ファッション
連載 マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」

ニットのサステナビリティーについて マリエが本音で語る「私の33年目のサステナブル」Vol.28

 私のブランド「パスカルマリエデマレ(PASCAL MARIE DESMARAIS.以下、PMD)」をローンチして4年が経った。一枚のTシャツから始まった「PMD」が、次に取り掛かったのはニットだった。そこで出合ったのがアルパカ。当時「サステナブル」という言葉にまだ気づけていなかった私は、とにかくデザインを諦めず、地球に負荷がかからず、生産の過程でも誰も犠牲にしない良いものを届けるため、手探りながら納得のいくアルパカのビーニーを作った。

 そこで知ることになったのが、ペルーの国政や動物への取り組み、育て方、アルパカフェスまで存在するという生産の現場だ。私が出合えたのは、福利厚生の整った工場だった。生産の現場は整っており、社員や家族への食や教育の手当にも積極的、自然とも共存していた。ビーニーは動物由来の素材を用いたため、雨や雪をはじく優れものとなり、レジェンドスケートボーダーのトニー・アルバ(Tony Alba)も愛用してくれた。

 ニットの素材の中で、アルパカウールは環境への悪影響が一番少ないと言われている。他の動物よりも放牧群の規模が小さいうえ、一匹から取れる毛の量が多いため動物が排出する二酸化炭素量が少ないためだ。素材にはシルクやリヨセル(再生繊維)ウールなどさまざまあるが、劣悪な環境での飼育は問題となる昨今、シルクは人間の欲求を満たすための存在ではないか?という議論もある。

 ホールガーメントの機械が発達したり、生産現場のデジタル化が進んだりで、なるべく無駄が出ないプログラミングができるようになっている。最近は縫い代もいらない。布帛と違い自由な形が創造でき、クリエイティビティが生まれる。

 職人の技も守りたい。そういえば樹木希林さんは生前、周りの着なくなったセーターや編み物をほどき、一目一目編んだ作品を発表していた。ニットは究極編み直してしまえば、半永久的に形を変えながら着続けることが可能だ。

 ニットは、布帛よりも小ロットでチャレンジできた。「PMD」はビーニーの後もいくつかのニットを制作したが、そのたびに業者さんは糸玉を少し多めに用意してくれていた。「処理しておきますね」と言われたものを「送ってくれ」と言ってしまい、でもどうしようもなくずっと眺めていた色違いの糸玉が20玉くらいに増えたので、今回「PMD」はこの糸たちにフォーカスして、またサステナブルになれる道を見つけた。新しいニットビーニーの完成だ!その糸玉たちを色を美しく組み合わせ、こよりなおし、手編みと機械式の2種類を作った。私のニットの大師匠には本当に感謝。道を導き出していただいた。

 今回は小ロットでの挑戦だったので、現在数量限定でミヤシタパークでのリミテッドショップでのみ販売している。今後は他社も絡めて、この方法で少しでも廃棄物を減らす挑戦を続けたい。

■「パスカルマリエデマレ」ポップアップストア
住所:東京都渋谷区神宮前6-20-10 MIYASHITA PARK South 1F S110区画
期間:10月10日まで
時間:11:00~20:00

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