ファッション

アダストリアが15億円で自社EC向け倉庫をリニューアル 自動化で作業時間を40%削減

 アダストリアは、全国に6カ所ある物流倉庫のうち最大規模で、自社EC「ドットエスティ(.st)」に対応する茨城西物流センターを全面リニューアルした。9月1日から本格稼働する。自動搬送ロボットを一部に導入し、作業者が歩く距離を減らして効率化。1日あたりの出荷件数は、最大1万9000件から3万4000件に拡大した。2022年2月期の「ドットエスティ」売上高は311億円。「今後の成長を見越し、ブロックごとに拡張していけば売り上げが現在の倍になっても対応できる」と林正武・上席執行役員ロジスティクス本部長は話す。

 同物流センターはアダストリアの100%子会社、アダストリア・ロジスティクスが運営しており、約100人(繁忙期は約150人)が働く。総面積約4万9500平方メートルのうち、今回刷新したEC用倉庫部分が約1万9800平方メートルを占め、残りは実店舗用の倉庫だ。アダストリアのEC用倉庫は全国でここだけ。外部ECモールを含む数字にはなるが、同社の22年2月期の国内EC売上高は574億円で、20年2月期比32%増。コロナ禍以降の著しいECの伸びを背景に、倉庫刷新に踏み切った。総投資額は約15億円。7月のセール明けから約1カ月間かけ、倉庫を稼働させながらリニューアルを進めた。

 従来は全ての注文商品を作業者が歩いて在庫棚からピッキングしていたが、今回の刷新でマテハン(マテリアルハンドリング)企業のオークラ輸送機の搬送ロボット120台と移動棚1400台を導入。在庫全体の4割の商品が入った棚は、作業者のもとに自動でやって来る仕組みにした。現在、移動棚にはEC売上高の大きな「ニコアンド(NIKO AND…)」「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」の商品を入れているが、「2ブランドだけでは移動棚は埋まっていない。今後は2ブランド以外の商品も順次移動棚に移していく」(森泰憲・国内物流管理部シニアマネジャー)という。

効率化した分、ギフトや返品対応を手厚く

 移動棚に入れていない残り6割の在庫は作業者が歩いてピッキングするが、棚を9ブロックに分けることで、1人あたりの歩く距離は以前よりも大幅に減らしたという。雨傘やクッションなどの大型商品や、今春から「ドットエスティ」をオープン化したことで扱っている他社商品も作業者が歩いてピッキングし、同梱する仕組みになっている。

 自動化によって、作業時間を40%削減できた。一般論として物流倉庫は人手が集まりづらくなっており、自動化による省人化を各社が目指している。ただし、「効率化したことで、省人化するという考えではない」と林本部長は強調。「今は季節限定で受け付けているギフトラッピングを通年対応としたり、返品・交換対応といった部分を、より手厚くしていく」と話す。また、効率化ができたことで、これまでは渋谷ヒカリエのアダストリア本社内で行っていたささげ作業の一部(雑貨の置き撮りや採寸)も物流センター内に移した。写真のレタッチ作業も、本社メンバーのレクチャーを受けながら物流センタースタッフで進められるようになってきた。

 効率化によって、客のもとに商品が届くまでのリードタイムも短縮できた。受注した翌日に発送するスケジュールは従来通りだが、繁忙期は発送までにさらに2日ほど必要としていた。刷新後は、「繁忙期も受注翌日にお客さまのもとへ発送することが可能になった」という。「(他社との物流の相乗りなども含め)今後もバリューチェーン全体としていかに効率化、最適化ができるのかを考えていきたい」と林本部長。

 倉庫の自動化に関しては、2018年にユニクロが「完全自動化」を掲げ、有明のEC専用物流センターを公開している。直近では、ZOZOが23年8月に稼働開始する茨城・つくばの新物流倉庫に、100億円かけて自動化設備を導入すると発表した。ピッキング作業にもロボットアームを導入して「完全自動化」にこだわるユニクロ倉庫に比べると、アダストリアの倉庫自動化は一部に留まる。ただ、莫大な投資が必要となる「完全自動化」をどこまで求めるかは、企業によって考え方が異なる。アダストリアは一部自動化で作業効率は高めつつ、「丁寧な包装や梱包などがお客さまから支持されており、そういった付加価値を生む作業により多くの人員を割いていく」といった考え方だ。

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