ファッション
連載 コレクション日記

フィリップ・リムの「洋服づくりに罪悪感は不要」に感動 地球の裏側からNYコレ鑑賞記 Vol.1

 ウィズ・コロナ生活が始まって早1年半。この間、ファッション・ウイークは必然的にデジタル開催を強いられましたが、「SNSでバズらない」や「バイヤーやメディアが、新しいブランドを探せない」などの課題が露わになりました。そのせいか(!?)、2022年春夏シーズンは「ガマンできない!」と言わんばかりにリアルショーを再開するブランドが続々。この記事にある通り、ニューヨークでは、ほとんどのブランドが何らかの形でリアルイベントを再開します。でも、日本にいる私たちは、未だかつてのような取材が再開できません。そしてブランドのいくつかは、「どうせ日本から人は来ない」と割り切り、現地在住の日本メディアの関係者さえ門前払いだそうです(泣)。「このままでは、イカン!!」。そう思い「WWDJAPAN」は、地球の真裏にある日本から引き続き情報発信。リアルショーの再開に伴いデジタル取材は難しくなりそうですが、ブランドのオウンドメディアやSNS、YouTube、そして米「WWD」の記事を見ながら、ウィズ・コロナ&アフター・コロナのファッションウィークの片鱗を探します。

「プロエンザ スクーラー」

・リアルショーを編集して後日配信
・全38ルック

 「プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)」は、2022年春夏コレクションのファッションショーをハドソン川に浮かぶ人工島リトル・アイランドで開催しました。屋外ではあるけれど、会場はまぁまぁ“密”。ソーシャル・ディスタンシングの面影は見えず、ゲストはほとんどノーマスク。見る限り、フロントローでマスクをしているのは1人だけでした。ワクチンの接種率は、日本がアメリカを猛追してそろそろ追いつく頃ですが、こんなにマスクなしで大丈夫なのかな?国民感覚の違いを感じます。

 肝心のコレクションは、迫力あるジャケットやフリンジが垂れ下がるドレスなど、従来より幾分シンプルですが、ジャック・マッコロー(Jack McCollough)とラザロ・ヘルナンデス(Lazaro Hernanderz)が得意とするスタイル。ジャケットもドレスも、ウエストにかけてほんのりカーブする砂時計のようなシルエットが特徴です。そこにレイの首飾りや、フリンジのディテール、ネオプレン素材のサンダルなど、ほんのちょっぴり南国のムードを漂わせます。2人は6月に22年のリゾート・コレクションを発表した後、久しぶりにハワイのカウアイ島を訪れたそう。なるほど、そこで得た刺激を、ほぼ完成していたコレクションにアクセサリーやディテールの形で加えたんですね。ハワイ、羨ましいなぁ(笑)。

 とは言え、コレクションは夕焼けを思わせるオレンジを除くと、ブラックやグレーを基調としたモノトーン。旅にぴったりのスタイルを、都会のカラーパレットで表現したように見えます。このスタイルは、街で暮らす女性に捧げたのか?それとも、そんな女性の旅に寄り添うものなのか?きっと、答えは「両方」なのでしょうね。だって今はまだ、半年先なんてわからない時代。自由に旅ができるようになれば嬉しいけれど、来年の春、それが許されているかは不透明です。そんな曖昧な時代に捧げるスタイルのように思えました。ジャック・マッコローは、「まだまだ危うげな、新時代の自由を祝いたかった」と話したそうです。

「3.1 フィリップ リム」

・ビジュアルを配信
・全31ルック

 「3.1 フィリップ リム(3.1 PHILLIP LIM)」は、写真で最新コレクションを配信。今シーズンは柔らかな素材をタッキングして、まるで花のつぼみのようなシルエットを生み出しました。ハイウエストのプリーツスカートには、ウエスト周りに優雅なラッフル。トレンチコートのガンフラップも、生地を重ねて花のようなシルエットです。モノトーンの実用的なスタイルとコントラストをなすのは、チューリップのピンクやマリーゴールドのオレンジのような花の色合い。デザイナーのフィリップ・リムは、ニューヨーク州の北部にある、花とハーブがいっぱいという自宅の庭にインスパイアされたと言います。

 オーバーサイズや柔らかな生地使いでリラックスムードにあふれているのは、「プロエンザ スクーラー」同様かそれ以上です。

 花々にインスパイアされたのは、フィリップの心の中で高まるサステナブルへの想いゆえでもあります。彼は今シーズン、「(花が咲く)土をキレイにしたい」との想いを込め、リサイクル素材や天然由来の原材料を多用。「身近にあるモノや人と働けば、余計な二酸化炭素の排出も避けられる」と、過去のコレクションに用いた残反も積極的に使いました。「庭を見ると、いつも思い出すよ。僕らには、色、さまざまなテクスチャー、そして、美しい花にとって欠かせない土のような、確固たる基盤が必要なんだってね」とフィリップ。「(貴重な資源を使い)洋服を生み出し続けることに罪悪感を抱く必要はないよ。常に、『どうしたら、土をキレイなままに、もしくは元どおりキレイな状態に戻すことができるか?』を考え続ければいいんだ」との言葉には、なんだか励まされます。

「モスキーノ」

・リアルショーをライブ配信
・全49ルック

 「モスキーノ(MOSCHINO)」は今シーズン、ニューヨークでコレクションを発表しました。ジェレミー・スコット(Jeremy Scott)がアメリカを拠点にしているから、かな?ショーは、雨降る中の屋外(涙)。かつてのNYファッション・ウイークの公式会場ブライアントパークは、晴れていたらきっと気持ちよかったし、“ランチを楽しむ女性たち(Ladies who lunch)”というテーマにピッタリの環境だったでしょう。悲しいけれど、屋外の方が何かと安心なご時世です。

 コレクションは毎回笑わせてくれますが、今回は明るいパステルのカラーパレットに、可愛らしい動物のモチーフ。まるで子どもの夢の世界をそのまま洋服で表現したようです。クロップド丈やミニ丈が中心のジャケットやスカートは、いずれもスカラップドヘムで可愛らしさ3割増!!ポケットやボタンは、でっかいハート柄です(笑)。動物は、後半になるとますます巨大化。ゾウの頭から耳にかけての曲線をバストラインに見立てたチューブトップタイプのドレスなどは、カラフルな動物をコラージュしてドレスに仕立てたようです。

 ショーには中盤、電動車いすのモデルが現れました。堂々の“ウォーキング”に、映像からもゲストの多くが拍手している様子が伺えます。プラスサイズモデルも、パステルピンクのトレンチコートでラブリーながら威風堂々です。車いすモデルは、フィナーレではジェレミーと登場しました。

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