ファッション

EC拡大時代に経営インパクトが増す物流費との向き合い方【齊藤孝浩のファッション業界のミカタVol.36】

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 企業が期ごとに発表する決算書には、その企業を知る上で重要な数字やメッセージが記されている。企業分析を続けるプロは、どこに目を付け、そこから何を読み取るのか。この連載では「ユニクロ対ZARA」「アパレル・サバイバル」(共に日本経済新聞出版社)の著者でもある齊藤孝浩ディマンドワークス代表が、企業の決算書やリポートなどを読む際にどこに注目し、どう解釈するかを明かしていく。今回はECの拡大によって増加する物流費にフォーカスします。(この記事は「WWDJAPAN」2022年4月11日号からの抜粋です)

 以前からお客さまの購買行動は変わっていましたが、コロナ禍がアパレル販売のEC化率の上昇を加速させました。その結果、企業の物流費負担が増えています。今回はその物流費について考察します。

 これまで日本の小売業界においては、メーカーからの納品に関する物流費はメーカー負担が常識でしたし、お客さまは店頭まで買いに来てくれていたので、小売側が物流費を負担することがありませんでした。

 ところがショッピングにおけるECの利用が増え、店や倉庫からお客さまの自宅まで配送するケースが増えました。本来であればお客さまから送料をいただければいいのですが、皆、送料無料だ何だとやるじゃないですか。そうすると小売企業の物流費の負担が増えていくことになります。

 海外では物流費は小売業が負担するのが常識と聞いています。つまり、メーカー営業とバイヤー間でメーカー出し価格が交渉されて、そこに送料を乗せた金額が請求されたり、着払いになったりします。ですから小売業が、いかに効率よく物流を使うかという考え方を身に付けているんです。日本の小売業はそれに慣れていないから、いろんなことが起こってしまうんです。

 さて、店舗販売とEC販売の小売業の損益計算書(PL)の違いを見てみましょう。店舗販売の場合、販管費のうち人件費と家賃がおよそ3分の2を占めています。しかし、ECの場合、店舗がない分、広告宣伝費や荷造運賃や物流作業費が大きくかかります。つまり、リアル店舗がECを始めるとなると、店舗のおかげで知名度があるので、広告宣伝費がそれほどかからないかもしれませんが、既存の販管費の中に、物流費が加わるわけです。家賃がかからない分、送料がかかっていると考えることもできますが、会社の決算は双方合算して行います。ですから、EC販売のウエートが上がれば上がるほど、経営、つまり損益計算書の中の物流費のウエートが上がるという現象は避けて通れません。

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