(ウォルト・ディズニー・ジャパンの)担当者にとっても初めての経験だったようで、戸惑っていました」と笑う。

 ただ、デザインや機能性はミリタリー好きのハズムらしく本格仕様。表地は防水性と透湿性を備えた3層構造だ。中綿には老舗羽毛メーカーの河田フェザーのダウンを使用している。パッキングも可能で、収納袋はベイマックスの充電器をイメージした。こだわりを詰め込み、かつ慣れないライセンス企画で、「原価が高くなり、利益を出すためには多くの数量を作らざるをえなかった」との反省も。だが他のユーチューバーも巻き込んだ発信で話題を作り、「100着以上の在庫のほとんどを消化できた」と胸をなでおろす。

オリジナル商品を8割に
尖った店作りに突き進む

 他にもヤマト運輸の配達員の制服をモチーフにしたワークウエア、人気漫画「遊☆戯☆王」のカード収納ケースを模した財布など、ここ1年で作ったコラボ商品は枚挙にいとまがない。ハズムは「ユーチューブの視聴者や店のお客さんが求めている商品は、シンプルで長く使える服」と認める。それでも、今後も“偏愛”による商品企画をやめるつもりはないという。狙いは何なのか。

 一つは他の発信者との差別化だ。ハズムはまだファッションユーチューバーが一般的でなかった2016年にチャンネルを開設し、その先駆けとして知られるようになった。今ではチャンネル登録者数は約13万人に到達している。だが次第にライバルが増え、Youtubeという発信プラットフォーム自体がレッドオーシャン化。ファッションからライフスタイル全般へとコンテンツを広げる発信者も出てきた。ハズムはあくまでファッションに絞って発信を続けているが、その内容を差別化するには、紹介するショップの取り扱い商品を「尖らせる」必要がある。

 また店舗運営を続ける中、セレクトショップ特有の商習慣にもジレンマを感じるようになった。独立する前は、元々古着の買取販売店で店長をしていたハズム。「1点もの」を扱ってきた経験からなのだろう。「全ての商品を、しっかりと自分の意思で仕入れる店が作りたかった」と振り返る。「ただ、ブランドと取り引きをしていると、シーズンによってコンセプトがガラッと変わったり、必要以上のロットや型数を仕入れなければならなかったり。どうしてもコントロールしきれない部分が出てくる。これに悶々としているより、大胆に変えたいと思った」。

 来春からは仕入れ商品を大胆に減らし、自店のオリジナル企画を8割程度まで引き上げる。「経年変化が楽しめる服のよさを届けたい。その気持ちは今も変わらない」と前置きしながら、「質がいい服は市場にいくらでもあるし、どこでも買える時代だ」とする。「だからこそ、僕にしかできない発信と店づくりをもう一度ゼロベースで考えたい。みんなが好きなものは、実は幼い頃からそんなに変わらないんじゃないかというのが僕の持論。かっこつけすぎず、子供心をくすぐれるような楽しい店にしたい」。

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