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【9月23日まで無料公開】海洋危機に立ち上がるZ世代 日本版パーレイ目指す【海の危機、私たちはどう動く?】

 Z世代を中心とするNPO法人ウミナリ(UMINARI)は、生活者や企業、研究機関などさまざまなセクターと共に海洋環境問題の解決に取り組む。ウミナリ代表理事を務める伊達ルークは、大学在学中の2018年に同団体を立ち上げた。「アディダス(ADIDAS)」や「ディオール(DIOR)」などとも取り組む海洋保護団体パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ(PARLEY FOT THE OCEANS、以下パーレイ)に着想を得て、中立的なサードセクターを立ち上げてムーブメントを最大化することを目指す。彼のビジョンは国連関係者らからも共感を得て、2019年には国連環境計画(UNEP)が主催するUNEPフォーラムにも登壇した。伊達代表に話を聞いた。

WWD:ウミナリを立ち上げた経緯は?

伊達ルーク=ウミナリ代表理事(以下、伊達):「アディダス」とパーレイのコラボスニーカーが、海洋問題を知るきっかけだった。カッコ良いなと思って手に取ったその商品が実は海のごみから作られているという。調べていくうちに、問題の深刻さに衝撃を受けた。何か自分もしなければと思い、最初は一人で浜辺のごみをひたすら拾った。たばこやペットボトルのような生活から出るごみもあれば、レジンペレットのような産業系のごみ、海外からの漂着ごみもある。この問題は消費者だけが悪いわけでも、企業だけが悪いわけでもない。これだけ多岐にわたっているのだから、みんなで解決を目指さなければと思った。パーレイの在り方がインスピレーションになり、中立的な歯車になってさまざまなセクターと手を組める団体を作ろうと思った。

WWD:海洋環境問題はすぐに自分ごと化できた?

伊達:ネットで調べているうちは年間で800万トンのごみが流れているといったスケールの大きい数字を知っても正直SFを見ている感覚だった。僕は千葉の海辺出身で、実際にそんなにごみが落ちていた記憶もない。でも一連の問題を認識してからあらためて地元の海を見ると確かにごみが落ちていた。知らないとこんなにも目に入ってこないのだと反省の気持ちが生まれたときに、火が付いたと思う。

WWD:ウミナリの活動内容は?

伊達:大きな柱は教育活動だ。特に未来の当事者になる世代とコミュニケーションを取り、共にビジョンを構築することが大切だと考えている。最初は小学校での授業の枠をもらって講義をした。中学校、高校、大学と徐々に対象を広げ、今は企業でのセミナーなども行っている。昨年は学生から社会人まで誰でも参加できるゼミ形式のイベントも実施した。一番多いときには、約150人が参加した。一方的な講演だけではなく、さまざまな世代が対話し共創が生まれる場の提供にも力を入れている。そのほかにもビーチクリーン活動や大手飲食メーカーの包装材の開発に加わったり、スポーツブランドのマーケティングをアドバイスしたりといった企業へのアドバイザリーも行っている。

WWD:専門的な知見はどこで得た?

伊達:学生時代に、国連の環境部門に勤める職員に送った1通のメールが人生の転機になった。ブラジルオフィスに勤めていたその人に「自分は日本でNPOを立ち上げて、こんなムーブメントを起こしたい」と熱いメッセージをコンタクトフォームから送ったら、国連のシニアディレクターと直接会う機会をくれた。そこから一気に人脈が広がり、各界の識者に会ったり、カンファレンスに参加したりして知識を詰め込んだ。

WWD:ウミナリのメンバーはどのような人たち?

伊達:学生や社会人まで約30人のメンバーが在籍していて、年齢は僕が最年長だ。海の豊かさを守るというパーパスに共感してくれている部分は共通するが、それ以外の参加理由は人それぞれだ。例えば海の生き物が好きな人もいれば、ムーブメントの作り方に興味を持ってくれる人もいる。メンバーはやみくもに増やすのではなく、僕自身がきちんとコミュニケーションを取れて一人一人がきちんとコミットできる規模に気を付けている。

海とのつながりを考え、ストーリーを紡ぐことが大事

WWD:海洋環境問題に対するアクションを模索する企業へのアドバイスは?

伊達:環境や社会課題への取り組みを特定の部署が担っている事例をよく見かけるが、企業が本来のパフォーマンスを出し切るためには、コアとして取り組む態勢を整えることが不可欠だ。課題解決を企業活動のコアに結び付け、ストーリーを構築していく作業を私たちは手伝いたい。全ての経済・社会活動のベースが海である以上、海と関係ない企業はない。では、自分たちはどう海とつながっているかというコンテクストを考えることが大事だ。

 先日コミュニケーションファームのエデルマン・ジャパンとビーチクリーンを行った。ビーチクリーンをきっかけに、エデルマンだからこそできる海洋問題に対するコミュニケーションについて社員とディスカッションした。単発のアクティビティーで終わらせず、本業の中でどう取り組めるか、クライアントにどう働きかけるかといったことにまで広げていくことが大事だ。社会課題に対していろんなセクターをつなげるコミュニケーション方法を考えることは本質的に同社だからできることだし、そこから生まれるアクションは同社のブランドバリューをきちんと持ち上げてくれるものになる。

WWD:特にファッションやビューティ企業の取り組みを見て思うことは?

伊達:例えば、漁網をまた糸にして服にした場合、洗濯すればマイクロファイバーが出てしまうといった批判も聞くが、それを僕はグリーンウォッシュみたいな言い方はしない。何か問題を解決しようとするときに、ゼロ・100で判断してしまうと進まない。インパクトだけで見ずに、企業として問題自体を知らせていくある意味メディアとしての役割、責任もあるはずだからだ。

WWD:今後のビジョンは?

伊達:今年から調査活動に注力する。海洋環境問題はまだ分からないことも多い。未来の当事者の世代が熱量を持って、周りを巻き込みながら取り組むことが理想だ。僕らが発信力のある調査研究をし、その結果だけでなく、過程もオープンにしていきたい。例えばデータベースに強い企業や、水中をきれいに撮影できるプロダクトを持っている企業なども巻き込みたい。同時に、業界の垣根を越えたアライアンスの構築も大切だ。海洋問題に対して、いろんなセクターが共同して取り組む枠組みを作る。そこにファッションやビューティ業界も入ってきてほしい。


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